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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第七章 聖嶺の大地
172/221

外周都市警備部隊

7ー003

  

――外周都市警備部隊――

 

「な、なんじゃあ〜、リクリアのあの格好は!生足があんなに見えてしまっておろうが」 

 リクリアの格好にガーフィーが驚いていた。いや、あんた狩人なんだから女性メンバーの裸くらい見慣れているだろう。

 

「ガーフィーさん、リクリアさんだと足が見えるのが気になるんですか?」

「い、いや。そんな事は無い。ただあんなドレスを着て出て行ったとは思わなかっただけじゃ」

 いきなり真っ赤になって汗を噴き出している。水浴びでの女性の裸よりドレスの生足の方が色気を感じるのは、種族を問わず同じなのかもしれない。

 

「なんじゃ?ティグラ殿は物凄く強気じゃな」

 艦橋で様子を見ていたセイラムも呆気に取られている。当然の事だがティグラがいくら大きくても狼人族にまともに太刀打ちできるはずもないのだ。

 この人は管理頭脳エネミーズだからリクリアの色気には全く興味を示さない。外見相応の反応を期待したのだがダメなようだ。

 

「まあコタロウさんもおられますし、いざとなればOVISで介入すれば大丈夫ですよ」

「ご存じないかもしれませんが、ティグラお婆様は本当はとてもお強いんですよ~♡」

「いやいや、エンルーちゃん、いくら何でもそれは無いでしょう」

「まあ、ご覧になっていてくださいませ。リクリアさんもおられますし」

 

「一応、OVISに付けた外装兵器には、オリジナルには無い対人兵器を実装しておきましたのよ~、だってあの兵器を人に使ったら蒸発して無くなっちゃうでしょう~」

 

 またしてもコイツか……たまには良い事もするんだな〜。

 

  *  *  *

 

「て、てめえ!なんてことをしやがる!」

 

 頭をしたたかぶつけたにも関わらず起き上がってティグラを睨む。流石に狼人族は頑丈に出来ているようだ。

 もっとも電気ライデンの魔法を受けた方の連中は白目を向いて動く気配はない。

 

 リクリアさん、もしかしてOVISの力を借りました?

 いくら何でも個人の魔法で狼人族6人を一度に倒すのは無理でしょう、あれは大型魔獣グリック並に耐久力の有る人間なんですから〜。

 

 ティグラはゆっくりと立ち上がって隊長の方に歩いていくと、顔の前に手をかざす。

 

「竜人様に対する悪口雑言許しがたし、天誅である!」

 顔の真ん前で再び衝撃波バルンガの魔法を放つ。

 

「ぐへっ!」

 

 何の躊躇も慈悲もなく、男の顔に至近距離から物理的ダメージを与える。普段のティグラからは考えられない冷酷さである。

 

「ティグラさん、かっこいいーっ♡」

 

 化粧をし大人のドレスを着たティグラは、背筋もしっかりと伸ばして女盛りの迫力を見せ付ける。

 

「カロロちゃ〜ん、真似しちゃだめだよ〜」

 

 お願いだからあんまりヤンチャにならないで〜、と願うコタロウである。

 

「てめえ!ふざける…ズバン!…ぐはっ!」

 

 男が言い終わる前に衝撃波バルンガが打ち込まれ、顔が大きく歪んでその威力を伺わせる。

 

「こ、このや…ズバン!…がはっ!」

 

 隊長が何かを言う度に容赦なく魔法が放たれる。

 

「ま、まて…ズバン!…あぶっ!」

 

 やがて、その衝撃で顔のあちこちが膨れ上がって来る。

 

「や、やめ…ズバン!…ぶへっ!」

 

「なんじゃ?なんか言ったか?」

 

「さっさとやめねえとぶっ殺すぞ!」

 

「妙齢な女性に言う言葉では無いな」

 

 ズバン!ズバン!ズバン!冷酷無慈悲な衝撃波バルンガ3連発である。

 

