~お昼休憩:本戦~ 2
――ギィイイ、パタパタパタ……。
エリンの家は、大きい赤い屋根だ。何も、父が資産家というわけではない。
父は一般的な農夫をしており、兄もその仕事を手伝いながら、次の家長として自立しようと日々勉強に励んでいた。
この家は、母ルティアの嫁入りの際に持参した嫁入り道具の一つだった。古いアイテムらしく、あちこちガタが来ているようだが、エリンが産まれてからは一層その崩壊度が加速していた。修繕や大規模改修を何度も行っているが、とくにこの扉は立て付けが悪く、開閉時には必ずこのような音がなるのだ。
「おや、帰ってたのか。え~と……いや、何も言うまい」
「あ、父さん。おかえりなさい」
エリンと母ルティアに声をかけてきたのは、父ベルグリンドだ。名前は大層勇ましいが、大変思慮深く、穏やかな性格の四十路男だ。
母ルティアとは年が十歳程度離れているが、その馴れ初めについて、エリンも兄も聞かされたことがなかった。尋ねるとかなり険しい顔付きとなり、手にしていた物を足元に落としていたので、話すのにも聞かされるのにも覚悟がいるようだった。なので、二人はまだ聞けていない。
「あら、貴方おかえりなさい。それに、グルーノも。お腹すいたでしょ? 直ぐ用意するから掛けて待ってて」
「……エリン、どうだった? 受かったか?」
優しく心配と期待に満ちた声をかけてくれるのは、エリンの三つ年上で十五歳の兄グルーノだ。父親譲りの思慮深さがあり、いつもエリンを気にかけていた。昨日も仕事が手につかないほどに、心配してくれていたようで、父ベルグリンドはその様子を語る時、ヤレヤレという表情をしつつも、どこか嬉し気だとエリンは感じていた。
「あ、兄さん。おかえり。……ちょっと目が霞んで、今何も見えないんだ」
先程の根菜もどきは余程滋養が高すぎるようだった。エリンは前後不覚に近い状態ながらも、日々培ってきた毒物耐性がきちんと機能していることを証明していた。即死だけは回避できていたのだ。十分だった。
「あちゃ~、そうだったな。今日がギルド試験だったな……。すまん、俺が抑えておくべきだったのに……」
父ベルグリンドは色々なことに手を出している為、細かい部分が抜け落ちることが多々あった。「基本的にはそこが可愛い」と母ルティアが惚気けていたことを思い出したエリンだが、せっかく家族が揃ったのだ。取り急ぎ、今日あったことを報告したくなった。
「気にしないで、父さん。ジェイコブさんは評定については何も言ってなかったな。けど、実力については太鼓判を押してくれた。それにやっぱり母さんのこと良く理解してた。さすが元パーティーメンバーだね、母さんの調理方法が間違ってることもちゃんとよく知ってたし、続きは明日でいいって……僕の方が見通しが甘かったくらいだよ」
午前中だけで色々あったため、エリンには話したいことがたくさんあった。
「……ああ、明日は、グルーノと二人がかりだ。心配はいらない」
「エリン、すまないな。長男なのに頼りにならない兄で。お前にばっかり苦労させて……」
そして、何故か自責の念に駆られた父ベルグリンドと兄グルーノが瞳を潤ませながらエリンの苦労を偲びだした。思慮深いことは良いことだが、今この時に提案することでもないと思ったエリンだったが、正直この申し出は受けるべきと判断した。
「父さん、午前中からそのまま夕方まで戻らないつもりなんだけど……任せていいのかな? 兄さん、何を言ってるの。僕が頼れるのは兄さんだけだよ。……いつも、薬草栽培頑張ってくれてるじゃない。……特に、今日のはすごく強めだから、早めに解析と調剤、お願いしてもいいかな……?」
「「ああ、任せろ‼」」
やる気に満ちた了承の声は二人の掛け声のようだった。
エリンの目には、漆黒のカーテンがかかっていたが、二人の覚悟に満ちた表情は、ハッキリと心の中に思い描けていた。
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