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夜の指名依頼はもうやめて!~淫魔王・羞恥王・愚賢王のマルチジョブ無双~  作者: norikurun~のりくるん~
第2章 エリンとゾアの誕生日プレゼント~出発までの下準備
6/27

特別な誕生日プレゼント

 ◇


 空が青く染まった頃。

 この季節、この時間には決まって『東風』が到来した。


 その春風は、花びらと香り、木々の囁きを運んでくれたが、雪解けの湧水を思わせるほど冷たかった――エリンはその冷たさこそが一番うれしかった。


 味覚以外の全てを満足させる、そんな至れり尽くせりな風を感じた時、エリンは訓練を終える。そして一息ついた後、家路に着く。


 だが『今日』は違った。『今日』は特別な日だったからだ。


 ◇


 朝日が照らす湖面を見つめながら人心地ついたところで、特別な『今日』に思いを馳せた。


 初めに、いつかの母の言葉を思い浮かべた。


『明け方すぐのことだったわ。エリンはね、半日がかりの難産の末に、ようやくこの世に産まれてきたのよ――』


――それは十二年前のちょうど今頃のことだった。


 つまり――


「ボク、いや、オレは『今』から十二歳だ!」

 

 長年、強く、強く、待ち望んできた瞬間だった。

 だが、リラックスしすぎて、ウッカリするところだった。

 だから『今』を逃すまいと大きく叫んだのだ。


 そして、続ける。


――それだけで『今日』は特別だけど、それだけじゃない。


「これでようやく『冒険者』になれる!」


 再び、朝霞の湖畔に子供の甲高い声が響き渡った。


『冒険者登録』の規定年齢が十二歳以上とされていた。

 その資格を得られたことが一番、嬉しかった。


 ただ……努力などせずとも、それだけで叶う宿願でもあった。


 五歳のエリンは『ソレだけじゃつまらない』と思った。

 『どうせなら最高の形でスタートを切りたい』と思った。

 それは、幼心に思い浮かべた『ちいさなこだわり』だった。

 だけど、それをずっと大切にしてきたのだ。


 当然、軋轢があった。

 誰よりも非力で、誰よりも華奢だった。

 だから、並々ならぬ努力が必要だった。


 過酷すぎる毎日を積み重ねて、ようやく周囲から認められたのだ。

 そして、辿り着いた『今日』だった。


 エリンは、長い付き合いの『手のマメ』を見つめた。

 目に見える努力の形だった。

 『今日』のために拵えたモノだった。


 鳶色のズボンとパンツの下にも、切り傷や火傷の跡があった。

 そこの治療だけは固辞してきたから、傷が残った。

 そちらも目に見える努力の形の一つだった。


 なので一応、確認してみた。


(――――ッ‼)


 瞬間、何者かが息を呑んだ。

 エリンの研ぎ澄まされた感覚が――


「――獣かっ⁉ ……いつもの気のせいかな?」


 残念ながら、その正体にはたどり着かなかった。

 いちばん大切な感覚をどこかに落っことしてきていた。

 気付かなかったので、そのまま思い耽る……。

 

 色んな知識と技術を詰め込んできた。

 理想の剣閃に手が届きそうなところまでこれた。

 気力と魔力と聖力も限界以上に増やしてきた。


 冒険者に必要なモノをたくさん備えてきた……つもりだ。

 それらは五歳のエリンが思い描いた最高のスタートに必要なものだった。

 そして、五歳の自分から十二歳の自分に贈られた()()()誕生日プレゼントだった。


――ありがとう。


 だから、エリンは感謝した。


「あとは、冒険者になるだけだ‼」


 三度目は人生で一番大きな声だった。

 どこからともなく拍手が…………聞こえたような気がしたエリンだった。

この度は私の作品を見に来てくださってありがとうございます(o^―^o)

少しお願いなのですが、1回だけでいいので!


↓の★★★★★を押して応援してください!


それだけで、がんばれます! よろしくお願いします!


ちなみにカクヨムの方で先行して公開しております。

良ければそちらにも遊びに来てください(o*。_。)oペコッ

https://kakuyomu.jp/works/16817330648256954539/episodes/16817330648373744485

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