起床~手足の伸びる運動~(おまたせエロ回)
エリンは寝付きも良かったが、寝起きも一級品……のはずだった。
どれだけ死地に立たされようとも、必ずあの世から引き返し、夜中の訓練前には完全回復状態で甦っていた。一般的にはそれを寝起きと呼ばないが、エリンの認識ではそうだった。
圧倒的な意思がただの一度も『寝坊』を許さなかった。
「うぅ~……んみゅ…………あふぁ~ぁ……」
だが、まだ寝足りないとばかりに、むにゅむにゅ声をだす。
今は目を閉じてから十数分後。
『昼寝』には少々短かったが、起きなければならない不測の事態が発生していたからこうして目覚めようとしていた。だが、微睡みから抜け出せない状態が続いていた。
「ふみゅ~……」
ジェイコブとの死闘で、疲労骨折や筋断裂などのダメージが残っていた。
流石に十分程度では治すには短く、せめてあと一時間は欲しいと体は言っているのだ。
それに、『冒険者の登録が保留中』という意識が心に強く根を張っていた。
それが脳のリフレッシュを許さなかったから微睡みに拍車をかけた。
「ふぉあわああ……」
ちなみに、事前にセットしてあった目覚まし――母ルティアの接近はまだない。
その足音さえ聞こえれば、鈍い危機感がたちまち早鐘を打ち鳴らし、身体が飛び起きるはずだった。条件反射は鍛えてあった――命の危険は母ルティアの足音から始まるのだ。
その異常事態は母ルティア由来のものでは無かった。
それはエリンが眠りについた頃にたまたま、エリンの直ぐ側まで来ていた。
そして、思わずベッドの中に潜り込んでしまった。
「ふみゅ~……ん?」
ここでようやく、意識のほうが違和感に気付き始めた。
切っ掛けは、左手だった。
完全覚醒にはまだ遠かったが、体の方はもう動き始めており、しばらく前からモゾモゾと伸びたり縮んだりを繰り返していた。そして、当たったのだ。左手に何かが。
いや、触れたかどうかも怪しかった。
なので、とりあえず、それがあったかもしれない所に手を伸ばしてみる。
――さわっ。
「ぁっん⁉」
ベッドの中だった。そこに何かがあった。
布越しに触れただけだが、弾力が凄まじい。
なので、とりあえず――もう一触り。
――さわっ。
「ぁっん‼」
あまりの心地よさだった。
手を止めることが難しくなった。
――むにゅ、もみもみもみ。
「……ぅっんっ……はぁんっくっぁっんんっ‼」
エリンは、まだ寝ぼけていた。
耳に何者かの荒い息遣いも聞こえていた。
だが、思考は続けるものの、まとまらない。
――もみ。もみもみもみ。もみもみもみもみもみ。
「……ぅっんっんっ……はぁんっはぁっんんっ‼」
(……まるで……。え~と……?)
何も心当たりは無かった。
その間も手に何かが当たり続けていた。
と言うか揉みしだき続けてきた。
(やけに感触がいいね。こんな枕つかってたかな?)
だんだん思考がまとまり、惜しい所まで来ていた。
その間も、その手は止まらない。
いや、声に合わせてリズミカルに抑揚をつけてみた。
反応があるから少し楽しくなってきていた
――もみっ。もみっもみっもみ~ん。もみっもみもみもみっもみ。
「んぁっ……ぁふっアンっぁあぁあっああっんあ~っんあっんっんっあぁっ」
(喋る……枕? いや違う! 枕はしゃべらない!)
意識がようやく覚醒し結論まで後少し。
だが、弄る手は急には止まれない。
おそらく最後、とばかりにラストスパートで攻めてみた。
――もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみっもっもみもみ。
「んっあっあっあっだっあっめっこわっれっぁあんぅンッだっンッぁあっあっぁアアあああッ」
エリンの手は凄まじかった、まさに一撃必殺の奥の手だ。
日々、鍛錬に明け暮れ、鍛えに鍛え続けた……女道場主でさえ一刀……一触で陥落せしめるほどだ。
それをあろうことか……。
その声の主は、エリンの手の届く距離で人知れず佳境を迎えていたが、やがて。
「も……もう…………だぁっめ…ふ、ぅう……………」
ベッドに潜り込んだ何者かは、最後にそんな掠れ声を出し動かなくなった。
少し心配になったエリンは、そっともう一度……
――さわっ。
「ぁっん⁉」
どうやら大丈夫なようだった。
少し気の毒……申し訳なくなったエリンは、ブランケットを捲ろうとは思わなかった。
初めて聞く熱く甲高い声と掠れ声だったが、ベースになっているのはよく聞いた声だったからだ。
親友ゾアとは一緒に野山を駆け、悪戯し合い、時には泣かし、泣かされ、笑いあった兄弟同然の関係だったが、彼女にはオママゴトと称した恋人ごっこなどによく付き合わされたものだ。
ベッドに潜り込んでいたのは、親友ゾアの四つ下の妹ミルハだ。
同じく、兄妹同然の間柄だ。
そんな彼女の姿は、ブランケットに隠されていた。
ついつい、夢中でリアクションを楽しんだため、興奮状態にあったが、正体がわかって冷静になった。
(……しまった、やりすぎた!)
エリンは後々のことが頭を掠め、戦々恐々としてしまうのだった。
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