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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第六章 私を月まで連れてって
148/221

翼竜の爆撃

6ー016


――翼竜の爆撃――


 カロロが神殿から戻って来て、コタロウと一緒に出掛けた事はガルガスによって伝えられた。

 

 ヒロ達に報告もせずに出かけてしまったことはいささか意外だったが、カロロが無事だったので少しはしゃいでいたのかもしれない。朝が早かった事もあるだろう。

 ガルガスは一晩中コタロウに付き合ってくれた様である。竜人族はその寿命故に知り合いが傷つくことに敏感である。ましてや妹のカロロである。

 一睡もできない夜を過ごしたのだろう。ガルガスはコタロウの心の支えになってくれたのかもしれない。

 そう思ってガルガスに礼を言うと何故かガルガスは微妙な顔をしていた。

 

「お疲れでしたでしょう、朝食を用意しました」

 今朝はヒロが朝食の用意をした。ガーフィーに作らせると朝から極厚のステーキを出しかねない。ガルガスは肉を食わないしヒロも朝食は軽いもののほうが良い。

ちなみにガーフィーには2キロのステーキを焼いてあげた。

 

 ガルガスにとってランダロールは夢のような設備の整った場所だったようで、理解を超える様々な物に出会い非常に驚いたらしい。

 それでも武装した警備部隊に囲まれても萎縮すること無く反撃できたのは、固定都市ベルファム育ちとは言え、そこから外に出ればそれなりの危険の有る世界であることを示していた。

 先祖から受け継がれた危機対処能力が如何なく発揮されたのであろう。

 

 ガルガス自身は意識せずとも、この世界では危機に対応して動けなければ、生きては行けないのだということを教えてくれる。

 エルメロス大陸でも危機を察知した兎耳族は反射的にジャンプして逃げ出す、それと一緒なのである。

 シリアさんがロージィを躊躇なく魔法で攻撃したのは、銃を向けられたのがこれで2回目だったからだろう。

 

 外部探査の時にも感じたのであるが、なかなかに侮れない種族だということだ。 

 やはり人類がこの世界で生き抜くためには、社会的に守られる存在としてでしか無い。

 人族が科学的優位性を持つためには重工業を興さなくてはならないし、それを興すためには絶対的な人数が足りないのである。

 

 その重工業を発展させる為の人数が増えるまでは、手工業で過ごさなくてはならないが、そこまで人類が生き延びられるかどうかはかなり危ういと思う。

 しかも人間が重工業を興せばそれを見た現地の人間が、その何倍もの規模で重工業の真似を始め更に発展させるだろう。

 

 結局人類がこの世界での優位性を獲得することは殆ど不可能なことなのだ。

 

『警告、大型の飛行物体が当艦を目指して飛行して来ます』

「なんだ?また翼竜が襲って来たのか?」

『目的は不明、OVISを出撃させますか?』

 

 ここは神殿のシールド圏内だから翼竜にこの艦が察知できるとも思えない。しかし目視は出来るだろうし以前にも神殿を攻撃している。

 本艦に対する攻撃を目論んでいるかどうかはわからないし、単に気まぐれに飛んできただけかもしれない。

 

「出撃はしない。仮に翼竜だとしても生態系にダメージを与えたくない」

『了解』

 

「ヒロ、翼竜が飛んできたようだが、また叩き落とすのか?この艦であればそのくらいは造作もない事なのだろう。だがあんな大きな獲物は、ワシらだけでは食いきれんぞ」

 あんたらにとって獲物はいつも食欲の対象でしか無いのか?

