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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第七章 聖嶺の大地
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城塞都市への悪魔降臨

7ー020

 

――城塞都市への悪魔降臨――

 

 アルサトールの狼人族警備部隊の再編をゾンダレスは行っていたが、自分の部下ながら統率力の無い人間が多すぎる事に愕然としていた。

 

 結局は組織に胡坐をかいている人間だけが出世をし、能力の有る人間は疎まれ排除されると言う組織理論そのままに、上に立っている人間が無能者ばかりとなってしまっていたからだ。

 流石にゾンダレスもこれはまずいと思わざるを得ない。これでは龍神が翼竜を使って攻撃をして来たとしたら、我先に逃げ出すであろうことは火を見るより明らかであったからだ。

 

「おにーちゃん、このも兵隊たちは、むのーの集まりなの?」

「あの~、カロロちゃん。あまりあからさまに言っちゃうとみんなやる気をなくすから、そう言うのはやめようね~」

 

 とはいえ狼人族にも拘らず3時間程全力で走っただけでへばる様では致し方ない。農村部にいる狩人の方がはるかに体力がある。

 銃器を持っているだけで、肩書のマウントを取って村の狩人を脅していただけに過ぎないという事が丸わかりになってしまった。

 

 そんな生ぬるい警備部隊の上に悪魔が降臨してきた。

 

「オーッホッホッホッ!なんて生ぬるい訓練をしていらっしゃるの?こんな連中ではいくさなど夢のまた夢では御座いません事~?」

「わーっ!医院長さんいつの間にやってきたんですか~!」

 医院長が修道服のスカートのフロントスリットをバッサバッサと翻しながら現れる。

 

「私だけではございませんことよ!リクリアさんとティグラさん、それにバオ・クーさんとゼンガーさんも一緒ですのよ〜、皆さんを鍛えに参りました~!」

  

 ザンッ!と警備隊の前に姿を現す5人。

   

 い、医院長さん。なんでいつもの修道服のスカートを、スリット付きのマーメイドドレスに変えているんですか〜?リクリアさんとティグラさんまで真似をしないで下さいよ~? 

 グリッと3本の太ももを見せつける魔女トリオである。

 

「いいんちょーせんせー!かっこいいーっ!」

 やめて!カロロちゃん。これ以上医院長さんが暴走したら収拾が付かなくなるから。

 

「い、医院長さん、どうやってここに来たんですか?」

「ああ、OVISに馬車を運ばせましてね~、ガーフィーさんとエンルーさんは戦艦に戻っているから、後でみんなと一緒に来ますわよ~」

 どうやらリクリアさんとティグラさんの黒い巨人に馬車を運ばせて来たようだ、かれらは亜空間に隠れているのだろう。

 

「あ、あのコタロウ様この方たちは一体どちら様でしょうか?」

「世界最強のお医者さんですが、皆さんの訓練をしに来られたそうです。下手に逆らうと腑分けされますから逆らっちゃダメですよ」

 汗を吹き出しながらそっとゾンダレスに囁くコタロウ。竜人にこんな事を言われたら普通ビビるだろう。

 ティグラにシメられた経験のあるガングが真っ青になって仲間の後ろに隠れている。

 

「なんだ?兎人族の女が何を俺たちを鍛えるだと~?寝ぼけこいてんじゃねえぞ」

 カロロに手を出そうとしてフルボッコにされた馬鹿が、今度は医院長にちょっかいを出している。

 やはり馬鹿は死ななきゃ治らないようだ。

 

序列勝負ガントでもやりたいんですか~?よろしいですことよ~、いつでもいらっしゃ~い」

「よーし!待ってろ」

 男は服を脱ぎはじめる。序列勝負ガントは寸鉄を帯びず、すなわちふんどし一丁で行うのが原則である。

 

「あなた!この場で女性に裸になれとおっしゃるの?なんて恥知らずな男なのですか?」 

 医院長に機先を制されて固まる男、やはり相当に馬鹿なようだ。

「い、いや。あんたの代わりにそっちの男がやるんじゃないのか?」

 バオ・クーを指して言う、最初からそのつもりだったようだ。片手を吊っているから勝てると踏んでいるのだろうか?思ったよりもこすっからい。

 

