未明の美少年
湖だけが月鏡となって、やんわりと湖畔を照らしていた。
春を迎えたばかりの季節だ。
他の季節よりも夜明けが早いとは言え、今はまだ紫紺に染まっていた。
いつもなら夜釣りを楽しむご隠居たちの声も聞こえてこない。
今日は特に寒いから、出控えているようだった。
そんな静寂の月夜から、小柄で華奢な絶世の美少年・エリンの『今日』は始まった。
◇
もうまもなく十二歳になる少年『エリン』は、両の細腕で必死に木剣を振るっていた。
「フッフッフッフッフッフッフッフッフッフ!」
湖畔の『腰掛岩』の前で、毎夜、夜が明けるまで、鍛錬に明け暮れていた。
「ふぅうう~つかれたぁ~、ちょっと休憩しよっ」
……たまには休憩する時もあった。
そんなエリンが身体を預けているのは『腰掛岩』と呼ばれる白い大岩だった。
人によっては『腰振岩』と呼び、エリンがここを占拠するまでは……。
「なんで『腰掛岩』なんて言うんだろうね?」
エリンよりも少し大きな威容ゆえに、誰のためのベンチなのかは全くもって不明だった。
だが、月夜には月明かりを受け止め、月のない夜も、何故か桃色の光を放ち、周囲を照らしてくれていた。
「ボクだったら『灯台岩』か『ランプ岩』にしたのに、昔の人の考えることはよくわかんないね」
ランプ要らずで非常に便利な大岩だったが、シルエットがぼんやりと浮かぶ程度の明るさなので、エリンのネーミングでは少々名前負けだ。
実際、訓練には不向きな光量だった。
「一息ついたし、休憩終わりっと! 人が来る前に仕上げよっと!」
そう、エリンは人目を忍ぶ必要があった。
明け方にも早い時間だ、出歩く人などほとんどいない。
だからエリンはこの場所で訓練していた。
だが、来客が無くもないのだ。
彼等は決まってエリンの前でその日の『釣果』を投げ捨てていった。
まるで何かの儀式のように。
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