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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第七章 聖嶺の大地
179/221

龍神の巣の攻防

7ー010

  

――龍神の巣の攻防――

 

 まさかこの様な事になるとは思ってもいなかった。竜人と言えば500年前に龍神様の眠りを覚まし、龍神教の開祖の元となった三位一体の存在ではないか。

 せっかく竜人様をお連れしたと言う名誉を受けようと目論んだ行動が裏目に出てしまった。

 なぜだ?何ゆえに教皇は竜人に攻撃をしなくてはならないのだ?

 

 しかも竜人たちは僧侶や僧兵たちの攻撃を物ともせずに大聖堂から飛び出して行ってしまった。

 ゾンダレスはその戦闘の中を逃げ回っていたが、気がつくと大聖堂の中に一人取り残されていた。

 僧兵も僧侶も竜人たちを追って大聖堂の裏の方に向かって走っていった。

 

 何があるのだろうと思って行こうかとも思ったが、教皇も神殿長も姿を消している。流石に危険を察知して逃げだす能力に関しては天性の兎人族である。

 大聖堂の裏の方から何やら爆発音のようなものも聞こえてくる。やはり相当に危険な物があるのだろう。

 この際である、龍神教の秘密を見ておくことも悪くはない。後々の取引材料に使えるかもしれない。

 

「なんだ?これは?」

 

 そこで大きなトンネルを発見する。トンネルの手前の大きな広間に車両が止まっていた。どうやら僧兵達はこの車に乗って行ったように見える。

 真っ直ぐに緩やかに登っていく通路の先は見えない。行くべきか行かないべきか、ゾンダレスは一瞬の間逡巡をする。

 しかしトンネルの奥からド、ドドドーンと連続する爆発音が聞こえたので、ゾンダレスはすぐに車に乗り込んで発車する。

 

 これまでにも教団には随分金を貢いできたにもかかわらず、ゾンダレス自身こんな地下通路の存在を知らなかった。

 教団に取り入ることが自分が出世する手っ取り早い方法であると信じて活動してきたが、教団は殆どの事を秘密にして何も明かしては来なかったのだ。

 

「こんなトンネルを作りおってどこに繋がっていると言うんだ?」 

 ゾンダレスはこのトンネルが龍神ダイガンドを囲っている土の天井の下に繋がっていることを疑ってはいなかった。

 今回はその教団の秘密に近づくことが出来るかもしれない。そのチャンスを逃すべきではないと心の声が言っていた。

 

 走っていくと、前の方に何台かの車がひっくり返って止まっているのが見えた。警報音が鳴って車は勝手に停止する。よく見ると周囲には兎人族の僧侶や僧兵がうずくまっている。

 安全装置を解除し、手動で動かし始めると僧兵が走り寄ってくる。止められるとまずいと思い窓を開け大声で叫ぶ。

「皆さんどうかご安心ください、龍神様は私がお守りいたします」

 そのまま手動で走り抜けるとやがてトンネルを抜ける。

 

「何だこれは?」

 そこは既に戦場であった。

 

 慌てて車を後退させてトンネルの中に戻ると、グレイの巨人が発するなにかの攻撃が周囲の壁に当たって爆発を起こした。

 トンネルの先には巨大な物が鎮座しており、そこに何本もの管が繋げられているのが見える。それが龍神ダイガンドであることは間違いがなかった。

 

「ダイガンド様が?なぜあのようなお姿に?」

 その巨体の上部から何かがせり上がってきて黒い巨人に向かって光弾フェルガを放つ。

 その途端に警報音が響いてトンネルの出口にシャッターがおりてくる。中に入るのか?戻るのか?一瞬迷ったがすぐに体を引っ込めてトンネルの側に戻った。

 虫のようなカラクリが徘徊し、黒い巨人とグレイの巨人が暴れまわっている。明らかに生身の人間が、入って良い場所ではなかった。

 

 突然トンネル内部にも赤い警告灯が点滅し警報音がなる。これは数日前にもあった警報で、あのときは龍神ダイガンドが天空に向けて巨大な光柱を発射し地面が揺れた。今回も前回と同様の事が起きるのだろう。

 考えてみればあの竜人はダイガンドの攻撃で落ちてきたのではなかったのか?

