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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第七章 聖嶺の大地
181/221

神殿との決別

7ー012


――神殿との決別――


「それではあそこにいた怪物達は一体何なのでしょうか?」

 龍神ダイガンドの潜む掩体壕の中を覗いたゾンダレス、グレイの巨人や6本足のカラクリのことを言っているようだ。

  

「ダイガンドの世話をする為に天上神ヘイブのお仲間さんが作ったカラクリですよ」

「なぜカラクリが龍神様のお世話を?あの巨人は?人の姿にも見えましたが」

「自動車と同じです。進歩した文明が作り上げた人間を模した機械ですよ。おそらく大きな物を修理したりする為の物では無いでしょうか、今までご覧になったことは無かったのですか?」

「いえ、何かがいる事はわかるのですが、形がいささかはっきりしない巨人と言う認識はありました」

 どうやら外においては恒常的に認識阻害をかけていたらしい。コタロウもランダロールの神殿で見かけたが、存在しているのはわかるが、形が見えないという不思議な存在だった。

 

「世界中のあちこちに神殿と呼ばれる建物が有るのをご存知ではありませんか?その神殿を建て、維持しているのがあのグレイの巨人なのです」

「はい、台地の民が洗礼を受け巫女になると聞いておりますが…」

「翼竜の攻撃でバラバラになった神殿を修復しているのを見ました。まあ。姿はわからなかったのですがね〜」

 そう言えば黒い巨人には自立思考があった。グレイの巨人も同じなのだろうか? 

  

「私は長年に渡り周辺に住む狼人族と、街に住む兎人族の関係を調整してまいりました。兎人族が運航する台地ダリルが定期的に土地を耕してくれるので、実りは多く魔獣の生育も非常に豊かです。その対価として周辺の農家は年貢としてアルサトールに作物を納めております」 

 まあ…その年貢をちょろまかしているのがあなたなんですけどね…と思うコタロウ。

 

「現在は街の兎人族に周辺の狼人族が従属している関係が出来ておりますが、いずれは双方が対等な関係にしたいと考えております。龍神様に何かあれば現在の安定した関係が崩壊いたします。龍神様はこのままで大丈夫で御座いましょうか?」

「竜人族も生き物ーっ、いずれは死ぬーっ。それは龍神ダイガンドも同じーっ、不滅の生き物はいないーっ」

 パクパクとお菓子を食べていたカロロが答える。年ごろになったらカロロもコタロウみたいに太るのかな~?といらぬ心配をするコタロウである。


「ひとつお聞きしたいのですが、最初にボク達が神殿まで乗って来た自動車の事です。あのような乗り物は他では見たことは無いのですが、何処で作られているのでしょうか~?」

「そうでしょうな、あの乗り物がアルサトールだけで作れる物でしてな、年貢や資材の運搬に使われておりまして、街の発展には欠かせない道具なので御座います」

 誇らしげにブフォンと腹を突き出すゾンダレス、まあランダロールにも女神制の探査車がありますけどね。

 

「この街には魔法で作り出された品物が驚くほどあふれております。このお湯を沸かすポットの様な生活用品から私が乗っておりました自動車などです。それらはすべてが龍神様から下賜されたものです」

「あれは皆さんが開発された物なのですか?」

「はい、龍神教に所属する機構開発部が造った物ですが、まだ希少な物なので貨物用を優先してあれて効率的に年貢を収集しております」

「街の方もずいぶんガラスや鉄を多く使っている様ですね~」

「まだまだ世界では希少な物が、ここでは潤沢に使用できる様になっておりましてな、この街の発展の原動力になっております」

 

 やはりここはランダロール同様に、管理基地が全面的にその技術を供与している。

 アルサトールはランダロールと違い開放された街である為に技術製品は外部に輸出されている。問題は彼らは製品を使えても作ることは出来ないのだ。

 

「現在の龍神は500年間 天上神ヘイブによるコントロールが効かない状態にあります。これ以上それを放置する訳にも行かず滅する決断をしました。本当は天上神ヘイブも龍神を救いたいのですが、それも出来ない状況にあるそうです」 

「それでは天上神ヘイブは本気で龍神様を討とうと考えておられるのですか?」

「龍神の巣の上に大きな屋根がかかっているでしょう。あれは天の雷槌を防ぐために作られたものです。龍神を滅するだけであれば、天から雷槌を落とせば済むそうですから」

 その話を聞いたゾンダレスは真っ青になっていた。天の雷槌を落とされれば街にも相応の被害が出る事は容易に想像がつくのだろう。

 

「あれは、私が子供の頃には有りました、祖父の話でも自分たちが作ったという話は出たことがございません」

「おそらく作ったのはグレイの巨人でしょう。上空からの攻撃をあれで防いでいるのでしょうね、黒い巨人の攻撃でもなかなか穴が開かないくらい丈夫に出来ていましたから」

 直上の核爆発に耐える事は無いかもしれないが、それはアルサトールを巻き込む行為になる。龍神は兔人族を人質に取っていることになるのだが、彼らはそれに気がついていない。

 天上神ヘイブは、龍神を倒した後この街に近代道具の供給を続けることはなく、彼らはそれ無しで生きていかなくてはならない。

 

「皆さんがその製品を作れるのであれば問題はないでしょう。作れないのであればそれを使わない生活をすることになります」

 冷たい言い方だがそれを受け入れなければ、生きては行けないだろう。

 

「んん〜〜〜っ?」

 カロロが頭を動かして虚空を見つめる。

 

「ど、どうされました?カロロ様」

「神殿の方から乗り物が来るーっ。銃を持った僧兵が2名、僧侶が1名乗ってるー」

 どうやら上空の戦艦から街の状態を見ているのだろう。エンルーを通じてカロロに交感フェビルで連絡をしてきている。

 ゾンダレスの顔が途端に厳しくなる。 

 

