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夜の指名依頼はもうやめて!~淫魔王・羞恥王・愚賢王のマルチジョブ無双~  作者: norikurun~のりくるん~
第2章 エリンとゾアの誕生日プレゼント~出発までの下準備
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親友から贈られた、瞳色の宝石

「ん~、お前、今日の調子はどうなんだよ?」


 一頻り笑いあった後、羊にせっつかれたゾアが不意に話題をかえた。

 エリンとは違って、少しだけタイトなスケジュールで生きているのだ。


「ン? 見てみる?」


 ゾアがエリンの努力を知っているように、エリンもゾアが苦労していることを知っていた。


 例えば、誰からも笑われる『傑作』だが、半分ほどは節制の意識が含まれていたし、明け方近くに何十頭もの羊を率いる仕事も、誰もが好む仕事ではない。

 それでもそのお仕事をする理由は、お金を稼ぐ為だ。

 同い年でここまで頑張っている者をエリンは他に知らなかった。


 そんな倹約家な親友が、安いと言いつつも、わざわざ自分の瞳の色に合わせた宝石を贈ってくれたのだ。心配する気持ちに精一杯、応えたくなった。感謝の気持で剣を振るいたくなった。


 ただ、本来、冒険者は奥の手を見せびらかしたりはしないものだ。

 その道理を曲げてでも、と思うくらいに嬉しかったのだ。


――きっと、一欠片も伝わらないと思うけど。


 全てに明け透けだったら親友なんてやってられない。

 自己満足の延長で十分だった。


 すぐさま元いた場所まで移動し、白い腰掛岩に立てかけた木剣を手に取った。


 そして、腰に木剣を佩く動作から始めて、抜刀した。

 あくまで木剣だ、鞘なんてない。此処ぞという時のルーティーンだ。


 ゾアが視線を向けていることを肩越しに感じつつ、集中を高めて中段の構えに入った。

 腰掛岩に正対する。


 木剣を大きく振り上げ、天を衝く上段の構えで静止。

 チカラを入れすぎない握りのまま、小柄で華奢な身体に気力を滾らせた。


――気構えは……明鏡止水。


「ふッ!」


 一呼吸の間もない静と動の逡巡。

 一切音のない世界であらゆるものが時を刻むことを忘れた刹那。

 いしゆみから放たれた矢の如く、エリンだけが解き放たれ、全てを置き去りにした。


 天高く掲げられた木剣が、落雷のように墜ち、霞のように姿を消した。

 再びその姿を現したのは、大岩をすり抜けた後だった。


 眼の前の腰掛岩は沈黙していた。

 何事もなかったかのように、ただそこに聳えていた。


 だが、そよ風が岩肌を撫でた瞬間にその沈黙が破られた。腰掛岩は、ずずっと擦れ合う音を響かせ、少しずつ重心をずらし、やがて倒れ込んだ。


 轟音と振動が二人を揺らした。


「おお⁉ すげーな、すごすぎてよく見えなかったけど、断面が鏡みたいじゃねぇか! オレと同い年でよくそんな剣技が身につくもんだ! 普通斬れるか? 木刀で岩を?」

「ふふん。そりゃあ物心付く前から毎日素振りしてるから当然だよ。ただでさえ筋肉がつかない身体なんだから、せめて技を磨かないとね」


 自身の何十倍も重い巨岩を、木刀の一振りで両断したのだ。

 期待した通り、感嘆の声は上がった。そこには感無量だった。


「努力家だねぇ~。悲しいかな、腕相撲じゃあ、うちの()()()()()()()()ぐらいなのにな、ははっ」


 なのに、一番気にしている部分を逆撫でされた。

 持ち上げられて叩き落とされたから、気分が一気にささくれ立った。

 

「…………うるさい」

「そう怒んなって……これならすぐだな、高ランク冒険者は」

「まだ、ジェイコブさんに勝ったことないケド……」

「いやいや、どこの誰がギルマスに勝てっつったよ。お前の努力は誰もが認めてる。入団試験なんか軽く、絶対に受かるさ。素人目を侮んじゃねぇぞ。この二つの赤い瞳に誓ってやる」


――ゾアはやはり大人なのかもしれない。ズボラが全てを台無しにしているけど。


 失言こそあるが、こちらの機微を察してすぐさま軌道修正に乗り出してくれた。

 苦労しているだけあるのかもしれないと思った。

 お陰でわだかまりはすぐさま霧散して気安くなれたから、申し訳程度に冗談を添えつつ抱負を語ることにした。


「うん、ありがとう! 落ちたら美味しくいただくよ。今日から三年間で駆け上がってみせるさ」

「おう、先は長いようで短いな。三年後にはSランク冒険者な騎士エリン様だ! おっと、そろそろ羊を戻さなきゃ。ちょっくら行ってくる。そろそろギルドも手隙の時間だぜ。いい報告、期待してるからな」

「ゾアもとっとと独立しなよ、じゃね!」

「ああ、またな!」


 親友からの激励で心に闘志がふつふつと湧いてきた。

 だが、湧き上がってきたものはそれだけじゃなかった。

 青いマーブル模様のターコイズを朝日に透かして、ニヤニヤと笑みをこぼす。


「よし行こう。五柱の女神様、どうかボクを見守っていてください」


 口に馴染んだ言葉は訂正されることもなかった。

 浮足立って、その場を後にするエリンだった。


 ◇


 駆け出したのは、十二歳になったばかりの少年『エリン』。

 瞳の色は、青と緑が入り混じった『ターコイズ』ブルー。

 髪は緩やかな癖っ毛で、今は月色に加えて朝日の輝きを宿している。

 その容貌は、果てしない美しさと愛くるしさを見るもの全てに振りまいていた。

 

 そんなエリンの宝物は、最高の親友ゾアから贈られた瞳と同じ色の宝石『ターコイズ』。

 今しがた手に入れた最初の宝石に宿った想いは――そのうち調べる予定だ。

この度は私の作品を見に来てくださってありがとうございます(o^―^o)

少しお願いなのですが、1回だけでいいので!


↓の★★★★★を押して応援してください!


それだけで、がんばれます! よろしくお願いします!


ちなみにカクヨムの方で先行して公開しております。

良ければそちらにも遊びに来てください(o*。_。)oペコッ

https://kakuyomu.jp/works/16817330648256954539/episodes/16817330648373744485

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