 

 これ以上ここにいる事は危険であり、その意味もない。手動で車を動かして戻ったが事故を起こしていた車のところには既にそれらもなく、僧侶も僧兵もいなかった。

 

  *  *  *

 

「おにーちゃん、物陰に隠れるのーっ」 

 龍の巣の掩体壕の入り口から外に出たコタロウは少しでも離れようと必死になってトコトコと飛んでいく。

 

「発射したーっ!」 

 発射と同時に周囲の気温が一気に上昇する。コタロウは頭の上からカロロを引っぺがすと、お腹の中に抱え込んで物陰にうずくまる。

 

 ゴオオオオーーーッと音を立てて龍神の口から強力な光線が発射された、龍神の発するヘル・ファイアである。

 強力な光線は衝撃波で雲の輪を作り上空に消えて行った。その輻射熱でコタロウの周囲の草にも火が付いている。

 

「あちちちちい~っ!」コタロウの背中が焦げて悲鳴を上げる。

 シールドすら貫通してくる輻射熱で尻尾に続いて背中も焦げている。今日は厄日だなーと思うコタロウである。

 

「ふぎゃーっ、お父ちゃんのヘル・ファイアよりすごい威力だーっ」

「街の方に被害が出てないだろうな~っ」

 涙目になりながらも周囲に気を配る竜人である。

 

  *  *  *

 

「ま、まずいわよ~。街への被害は無かったのかしら~」

「今の所は確認が出来んようじゃ、まあ大気圏突入時にこの艦に向けても発射された事が有るから大丈夫なんじゃろう」

 核兵器並の破壊力のあるそれは、竜のお父さんのヘル・ファイアを凌ぐエネルギーである。

 ヒロとメディナのOVISは全速で加速をして発射直前に龍神の顔の横を通り過ぎていった。

 

「よ〜し、上手く躱せた様じゃ」

「ああ〜ら、あれが龍神様のヘル・ファイアなの〜?流石に竜のお父さん以上のエネルギーね〜」

 医院長は船長席でガーフィーの膝の上に座って艦橋モニターを見ている。

 

「いくら体が大きくても使える魔獣細胞には限りがある。口から出す魔法に尻尾の魔獣細胞は使えないじゃろう」

「そうなると皆が龍神の頭のある掩体壕の出口から逃げ出すのはあまりうまくないな」

「あら?ガーフィーさん何を考えていらっしゃるの~?」

 

「まずい状況じゃろう、彼ら全員が龍神の巣に飛び込んでしまった。中では周り中敵だらけじゃからな、一刻も早く救助しなくてはならん」

「そうじゃ。しかしあまり高度を下げるとこちらが龍神の攻撃を受けるぞ。今はシールドが無いから艦が破壊されるじゃろう」

「龍神はこちらの存在を知っているのか?」

「うむ、知っておる、その上で彼らを攻撃できないと踏んでおるのじゃ。残念ながらな」

 ガーフィーはしばらく考えていた。

 

「この船の主砲と言うのはどの位の威力があるんじゃ?」

「そうじゃな、龍人の親父のヘル・ファイアと同じ位のエネルギーかのう」

「あの掩体壕を撃ち抜ける威力は有るのか?」

「ああ、有るが反射波で街が炎上をする事になる、あれは核兵器並のエネルギーじゃからな」

 核兵器という言葉の意味はわからなかったが、相当に危険なものだとは理解できる。

 

「もっと低い威力の兵器は無いのか?あの屋根を打ち破るだけのもので良い」

「副砲が有るがこの距離からではあの掩体壕は破壊できん」

「ワシらが獲物に止めを刺すときには、密かに近寄り槍を構えて急所に向かって突進する。近くで撃てばそのくらいの威力は有るだろう」

「うむ、そうじゃな。しかしその後はどうする?一緒にグレイの巨人も出てくるじゃろう。彼らは後ろから追撃されるぞ」

 

「街には龍神の配下が住んでいるのじゃろう。街の上空を低く飛べば上から攻撃することになり、街の住人に被害が出る。龍神はそこまでするのか?」

「それは…わからんな」

「我々は急いで引き返し、グレイの巨人の後ろを取って彼らを落とす。あの中央の大きな道路の上を飛べば、街の被害は最小になるじゃろう」

 

「ああ~ら、ガーフィーさん意外なほどに頭が良いのですね~」

「一応高等部の教育まで受けておるしな、狩人と言えども獲物の魔獣の能力は必ず把握しておかなければならんのだよ」

 流石に狩人の頭目を務める男である。敵を見定め予断なくその危険性と急所を見出す能力は高い様だ。

 

「現在は巣の中で4人のOVISとドローンが情報を収集しておる。各種計測器と視覚情報から装備されている兵器やその威力の情報が集められている筈じゃ」

 エンルーとシリアは瞑想ウタキの中で4人の状況を見ながら指示を出していた。

 意外な事に妨害はされていない。おそらくそこを妨害してしまうと自分の行動そのものに支障が出るのであろう。

 既に巣の中では竜人が次々と自分の体内の砲塔を隆起させ、OVISに向かって攻撃をしてくる。

 