「お、お願い…やめへくらひゃい…」

 

 顔の形が大きく変わった男は涙目で訴える。

 

「み、巫女様。その辺で許してやってはいかがでしょうか?」村長が見かねて止めに入る。

 

「そうか?それでは竜人様に平伏して詫びるがよい、竜人様は御慈悲深いからな」

 

「へ、ヘイ…」

 

 顔が変わってうまく喋れないようで、ゆっくりと頭を上げる。

 

「んなわけありゅか!」

 

 男はいきなりその口を大きく開けると、その中に粒子が集まり始める。ヘル・ファイアの発射体制である。

 

 瞬間的にカロロの目が吊り上がり、口の中に炎の塊が出来る。

 

「アホが!」

 

 カロロが炎弾フィアを撃つ前に、ティグラは素早く男の口の中に足を突っ込む。

 

「ウゲッ!?」

 

 突っ込まれた足で、男の頭が床に押し付けられる。

 

「ほれ発射してみい、頭がなくなるぞ」

 

 突っ込んだ足をグリグリと動かすティグラ、全く容赦がない。

 

「ウゲーッ!」

  

「狼人族は犬系の種族じゃからな、口の奥に物を突っ込まれると口を閉じる事が出来なくなるんじゃよ」

 

 流石、狼人族の中で生き延びてきた兔人族のティグラである。

 

「ムヒーッ!」

 

 男も何とかティグラの足を抜こうとするが、さんざんダメージを受けているので力が出せないみたいだ。

 ティグラに命を助けられた男である。もしそれが無ければカロロの炎弾ファイア・ボールで頭が無くなっていたかもしれない。

 

 カロロちゃ~ん、本当に殺すつもりは無かったよね~。心で、冷や汗もののコタロウである。

 

「ほれ、コタロウ殿、腹の上に乗ってやりなさい」

 

 それでも暴れると面倒だと考えたティグラの指示である。コタロウは身長こそ低いが体重は300キロ以上あり、狼人族よりも重い。

 

「は〜い♪」 ドスン!

 穏便に済ませられるとわかったコタロウは喜んで上に乗る。

 

「ウグエエエーッ!」

「ほれ、竜人様の真の重みを感じるとええじゃろう」

 

 コタロウが男の顔を覗き込もうと顔を前に出す。するとその頭の上でカロロが炎の玉を手の爪先の上で回し始めた。

 口から細く炎を出し、回っている炎の玉にエネルギーを供給して行くと、どんどん玉が大きくなる。

 それがどういう意味を持つのか瞬時に男は理解した。落とされたら頭がなくなる。

 

「ウギィイエエ~~ッ!」

「ほーい、ほいっ」

 

 楽しそうに炎の玉をお手玉にして、もて遊ぶカロロ。

 

「ブギッ、ブギッ!」

 

 炎の玉を見ている男の目が泳ぐ。

 

「おーっと、しまったーっ♪」

 

 ところが、クルクルと回る炎の玉をうっかり落としてしまった。

 

「グヒイイイ~~~ッ!」

 

 顔に当たる寸前に尻尾で受け止める、カロロもなかなかの役者である。妹の行く末が別の意味で心配になるコタロウだった。

 

「何じゃい情けない奴だね、白目を向いちまっているよ」 

 

 村長の話によるとこの辺一帯には100程の村があり、台地ダリルの耕した土地で農業を営んでいるらしい。

 台地ダリルは聖都アルサトールの配下にあり、村はその農作物の6割をアルサトールに納めているそうだ。

 

「多すぎないか?」

「小さめの台地ダリルが頻繁に、と言っても10年ごと位ですが、この周辺を通りますので収穫は良いのです。水の問題もありますが、乾燥に強い作物を作ればそれなりの収穫は見込めます」

 

 村の有る周辺だけを避けて、両側を台地が通過するので村を移動せずに畑に隣接した作業小屋を作れば安定した農業が出来る。植物が頻繁に生え変わるので動物も良く集まって来るらしい。

