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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第一章 落ちてきた男
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カロロの親友

1ー018

 

――カロロの親友――

 

 昨日メディナちゃんは聖テルミナ病院の医院長を訪ねたみたいだけど、うまく医院長さんと話ができたのかすごく心配なの。

 もちろん、お兄ちゃんが医院長さんには相談をしていたみたいだし、カロロも知っている人だけど、むふふふ…と言ってヨダレを流しそうな顔をしていたらしい。

 いつも仮面をかぶっているから顔は見えないので、そんな感じというだけらしいんだけど、この人かなりアレな人だったからね〜…人選を間違っちゃったのかな〜…。

 

 今朝はメディナは少し遅く登校した。すごく心配だったのですぐに様子を聞きに行った。

 あまり元気そうでは無かったから、どうも医院長のアレ《・・》に当てられたみたいな気がするの。

 校舎の裏で話を聞いてみると木を隠すなら森の中とか、朱に交われば赤くなるとか、むふふふふ〜とか、よくわからないことを言われたらしいの。 

 それでもなんとか言われたことは理解できたので、早速教えられた魔法の遊びをメディナとふたりでやってみる。

 やってみると魔力をあまり使うことなく結構熱くなれる、意外なほど熱中出来るみたい。

「メディナこれ面白い、みんなとやるー♪」

 ニッコリと笑ってみせる、でもメディナはすこし不安そうだった。

 

 最初は教室の隅でカロロちゃんとふたりで始めた。

 手のひらに小さな光の玉を作ってお手玉をするのである。最初は一個から初めて2個、3個と増やしてゆく。

 普通のお手玉と違い球を魔法でコントロールしなくてはならないので数が増えて行くと格段のむずかしさが生まれる。

 魔法の大きさよりも魔力のコントロール能力が要求される遊びであった。

 さすがに炎の塊でお手玉をやれるのはカロロだけだったが、これならば大抵の子供ができた。

 やり方を教わると教室のあちこちで始める子供達が出てきた。

 そのうち動かし方のコツを聞きにくる子も出てきてメディナの周囲も徐々に変わっていった。

 

「メディナちゃんはもう大きな魔法は使わないの?」

「使えなくなっちゃったの、その変わりほら、こんなこともできるよ」

 メディナは手の周りで光の粒をくるくる回して見せる。

「わあ〜、すごい。どうやるの?」

 真似してできる子もいれば出来ない子もいた。それでもメディナの周りには友達が戻ってきていた。

 

 男の子達には折り紙で作ったボールを使ってテーブルサッカーを教えてみた。

 小さな竜巻を作ってそれで紙のボールを相手ゴールに押し込むのである。魔力の大きな子は竜巻を大きくするがボールはあらぬ方向に飛んで行ってしまう。

 大きな竜巻ではなく小さな物を作って、正確にボールをコントロールする練習であった。これもテーブルを大きくしてふたつ、みっつと竜巻の数を増やしていく。 

 こうしてみんなの魔法のコントロール能力が上がっていくと、メディナの持つ魔力の異常性はいつしか普通の事のように受け入れられる様になっていったみたい。

 そんな事もあってしばらく経つとメディナが目に見えて明るくなってきた。

 お兄ちゃんもずっと気になっていたみたいなのでメディナの事を教えてあげたの。

 

「うう〜ん、どうも要領を得ないね〜」

「あのねー、みんなでお手玉したのー、お手玉知らないのー?」

「お手玉?ボクの子供のときには無かったけどね〜、それはどういう遊びかな~?」

 仕方がないのでお兄ちゃんの前で、光の弾を作るとポンポンと投げ上げて見せるの。

「にゃっほー!」

 光の弾を掴んで順番に放り上げる。落ちてくる光の玉を手にした瞬間に隣の手に移動して放り上げる。

 ぽんぽんぽんと淀みなく玉が上に上がり手の中に戻って来る。重力で落ちてくるのではなく全ての動きをコントロールするの〜。

 