 

「いえ、攻撃はしません。あの大きさのものを殺した時の大変さは、わかっていますから」

「しかし炎弾攻撃が出来たはずだ、この艦はそれに耐えられるのか?」

「透明な障壁を作れます。攻撃範囲に入ったところで神殿ぐるみで囲い込みます」

「そんな魔法があるのか?」

 

 もともと戦艦はワープゲートを守るためのものであり、今回の作戦のためにシールド能力は強化されている。神殿程度の大きさであれば造作もない。

 ワープゲート工作船がゲートを作り、それを攻撃能力のないシールド艦が守り、そのシールド艦を戦艦が2重、3重の防御体制で守り、戦艦から発進したOVISが最前線で敵と戦う。

 

 最大威力である惑星破壊兵器が発射されるまで、敵前面にそれを守るための戦艦の壁を作り、そこから発射される砲弾がOVISと言う訳だ。

 だからOVISはただの消耗品でありパイロットも同様である。

 敵からの攻撃は戦艦に集中することになり、それを防ぐためにOVISが、敵の戦艦から発進して来たOVISとの戦闘を行う。

 ヒロはそんな戦争の中で5%の生存率を生き延びてきたのだ。

 

 だいぶ予想とは違う形ではあったが、今ヒロは生き残り人類社会の中では味わえなかった自由を満喫している。

 ランダロールの市民も同様であるといえるだろう。なんとかこの世界で生き延びる術を考えなくてはならない。

 たかが一隻の戦艦で、この世界を征服など出来ないことは、先人たちが身を持って教えてくれている。

 

『翼竜接近、明確にこちらを目標と定めているように思われます』

「シールド展開、神殿を含む山頂部分全体を守れ」

『了解』

 

 神殿周囲の景色がゆらぎ戦艦を中心にシールドが展開されたことがわかる。近寄ってきた翼竜は確かに若い翼竜ヴリトラのようである。

 

「GUAAAAA〜〜〜」

 翼竜は一声吠えると左旋回を行いながら戦艦を目掛けて炎弾フィアを撃ち出してくる。

 しかしシールドに阻まれた炎弾フィアは空中で爆発を起こし、戦艦に届くことはない。

 無論シールド内に有る神殿にも被害はない。

 

「おお、何という事だ。この艦の乗員もこの様な攻撃を受けたというのか?これはたまらんな」

「ひえええ〜〜〜っ、たすけて〜〜っ」

 

『野生の動物は大きな音や爆発音に対して非常に敏感なのものです、彼らがパニックを起こさないよう注意をしてください』

『おまえ、OVISか?』

『戦艦にドッキングしてからパイロットが通信をしてくれないのでインターフェイスが不調かと思いました』

 

『寂しいのはわかるがこんな時に通信をしてくるんじゃない』

『しかし搭乗員の挙動を見ると、非常に怯えているように見えます。許可が有れば発進して翼竜を一発ぶん殴ってきますが?』

 

 確かにガーフィーは椅子にしがみついたまま鬣を逆立てており、ガルガスに至っては怯えて尻尾をお腹の前まで丸めたうえ、壁の隅にうずくまっている。

 

「ふたりとも心配ありません、この程度の攻撃ではこの艦はなんとも有りません。すぐに諦めるでしょう」

「わかっておる、わかってはおるのだが…」

 本能に根ざす恐怖というものはそう簡単には払拭できないものなのだ。

 ひとしきり攻撃を行ったが効果がないと判断したらしく、翼竜ヴリトラは旋回をやめると戦艦から離れていく。

 

「諦めたかな?」

 あからさまにホッとしたような顔をするガーフィー。

 しかし翼竜ヴリトラはゆっくりと旋回を行うと再び戦艦に向かって一直線に向かってくる。

 

『なんだ?今度は何をする気なのか?』

『爆撃コースと思われる飛行コースに入っています』

『爆撃だと!あいつにそんな能力が有るのか?』

『推定、翼竜が爆撃をするとなればいくつかの可能性がありますが…』

 そこまで言われてヒロはカルカロスでの翼竜騒動を思い出した。

  

『あの野郎そんな事をされてたまるか!かまわんあいつを砲撃しろ!』

『注意!より好ましくない状況になると推測』

『同意、先程の発言との矛盾を指摘』

 

 くそっ、OVISと戦艦の両方から否定されてしまった。確かにあいつが何をしようがこの船に傷一つ負わせられることはないだろう。 

 そんな事を考えている間にも翼竜はどんどん接近を続けてくる。

 

『翼竜から分離した物体が本艦に向かって飛来してきます』

『クソーっ、あれを撃ち落とせ!今すぐにだーっ!』

 その言葉と同時に翼竜は戦艦のシールドを掠めて飛び去っていく。

 