 つまりそれだけの年貢を納めてもそれなりに生活は成り立つそうだ。元々狼人族の村であり主食は肉である。

 

「年貢は大きな重みになっていますが、この辺りはそれなりに豊かな土地なのです」

 

 年貢の徴収はこの警備部隊の人間が行っており、彼らはアルサトールの外縁部に街を作っていると言う。

 

「何故彼らと年貢の交渉を行わないのだ?」

「もし彼らのいう事を聞かなければこの村が台地ダリルに踏みつぶされます」

「逃げるだけの時間は十分に有ると思うが?」

「それでも全てを持って逃げる事は無理で、多くの機材が失われます。その失われた機材は新たにアルサトールから買わなくてななりませんから」

 

 どうやらアルサトールも様々な施策で農民を縛り付けているようだ。

 

 ティグラは狼人族の警備部隊の連中を正座させてその正面にコタロウを鎮座させ、ティグラはその横に立っている。コタロウの頭の上ではカロロが足を組んで座っていた。

 彼らは3メートルの大男なので正座してもティグラより背が高い。

 

 その横にはリクリアが立ち、その手から時々稲妻をパチパチと発して威嚇をしている。力で相手を威圧する人間は、力で抑え込まれると従順になるようだ。

 隊長の顔はティグラの魔法でボコボコに膨れ上がり原型をとどめていない。もっとも狼人族であるから数日で元に戻るだろうが。

 

「ろうもはや、もうひゅわへ……」口が開かずにモゴモゴと答える。

 

「どうじゃ?まだこの竜人様をカタリだと申すか?」

「ひ、ひいえ…そのひょうな事は…」

「それでは、おまえたちに聞きたいことがある」

「は、はひ…何で…ございまひょ…」

 

 プライドごと根こそぎ闘争心をたたき折られたお陰で実に素直な態度である。

 

「貴様たち外周都市警備部隊が年貢の徴収をしているそうだな」

「ひ、ひぇい…わっひらの仕事の…ひとちゅでごぜえやひゅ」

「ふむ、年貢はどの位の割合なのだ?」

「その年の収穫の6割でひゅ…」

「そのうちのどの位が貴様らの取り分なのだ?」

 

 隊長の目が泳ぐ。

 

「い、嫌で御座ひま…ワシュらは給料で…いただいておりやひゅので」

「貴様ではない、その上の連中じゃ」

「ひ、ひゃっしらには…わかりゃない事…御座いまひゅ」 

「そうか?それなら街に行って領主にでも聞いてみるか?」

「そうですね~、それじゃ一緒に行きましょうか?街に行けばすぐにわかりますからね〜」

 

 カロロが、先ほどの倍の大きさの炎の玉を尻尾の先でクルクルと回し、リクリアが稲妻のボールをもてあそんでいる。

 

「お、お待ちくだひゃ…わっひが言ったほと…秘密にして…やひゅか?」

「まあ、それは村長次第じゃろうな」

 ティグラはチラリと村長の方を見る。

 

「その後の交渉は私が行いますれば…無論、彼らからの情報であるとは申しません。どの道、酋長会議ジャバッタを開きませんとな」

 

 村長がそう言うので安心したように話し始めた。どうやら村長たちもうすうす感付いてはいたようである。

 

「アルサトールの徴収は…4割でひゅ…警備部隊長が…2割を横流しをしているようでひゅ」

「警備部隊長のゾンダレスですか?あの男ならやりそうですな」

「そんな所か、おまえたちもその恩恵に預かっているのか?」

「あっひらの取り…わずかな物でひて…大半は龍神教幹部へのお布施となりやひゅ」

「やはり龍神教は上から末端まで相当に腐っておる様じゃな。ま、村長。我々の関与はここまでじゃ、今後どうするかは自分たちで決めるがよい」

 

「お心のままに」

 村長は深々と頭を下げる。

 