 床の上では小型の支援機械が黙々とエネルギーの切り替え業務を行っており、龍神、OVIS両方の流れ弾を浴びているが逃げるそぶりもない。

 それは当然の事であり6脚の作業機械は所詮は消耗人である。それに対してグレイの巨人は龍神の砲塔の攻撃から逃げる為にOVISに対する攻撃が出来ずにいる。

 やはりグレイの巨人はそれぞれが高価な存在なのだろう。

 

 ティグラ達にヒロ達も加わり狭い巣の中を飛び回りながら内部の情報を集めていく。

 ところが最初は龍神砲が当たると内部の機器が壊れていたのだが、すぐに壊れなくなってきた。室内にシールドが張られてきたからだ。

 

『室内側のシールドが構築されてきました、それが出来上がるとグレイの巨人から攻撃を受ける事になります。早めに脱出をしてください』

『エンルーかい?わかった潮時だね、脱出するよ!』

『しかし何処から脱出をする?アルサトールからの通路は閉じられてしまっているぞ』

『入り口からの脱出は駄目だ、龍神のヘル・ファイアの追撃を受ける。あんなエネルギーはOVISのシールドでは防ぎきれない』

 

『大丈夫です、天井はまだシールドに覆われていません。戦艦の副砲を使って天井を破りますからそこから脱出してください』

『よしわかった、フォローしてくれ』

 エンルーの指示を受け戦艦の砲の着弾位置から左右に散開する。

 

 戦艦は急降下を行いながら掩体壕に接近し、副砲の一撃を与えてすぐに離脱する。

 天井が破壊され穴が開いて空が見える。破片が落ちてきて周囲に埃が舞って視界を遮られた。

 

「GYAAAOOOUU~~~」 

 龍神が大きな吠え声を上げると、グレイの巨人が一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 

『かまうんじゃないよ、全速で穴から飛び出すんだよ』

 グレイの巨人の攻撃をシールドで躱しながら全員が穴を目指す。突然グレイの巨人の動きが鈍くなる。エンルーが龍神の指示を妨害したようである。

 

『逃げるよ!外にでたらアルサトールの方向に飛行して街を盾にするんだ』

『ティグラおばさん!言い方!』

 正義の味方としてはあまり良い言い方では無いだろうとヒロも思う。しかし戦略的には正しい、いくら龍神でもその配下である街に対する攻撃はしないだろう。

 

 破壊された天井から皆で飛び出し街を視認すると、そちらの方にコースを取る。後方からグレイの巨人が追ってくる。

 

『みんな、出来るだけ低い高度を取って全力で飛行するんだよ』

『注意、高速衝撃波による街への被害が予想されます』

 OVISが警告を発してくる。

 

『まとまるとグレイの巨人の集中攻撃を受けるよ、散開してジグザグに飛行をするんだ』

『すぐに街が途切れるぞ、街から出たところで集中攻撃を受けてしまう』 

『OVISの外装兵器には小型ミサイルが装填されている、それを後方に撃ち出してから上昇をするんじゃ』

『そんな事をすれば、街にミサイルが落ちて甚大な被害が予想されますよ』

『構うもんかい、兎人族にそんな迂闊な奴はいない、今頃みんな逃げだしているさ!』

 

『おばば様、皆さんの後方から戦艦が接近します。戦艦は広い中央通りの上空を飛行しますから、それに掴まって脱出してください』 

 高度200メートル程を高速でふっとばす。衝撃波こそ出てはいないが、風圧で周囲の建物が揺れガラスが次々と割れていく。

 一方グレイの巨人も上空から攻撃をしてきており街に着弾して被害が出ている。意外と龍神も容赦がない。

 ティグラの言う通り兎人族が逃げ出している事を祈ろう。

 

『後方から戦艦が接近、中央通り上空500メートル、各自で戦艦にしがみついてください』

『聞こえたかい?少しくらい壊れても構うものか、必死でしがみつくんだよ!』

 

 掩体壕を攻撃した戦艦が反転して、低高度で全力加速を行いながら追いついてくる。中央通りの両側の建物の窓ガラスが次々と砕けていく。

 グレイの巨人が戦艦に向けて攻撃を仕掛けてくる。ボン、ボンと戦艦に着弾する中、OVISは所かまわず戦艦にしがみ付いた。

 

『コタロウさんはどうなったんだ!無事に脱出できたのか?』

 最後にヒロの叫ぶ声が聞こえた。


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