「それって前にカロロが火の玉でやっていなかったか?」

「あの時、ファイアボールだったー、カロロの服燃やした、それでメディナ孤立したー」

「あ〜っ、そういうことか。光玉ならば危険は無いからこれなら誰でも出来るね〜。どれ?」

 お兄ちゃんも光の弾を動かし始める、意外とお兄ちゃんは器用なの。 

「やってみるとこれが意外と難しいね。光玉は放り投げるのではなく魔力で飛び方を完全にコントロールしなくて出来ないんだね」

「数増やすー、難しさ、ばいぞー!」

「ファイアボールでやってみると、こちらの方が実体が有るだけにむしろ簡単だね。成程、魔力コントロールにはいい訓練かも知れないな〜」

 

 そのつぎは竜巻サッカーを教えてあげる。

「なーるほど、竜巻はなるべく小さく作って正確な動作が必要なんだね、他の竜巻にぶつかると弾かれちゃうし」

 思った通りお兄ちゃんの竜巻は大きく、獅子族の大人よりも大きい竜だから魔力は豊富に有るようだ。 

「うわ〜っ、駄目だね〜。ボクの竜巻じゃ大きすぎて玉だけじゃなくて他の竜巻まで弾き飛ばしちゃう」

 弾き飛ばされても実体が有るわけでは無いのですぐに復活する、瞬間的に大きくして相手の竜巻の動きを妨害するのもテクニックになるの。

 

「コート大きくするー、竜巻増やすー、むずかしさ、ばいぞー!」

「魔力の大きい獅子族の子供達が力任せの竜巻を作っても勝てないと言う訳だね」

「個人戦、団体戦も様々なバリエーションも可能、種族を問わない、魔法コントロールのうまい者、勝つなのー」 

「子供はすぐに魔力コントロールが上手になるだろうからね、これなら魔力が強力なメディナちゃんも、結果としては目立たなくなるね。」

 あの医院長さんはアレみたいだけど、ちゃんとメディナの事を考えてくれていたー。

 ちょっとのあいだお兄ちゃんは何かを考えていたみたい。

 

「メディナちゃんは家に来て魔法の練習をしたらどうだろう?ここなら誰にも見られないし大きな魔法も使えるよ」

「メディナちゃん、魔法が強くなるの望んでなーい、友達無くすー」

「いやいや、そんなに強力な魔法能力が有るのなら是非伸ばしてあげなくちゃ、どのくらい伸びるのか興味も有るしね〜」 

「おにーちゃん、魔獣を研究する時の目してるー」 

「いや〜〜〜っ、とんでもない。魔法が強ければ大人になって職業選択の幅が広がるよ〜」

 パタパタと手を振って否定をするおにーちゃん、しかし尻尾は正直にフルフルと振るえている。

 

 メディナの家は、小さな畑とお父さんの猟でそれなりには生活ができてる。でもあまり余裕は無いみたい。

 魔法を職業に出来れば、もう少し裕福な生活ができてメディナと一緒に中等科の学校にも行けるかもしれない。 

 この街では学校は無料で行かせてもらえる。普通は中等科まで行くが家庭の経済状況でそれを許されない子供も多く、高等科に行く子供はさらに少なかった。

 高等科を良い成績で卒業すれば教師の職に就くことも出来るし、魔法の力が強くてコントロールが上手ければ、狩人ギルドの訓練センターの仕事にも就ける。

「いく!お金を稼げるなら、絶対に強くなりたい」

 メディナも魔法はお金になると言う話を医院長さんから聞いていたが、学校ではもう強い魔法を練習することは出来ないと諦めていたらしい。

   

「で、でも家族の人たちは?」

「大丈夫、みんなメディナ来る、喜ぶー、特にお兄ちゃんは、ものすごく喜ぶー。家に来るの大人ばかり、カロロ友達来る、とても嬉しいー♪」

 竜は街の人から畏怖と尊敬の目では見られるが、あまり友人になりたいとは思わないものである。何より大きさと年齢が違いすぎるのだ。

 お兄ちゃんはせめて子供の間だけは、普通の友達がたくさんできれば良いと思っていたらしい。

 無論お兄ちゃんの目的がそれだけでは無いことに薄々気がついているカロロであった。

 