「その女性に勝てたらその次はワシが相手になろうではないか」

 バオ・クーは不敵ににやりと笑う。この程度の男では全く相手にはならない。そう顔が物語っていた。

「そ、それならあんたはそのままでいいさ、序列勝負ガントの作法ぐらいは知っているだろう」

「あなたもそのままで結構ですよ。男の裸なんぞ触りたくもございませんから」

 医院長は杖を持ったまま、ザンッと足を踏み出すとグリッとスリットから太ももを出して見せる。

 いや~っ、医院長さ〜ん!聖職者がそんな事をやっちゃダメでしょ~。

 

「アー族、大酋長グレ・シェリクであるバオ・クーがこれに立ち会う。種族が違うがこれを正式の序列勝負ガントであると認める」

 バオ・クーの宣言を聞いてそこにいた全員がゲッと言う顔をする。

 大酋長グレ・シェリクを名乗る者の威光と言う物は、狼人族全体に広く伝わっているのである。

 逆に馬鹿はこれが大酋長グレ・シェリク序列勝負ガントが出来るチャンスと考え、喜び勇んで医院長に向かって殴り掛かっていく。

 

「撲殺ーッ!」  バコーン!

 

 勝負は一瞬であった。男は頭を『撲殺』の魔法に見舞われ、頭を地面にめり込ませて逆さまになっていた。

 あの〜っ医院長さん、寸鉄を帯びないと言う約束は何処に行ったのでしょうか〜?

 

「オーッホッホッホッ!他にやりたい方はおいででしょうか?今なら大酋長グレ・シェリクとの序列勝負ガントがもれなく付いてまいりますわよ~」

 バオ・クー自身ここにいる誰よりも背が高く逞しい。一目見ただけで畏怖を感じる様な体躯をしている。それでも序列勝負ガントの誘惑に手を挙げる馬鹿は10人ほどいた。

 

「あらあら、思ったより勇敢な方が多いのですね〜。良いですわよ〜♡、まとめてかかっていらっしゃ〜い」

 流石にまとめてと言われても、兎人族の女性にまとめてかかっていくような狼人族はいない。

 

 バコーン! 

 バコーン! 

 ……………

 順番に並んで葬られて行った。

 

 そんな最中に、いきなり医院長の背後から抱きつく男がいた。

 

「おい、その杖を取り上げろ、なんか仕掛けが有るに違いない」

「な、なんだ?この杖は!」

 もうひとりの男が医院長の杖を取り上げるが、あまりの重さによろけてしまう。

 

「なんですか〜っ!いきなり女性の背後から抱きついて、胸を触るなんて最低の男ですわね〜っ!」

 相手の男の身長は3メートル、医院長の上から覆いかぶさるように抱きついている。すると丁度よい位置にナニがくるので、医院長は片手で男のキ◯タ◯を握って頭よりも高く持ち上げた。

「うぎゃああ〜〜っ!」思いっきり急所を握られた男は悲鳴を上げる。

 そのまま胸ぐらを掴んで、シットダウン式パイル・ドライバーで大きく開いた股の間の地面に頭を叩き付けた。

 

 医院長さ〜ん、そんなはしたない技を使ったら見えちゃいますよ〜〜っ!

 

「ひええ〜っ、ま、待ってくださ〜い。杖はお返しします〜」

 杖を奪った男も腰が引けて、ヨタヨタしながら杖を差し出す。

 それを受け取った医院長は、頭の上でバトンのようにクルクルと回すと投げ上げてから地面に叩きつける。足元にあった石はそれに当たって砕け散った。

 それを見ていた男たちの中に、それ以上序列勝負ガントを申し込む者はいなかった。

 

 頭から落とされた男は『撲殺』程のダメージはなかったようでよろよろと立ち上がる、狼人族も結構タフである。

『お、おい。ふんどしだったか?』

『く、黒のレースだった』

 周囲で見ていた男たちに介抱をされている所で、こんな声がボソボソと聞こえる。

 

 どこからかビキッ!という音がしたような気がした。

「ボーークサーーツ!」  ゴイィィ〜〜ン!という音が周囲に大きく響いた。

 

「納得がいったら、これからはこの方たちがおまえらの訓練をしてくださる。龍神様は既に我々を守る存在ではなくなってしまった。

 あのマリエンタール上空の戦闘を見た者も多くいるだろう。お前たちが生き延びる為には龍神様と戦わねばならない。嫌な者は脱退を認めるから、どこへなりと出立して行くが良い」