『命中!』

 艦の真上のシールド上で何かが弾け飛び、シールド面に沿って茶色の物体が大きく広がった。

 

「AHOOOOO〜〜〜」

 一言叫ぶと翼竜は飛び去っていった。

 

「なんじゃ?あの透明な壁には物がくっつくのか?」

「一応力場だからな、エネルギーで出来た壁だけれど…物体で出来たものと変わることはないさ」

「するとアレはどうなるんじゃ?」

『シールドを解除した途端に本艦の上に降り注ぎます』

「だから撃ち落とせと言ったんだ!」

 

『OVIS、アレを下から支えてどっかに持っていけないか?』

『戦艦の代わりに本機がクソまみれになれと?』 

 何故かこんな時にだけ、ものすごく人間的な反応をするな。

 

『いいじゃないか、そのまま湖かどこかに行って洗ってくれば』

『本館には外壁メンテナンスシステムは搭載されておりません。外壁の汚れは乗員の手作業によって行われる必要が有ります』

 

 畜生、どうしてやろうか?

 

「ど、どうなんじゃろうか?あの見えない壁の外側にクソが付いておるんじゃろ。飛び上がってこの船がぐるっと横倒しになれば落ちるんじゃないのか?」

「やってみましょう、艦載頭脳コンピューター、鑑を500メートルまで上昇、その後鑑を水平回転180度」

『了解』

 

 音もなく戦艦は空中に浮かび上がると周囲から土煙が舞い上がり、鑑をくるむ球体のシールドの表面に取り付く。

 土埃の球体となった戦艦が、シールドぐるみ500メートル程上昇して空中に留まる。

 

「よし、船体回転開始!」

 戦艦はゆっくりと船体を傾け完全に逆さまになる。しかし艦の内部は人工重力のために外を見ると景色が逆さまになっているのが見えるだけである。

 

「なんじゃ?景色が逆さまになったのに、クソも一緒にへばりついて回ってしまって落っこちないではないか?」

『意見具申、シールドは艦の周囲に発生し鑑を中心に展開されていますが、エネルギー体であるがゆえに艦とともに回転することはありません』

 くそっ、先に言えっ!どうも人類宇宙軍の艦載頭脳コンピューターも、乗員に対するサポート姿勢には問題が有るようだ。

 

 なんか戦艦のM型無機頭脳メルビムもかなり個性的な性格なようだが、この星には無機頭脳を狂わすウィルスでも存在しているのか?

 まあ、それはOVISで実証されているが…。

 

『本機のサポートによりパイロットの生存確率上昇という成果を確認』

『お前、もしかして艦載頭脳コンピューターと張り合ってないか?』

『戦艦は乗員の保護に失敗、当機は成功しております』

『そうか?戦艦も1名の乗員の保護には成功していたようだがな』

『…………………………』

 

 やはり、完全に張り合っていたのか。

 

「それで?艦載頭脳コンピューター、どの様な対処が好ましいのか意見を求む」

『意見具申、重力制御の外部展開を行い、シールド付着物を上昇させた後、移動すれば付着物は落下すると考えます』

「なるほどな、そういうやり方もあるな。よし船体復元の上、外部に対して重力制御グラビティを作動、クソを持ち上げろ」

 

 艦の向きを戻して重力制御グラビティを稼働させるとシールドに積もった埃ごとクソが浮かび上がっていく。

 

「よしそのまま鑑を前に移動しろ、クソを一緒に連れて動くなよ」

…『了解』

 一瞬、間があった。コイツ絶対クソごと動く気だったな。

 

 そっと前に出て重力制御グラビティを切ると、ドサドサッとクソが地面に落ちていく。今回はうまくいったようだ。

「おいおい、クソが全部神殿にぶっかかっているぞ」

 

「…………………………」

 こいつ、こうなることがわかっていて言うことを聞いたな。 

 

「…まあ…雨が降れば綺麗になると思いますよ」

「だがすぐに医院長達が帰ってくるぞ、結構臭うのではないのか?」

「…………………………」

 

 なんとなくその後の展開が見えるような気がする。



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