エリンの足腰。崩れ落ちる師匠たち。
◇
自分が幻想的な光景を作り出しているなどとは露も知らず、エリンは肉付きの悪い細腕に力を込め、無我夢中で木剣を振り回していた。
思い描くのは、強大な未だ見ぬ敵。誰に教わったのでもなく、我流だ。
指導してくれる者も、いるにはいるが、たまにしか来てくれなかった。
それ故、ベースはない。ほぼ全てが自己流だ。
全身を連動させ、各部の全力を引き出し、限界以上の速さを生み出すのがエリンの剣術。
この非力さでは、参考となる流派が見つからなかった。
だから、創り上げた。
かつて、師事した者たちがいたが、不意に手が触れた瞬間に膝から崩れ落ちる者ばかりだった。皆、足腰が弱かった。エリンはそう思った。
「なら、その弱点を突けるように、自分はことさら足腰を鍛えよう!」
それが、我流の出発点だった。偶然にも、それが功を奏して形を成した。
また、師が崩れ落ちた翌日には、必ず全ての弟子たちが破門となった……エリンを残して。
結果、街にあったほとんどの道場が潰れた。
どの道場の門を叩いても、同じだった。
だから、早々に門下生の道は諦めた。
たまに覆面の女流剣士が道場を更地に変えたという噂が耳に入ったが……何故か悪寒が襲った。
◇
大地にいくつものひび割れが生じ、小石が宙に浮いた。
エリンの踏み込みは、強く、重かった。
捷勁の起点が足元、すなわち爪先にあり、反動もそこに一点集中するからだ。
この湖畔には、山間から訪れる花嵐が吹き荒ぶ。
あまりにも強い突風が花と砂嵐を運んで来るのだ。その度に、エリンの体がふわりと浮かされた。
エリンの体重は、凄まじく、軽かった。
それにも関わらず、その踏み込みが重圧を纏うのは、ひとえに目にも留まらぬ捷さを生み出す脚力が尋常ではなかったからだ。
そして、電光石火に伴う慣性を、爪先の一点で制している事を意味していた。
腕の力は皆無だが、何故か足腰だけは元から強かった。
それだけが救いだった。だから、踏み込みだけが、強く、重くなった。
そして、今日は入念に、その動作を確認していた。
この後を思うと、この『七年間』の仕上がりに不安は残せなかったからだ。
◇
そうこうするうち、エリンの周りにも色が灯り始めた。
淡いあじさい色の空、朝日を反射する湖、地を埋め尽くす草花の彩り。
五つの時から毎日続けてきた単調な作業に彩りを添え、時には慰めてもくれた。
雄大な自然を見て、せせらぎを聴いて、自身を感じながら過ごした毎日だ。
儚く短いこの光景は、いつしかエリンの原風景となっていた。
エリンは最後の仕上げとばかりに、極限の集中力を以て木剣を振るった。
そして、全てが不知となり、雑念の全てが振り払われた。
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