「さてお主らには聖都アルサトールの案内を願おうか?」

「こ、この顔で、でひゅかい?」

「大した顔でもあるまい。女を襲って返り討ちに有ったとでも言っておけ」

「まんまひゃ…ないでひゅか」

「まあ、竜人に生意気を行って、天誅を受けたとでも言っておいたら如何ですか?」

 

 コタロウがニッコリと笑いかけるが、その頭の上ではカロロが爪の上で炎の玉をクルクル回している。意外と頼りになる妹である。

 

  *  *  *

 

「……何というか……カロロ殿に対する評価を変えなくてはならんのう…」

「ガーフィーさんもカロロちゃんの事を、可愛い竜人族だと言う感覚だったのですか?」

「い、いや。あんなにオチャメが似合う娘だとは思わなかった。カルカロスに帰ったらますます人気が出そうじゃな」

「…………………………」

 

 何コイツ、街にはそんなにカロロちゃんのファンがいるのか? 

  

「なんか…ティグラさんも相当に強引ですね…」

「はい、おばあ様はものすごく格好良いです、もちろん、リクリアさんもですが」

 艦橋でOVISの映像を見ていた全員がものすごく渋い顔になる。いかんな〜、あまり子供の教育には良くない。

 

「それにしてもあの格好をすると、行動が医院長寄りになるのはなぜでしょうか?」

「ま、失礼な!私はあんなに過激ではございませんことよ」

 いやいや、アッカータの事はもう忘れたのですか?

 

「それにしても、どうしてあのふたりはあんな格好で出掛けたのじゃ?戦闘向きとは思えんのだが?」

「あまり着たことが無いから人前で着てみたかったんじゃないんですか?」

「戦闘にでもなってみろ、あんな服あっという間に破れてスッポンポンになってしまうぞ」

 

 ガーフィーさんの本当の期待は……いや、心配はそっちの方だったのですか?


「第一あんな服、何処から持ってきたんじゃ?パーティーの時とは違うようじゃが?」

「ああ、それはですね。月面都市から船に戻る前にティグラさんが街に戻って、店の在庫を全部船に運ばせたのですよ。だってみんなにサイズを合わせてある上に、次の客が来る予定なんか無いんですから?店員さんも処分しなくて済むと言って喜んでいましたわよ~」

 

 シリアさんが本をかっぱらっている間に、ティグラさんはそんな事をやっていたらしい。なかなかに兔人族もたくましいものである。

 

「部屋に置いてあった大きな箱はそれでしたか。何だろうと思っていました」

 男性陣はそういったことには興味がないのか、部屋の隅に動かして中も見ていないようだ。今度帰ったら街に着て行こう♡と思うヒロであった。

 

「ほらあ〜、やっぱりいい女は、いい格好で敵地に乗り込まなくてはならないでしょ〜?」

 そういえば鉱山で見せた生足は、なかなか見事な生足でした。医院長も是非、際どいドレスを着て決戦に挑んでください。

 

「メディナもそうおもうのか?」

「あ、あたしはまだ…姉さんほどには…」

 おっきくないと言いたいのかな?いやいや、女性の魅力はそこだけじゃありませんから。エンルーはなんとなく察したのか?自分の胸を見ている。

 

「それよりリクリアさんはOVISから降りていますが、龍神からの侵食の危険性は無いのですか?」

「ああ、それは大丈夫ですよ。外装兵器に神殿のバリアーと同じ性質の装置を組み込んでありますから、探知はされません」

 いつも思うのだが、コイツはいつも抜かりが無いのだが、だいたいどこかに大穴が開いている。

 

「ただ、探知されないだけで脳波通信範囲以上に離れると、H型無機頭脳ハルビムに乗っ取られる危険性は変わりませんけどね〜」

 それも忘れているのではなく、その場になってこちらがアタフタするのを待っているのだから始末が悪い。

 

 よ〜し、今度翼竜が襲ってきたらその前に放り出してやろう。


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