「神殿の方も事態が落ち着いたという事なのかな〜?」

「違うと思うーっ。ゾンダレスさん、竜人とその仲間を神殿に連れ込んだ責任を問われるーっ」 

 ゾンダレスが自分の手柄とするために、教皇の御前にコタロウを連れて行ったのが裏目に出たようだ。

「竜人を捕まえられれば良いけどー、そうでなければ誰かに責任を押し付けるーっ」

「どうします?ボクを彼らに引き渡しますか?」

「よ、宜しいのですか?」

 できれば竜人を引き渡して責任を回避したいと考えるゾンダレス。

 

「良くは無いですよ〜。そろそろみんなの所に帰ってご飯を食べようと思っていたんですから〜」

 アハハハと笑うコタロウである。

「いや…その……。わかりました…」

 なんとも言いようの無い顔をして、自分の失態を反省するゾンダレス。

 その時ドアのチャイムが鳴る。僧兵達が到着したのだろう。

 

「コタロウ様はここから出ないように、いや…飛べるのでしたらその窓から外に出てお帰りください」

 ゾンダレスは所長室のドアを開けると玄関に向かって出ていく。

 外には僧侶が待っていた。その後ろには銃を構えた僧兵2名が控えている。

 

「これは神殿警備部隊の方ですか?騒ぎは収まったようでございますな」

 ゾンダレスが慇懃に挨拶を行う。

  

「ゾンダレス外周部警備部隊長殿、怪我をされたのですか?」

「巨人たちの戦闘に巻き込まれましてな、何しろ兔人族の避難施設には入れてもらえませんでしたから」

「それは、お互いの約束である以上逃げ遅れた貴下の責任である。貴下が龍神様の巣に入り込んだ証拠が有り、それにより貴下には反逆罪の疑いがかけられております」

「これは異なことを、竜人様がおいでになったので、総本山の方にお連れ致したのは私の業務範囲内のことで御座います。それがなぜ反逆罪ということになるのでしょうか?」

「竜人を語る者とその連れが大聖堂で大暴れをし、あまつさえ龍神ダイガンド様の巣にまで侵入を許したのは不届き千万、言い逃れは出来ませんぞ」

  

「私の管轄は外部通用門から通じる各道路まででございまして、警備本部を除く総本山を含むすべての建物の内部は神殿警備部隊の管轄ではございませんか。

 ついでに申し上げれば通用門内部においては、外周部警備部隊は神殿警備部隊の指示に従うことになっており、管理責任は神殿警備部隊に有るという認識で御座います」 

「現実に多くの被害が出ております。いずれにせよ貴下には状況の説明を願いたい。しかし竜人が捕まらない限り貴下の有罪は覆らないでしょうな」

 僧兵がザンッと前に進み出る、力づくでも連行するつもりだという意思表示である。

 

「ん?」

 僧侶が玄関の奥を見ると竜人がニッコリ笑って立っているのが見えた。 

「き、きさま!竜人をこんな所に匿っていたのか?」

「はあ?匿うって、何のことでしょう?ボクは傷ついたゾンダレスさんを家までお連れしただけですが?」

 ニッコリ笑って答えるコタロウ。こうなったら居直るしか無いだろう。

「コタロウ様!なぜ、お逃げにならなかったのですか?」  

「ああ、あの窓は小さすぎましてね、ボクのお腹は通りませんでしたから」

 プヨプヨプヨとお腹をつまんで見せる。年頃の男の子がやるべき仕草ではない。いや…まあ…コタロウは118歳なのですがね。

 

「竜人!大人しく指示に従え!さもなければ僧兵に実力を行使させるぞ!」

 僧兵が銃を構えてコタロウの前に出る。 

「ボクは窓を抜けられませんでしたが、妹は簡単に出られましてね〜。ほら〜、後ろに」

「なに!?」

 音もなく僧兵の後ろに降りてきたカロロが、思いっきり尻尾で頭をぶん殴った。

 

「「ぐえっ!」」

 ふたりとも一発で伸びてしまう、ますます強力になるカロロの尻尾。

 ああ〜っ、カロロちゃんがどんどん容赦なくなっていくな〜。

「おにーちゃん。ちゃんと殺さないように手加減したー」

 半分泣き笑いになっているコタロウの頭の上に、カロロは得意満面の顔で降りてくる。

 

「貴下の話はわかった、それがしはこれより村の外周部警備部隊官邸の方にむかう。用があればいつでも迎えに来られい」

 ゾンダレスは僧侶に向かって啖呵を切ると、僧兵達が乗ってきた車に乗り込み、コタロウを呼び込む。

「竜人さま、今後のこともございますので一度警備部隊官邸に戻りましょう」

 あれですか〜?ゾルダ村の大豪邸とかいうやつ?

 できればボクを巻き込まないで欲しいな〜と思いながらも、ゾンダレスと一緒の車に乗ったほうがトラブルは少ないかもしれないと考えて乗り込んだ。

 

「外に出る門の所に僧兵が槍を持って待ってるよーっ」

「たかが4、5名の僧兵でございますれば、そのまま突破致します」

 犠牲者を出さないでくださいよ、頼みますよ〜っ。竜人族は基本的に荒事が嫌いなんですから〜。

 幸い外部通用門にバリケードは無く、僧兵が槍で待ち構えていたが無視して突破する。無論槍などを投げては来るが車のほうが速かった。

 

「竜人さま大丈夫でございますか?」

「槍ではボクの体の皮は貫けませんからね〜」

 コタロウは一応カロロをお腹に抱きしめて槍から守っていた。

 

 それでもこういった事はできるだけ穏便に済ませたいんだけどな〜。


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