「いや〜〜〜っ、メディナちゃん、ボクとカロロも一緒に魔法の練習をすることにしましたよ〜」

「お兄ちゃん、大学の授業、有るー」

「そうよ〜、お兄ちゃん。お仕事はサボっちゃ駄目ですよ。」

「大丈夫だよ〜お母ーちゃん、シフトを変えてもらって初等科の授業時間に合わせてもらうから」 

 そんな訳でメディナは竜の巣に来て魔法の練習をするようになった。

 

「竜人族はもともとの魔法力が大きいので威力は有りましたけど、やってみると意外と細かいコントロールが苦手なだった事に気付いたんですよ」

「お兄ちゃんの魔法は力任せ、繊細さがなーい。メディナずーっと上手ー」

「医院長さんはしっかり見ていますよね〜、多分ボクにもやらせたかったのだと思いますよ。見かけはアレだけどアドバイスは的確ですからね〜」

 

 学校でやっている様な遊びとは違う魔力コントロール方を色々考えてやってみる。

 魔法は生活魔法として使うものもいるが、大半は狩人業の補助的能力として鍛える場合がほとんどである。

 したがって強力な魔力が重要であり、細かい魔力コントロールはあまり重視されて来なかった。

 元々竜人族の使用する魔法と言えば、炎を吹き出すブレスと、炎の塊を出すファイア・ボール位だった。

 しかしカロロは、ほかの魔法も一生懸命練習して光や電気、風の魔法なども自由に使える様になっていた。

  

「ボクの時にはこんな勉強はしませんでしたね〜。今後魔法教育に大きな革命を起こすのかもしれませんよ〜」

 竜人族の場合、どんな魔法を使えても結局は魔獣を捉えられれば良いのであって、そんなに魔法の種類を増やす必要は無かった。

 そもそも大人の竜のブレスは、それ自体とてつもない威力が有るから狩猟に使うと獲物が黒焦げになってしまうのだ。

 一方で人間の使う魔法で魔獣に止めを刺すのは難しく、遠距離で魔法を使っても魔獣は瀕死の常態でも逃げてしまうのだ。だから槍で突き刺して止めを刺すのが普通である。

 

「ねえカロロちゃんヘル・ファイアの魔法って使えるの?」

 ある日メディナがとんでもないことを言い出した、 獅子族のヘル・ファイアは別格で獲物を消し飛ばしてしまう、狩りには使えない強力すぎる魔法なのである。

 その一方で、体内の魔力細胞の全てを使う魔法であるから使用後はまともに動けなくなる。余程危機的な状況においてのみ使用できる切り札の様な魔法である。

「それは面白いかもしれませんね、カロロが使ったらいったいどんな魔法になるんでしょうね」

「お兄ちゃん、それカロロで試すつもりー?」

 ジト目でお兄ちゃんを睨むと笑い顔でそれを誤魔化す。

 

「あはははは、ボクがやって成功したら獅子族以上の威力になっちゃいますからね〜」

 山の上とは言っても街の真ん中である、こんな所でそんな魔法を使うわけにもいかない、と思いつつも好奇心には逆らえなかった。 

「やってみるーっ♪」

 お兄ちゃんは、相変わらずマッドサイエンティストな思考だなー、と思いながらもやってみることにした。

 口を開けてヘル・ファイアをイメージすると、カロロの口の中に光の粒が集まってくる。

 

「おいおい、本当にやる気なのか?」

 お兄ちゃんが焦ってカロロの体を持ち上げて上を向かせると、突然口の中から目もくらむような強力な光の筋が発せられた。  

「キャーッ」

「うわわっ、本当に出ちゃった!」

 幸いな事に発せられた光はどこにも当たらず上空の彼方に消えて行った。

 

「はにゃにゃ~~」

 体中の魔力細胞を失って、力なくお兄ちゃんの手の中で伸びているしまった。

「いや~~っ、これは本当に使い勝手の悪い魔法ですね~」

「う〜ん、体中の力が無くなった〜!おなか減った~」

 威力は体の大きさ並みで、獅子族の十分の一もなかった。しかし力が抜けて猛烈にお腹が空いてしまった。 

 