 ゾンダレスがそう宣言するが脱退するという事はハグレとなる事であり、マリエンタール周辺の農村で大きな顔をして来た彼らである。そうそう村が引き取ってくれるわけでもなく、狩人が出来る訳でもない。

 元々はハグレが集まってきたような警備部隊である。彼らに行く場所など無いと言ってよかったのだ。

 

 早速警備部隊の再訓練が始まった。

 

 バオ・クーは主に基礎体力訓練を行った。森の中を槍を持って一日中走りまわるのである。台地への遠征をおこなった彼らにとっては普通の体力に過ぎないが、驚くことにこれで半数の人間が脱落をする。 

「これでは話にならんな、他の村に行っても使い物にはならんだろう」

 バオ・クーに見限られている、あるいは呆れられているとも言う。

 

 ゼンガーは槍術の訓練を行う事になった。

 

「とりあえず順番にかかってきなさい」

 そう言って刃の付いていない木製の槍を渡し、ゼンガーを攻撃させる。

 狼人族の平均身長は3メートル、僧兵であるゼンガーは2.5メートルである。甘く見た狼人族達は槍を持って突進するが、殆どが一撃で倒されてしまう。

 全員を倒した後初めて訓練が始められる。序列を先に叩き込むのが訓練を成功させる秘訣である。ゼンガーは狼人族の事を良く知っていた。

 

 魔法の使用に関してはリクリアとティグラの仕事である。

 

 これも何人か魔法で痺れさせてやればおとなしく言う事を聞くようにる。狼人族は物理的な攻撃には耐久力が高いが、こういった生理学的攻撃は他の種族と変わらず非常に効果的である。

 中には魔法を飛ばして来る無作法者もいたがOVISのシールドを貫通することは出来ない。目には見えないが彼女たちの後ろには黒い巨人が潜んでいるのだ。

 そう言った輩は念入りにOVIS支援の電気ライデンで痺れさせてやった。

 

 一週間も訓練を続けると能力の状況が見えてくる。指揮者には体力よりも知力、状況判断力が求められるのだ。

 その上で精神的にもタフさが無くてはならず、それに該当するのはわずかしかいなかった。もっともこの時点で既に脱落した人間の半数が姿を消していた。

 

 逃げ出す事も、戦う事も出来ない無能な人間にも使い道は有る。ベギム村の様に翼竜による攻撃が想定されるので、地下壕の掘削が行われた。

 セオデリウムによって固められた大地であり、固くは有るが手で掘削できる硬さであり、崩落の危険も少ない。流石に体力勝負の狼人族である。思ったよりも仕事ははかどり、城内のあちこちに避難壕を作って食料を備蓄した。

 

 意外なことに近くの村から集まってきた村人達は脱落すること無く留まっている。

 自分の生まれた村を守りたいという気持ちからであろうか?ハグレは所詮食うために来た傭兵であり、戦闘となれば真っ先に逃げだすのは当然であった。

 基礎体力の訓練はやはり近隣農村生まれの狩人達はかなり高く、魔法能力はそれぞれであった。

 もっとも、槍術に関しては全員が落第である。元々対人戦を想定していない狩人であり、どんなに偉そうなことを言っても所詮そのレベルでしか無い。

 無論それは悪いことではない。槍を対人戦に使わない事こそが狩人たる所以なのだ。

 

 魔法はその才能レベルに合わせて選抜を行った。

 魔法の才能のある人間には光弾フェルガ=ヘル・ファイアの魔法を使用できる人間も多く、ふたり一組でチームを作った。

 対空兵器としての人間と、それによって動けなくなった人間を運んで避難壕に退避する人間を組にする。この場合ふたりとも光弾フェルガを使う人間にしておかないと光弾フェルガを撃った後に射手を置き去りにして逃げ出しかねないからだ。

 

 あまり時間が無い中で着々と龍神攻略の準備を整えていく。

 しかし警備部隊が城塞都市に集中することにより補給に問題が出て来た。食料の備蓄は減少気味で特に肉の供給には不足をきたしていた。

 しかし警備部隊が訓練を行っているのは農繁期でもあり、村からの肉の供給は滞りがちになっている。

 

 そうなってくるとこの城で一番暇なのがコタロウであり、その仕事が回ってくることになる。


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