「あらあらそれじゃカロロちゃんは夕飯にはモツを食べましょうね~」

 お母さんがニコニコしながら魔獣の臓物を引きずり出していた。

「ワシらが使ったら町の一つや二つ消えて無くなりそうだな~」

 お父さん物騒な事言わないでください。

「いや〜っ、カロロの魔法を見たらこれ以上巣で練習するのは危ないと思いますから、少し遠出して人のいないところに行きましょう」

「お兄ちゃんもヘル・ファイア撃ってみたいー?」

「い、いや〜っ、そんな事無いよ〜、あ〜っ、はははは〜っ」

  

 図星だったみたい。

 

 というわけでお兄ちゃんはメディナを抱えて、周囲に人のいない山の頂上まで飛んできた。

 ここなら思いっきり強力な魔法を使えるとばかりに、お兄ちゃんは空に向かって強力なブレスを発射してみる。

 岩陰でそれを見ていたメディナはその威力に驚愕したようだ、お兄ちゃんは子供と言っても竜人族だからね。

 メディナもここでは全力の魔法を使って見る事にしたみたい、自分の魔法の上限を知るのも重要な事だとお兄ちゃんにおだてられたせいなの。

 ぜったい魔獣研究者の思惑でそう言っているに違いない。

 

「それじゃ行くわよ〜っ」

 メディナが両手を前に出すとその手の中に空気が渦を巻き始める。最大魔力でそれを木にぶつけると太い木がスパッと切れる。

「わわわっ、こりゃまずい」

 慌てて木を押さえてゆっくりと倒すコタロウ、メディナに怪我でもさせたらお母ちゃんたちに折檻されてしまう。

 

「まずいね〜っ、これ獅子族並の威力があるよ〜っ」

「この魔法も人前じゃ使えないわ、やっぱりアタシの魔法は人に見せるべきでは無いわね〜」

 以前カロロの服を切り裂いた魔法であるが、カロロは特別である。こんな魔法を人のいる所で使ったら殺してしまう。

 いささか落ち込み気味につぶやくメディナであった。

 

 最後にヘル・ファイアの魔法も試してみた。メディナは口からではなく手の間から出してみる事にしてみる。

 下手に口から出したら髪の毛が丸焦げになるかもしれないと思ったそうだ。

 うんと小さく、小さくと念じて魔法を出したので、本当に小さなヘル・ファイアが出た。

 ズバン!と的にした細目の木が真っ二つになって倒れる。 

 

「おお〜っ、本当に出ましたね〜。すごく小さいけど貫通力はすごく高いよですよ〜」

 しかしメディナは全く体に違和感を感じる事は無かったらしい。

「メディナ、なんともない?すごーい!」

「やっぱり魔力コントロールのせいかな~?体内魔力をうんと少なく使ったんですね〜。ボクもやってみようかな~?」

 大きく口を開けて精神を集中させると、口の中に光の粒が集まってくる。

 

「お兄ちゃん、ダメーーっ!」

「や、止めてください、私達が帰れなくなります〜〜っ」

「おにーちゃん、メディナを一人で家に帰す気なのーっ?」

 ヘル・ファイアを撃とうとするコタロウの頭をカロロの尻尾で思いっきりぶん殴った。 

「あははは、そう言えばボクが魔法切れになったら二人を連れて帰れなくなってしまうね〜っ」

 頭を殴られたショックで気がついた様だ。

 それでも諦めきれずに、後日お父さんと一緒に出掛けて試し撃ちをしたらしい。

 お父さんにぶら下げられて帰ってきた。やはり全身の魔獣細胞を使いつくしてしまうのは同じであった。

 

 その頃になると頼んでいた人間用のテーブルと椅子のセットもそろったので、竜の巣に有るカロロの部屋でふたりで勉強するようになっていた。

 コタロウの買ってきたお菓子でお茶を飲んだりみんなで話をしたりしていた。

 メディナの友人たちも再び戻ってきた。友人や、竜人に囲まれてメディナは心の底から笑えるようになっていた。

 

 メディナとの楽しい学校生活はこうして過ぎていった。


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