ギルド試験開始~闘技場にて~
数分ほどジェイコブに担がれ移動した。
片田舎のギルドとは思えないほどに広い建物に唖然としつつ「土地が安いから広いのかな」などと益体もない考えを浮かべていた。
さらにそこから数分掛けて、ギルド裏手の広い闘技場へと到着した。
そして、丁寧に地面へと降ろされた。
「さて、坊主の相手をしたのはいつぶりだったかな?」
エリンを見つめながら、バキバキと指を鳴らしつつ、戯れに問いかけるジェイコブ。
「半年と十日ぶりです。前は、逆袈裟の形で後の先を狙ったところを合わされて、木刀を叩き折られました。もう二度と同じ手は喰いませんので、今日は別の手でお願いします」
エリンの真骨頂は記憶力にあった。前世の記憶など、とっとと忘れるくせに、こと冒険者関連の物事は全てに優先されて、決して忘れなかった。
湖畔での訓練で過去の対戦や書物にあった戦術、闘法を組み立てたり、母ルティアのギルドカードを介して視聴した動画などを思い起こし、何度も何度も反芻しながら木剣を振るってきたのだ。言わずもがな対策は完璧だった。
ちなみに、一般のギルドカードにはそんな付加価値はついていない。高ランクの冒険者にのみオプションで提供されるサービスがいくつかあるのだ。動画視聴はその一つである。
エリンはそこまで機能を熟知しているわけではないが、位置検索サービスや通話などもできるそうだ……母ルティアへの対策は、今からでも準備に取り掛かる必要がありそうな案件だった。
「真面目過ぎる回答をありがとう……試すか?」
「その先があるのなら、ぜひ」
エリンの小生意気な発言の数々だが、ジェイコブは心を波立たせることも、気を緩めることすらもない様子だ。小賢しい子供を一捻り、というわけにはいかないことを過去の対戦から教訓として得ていたのだ。
「よし、そのへんの木剣で……一番軽くて頑丈そうなの選んで持って来い」
「――――よろしくお願いします」
エリンには、ジェイコブが心に冷や汗をかいていることを察する余裕が無かった。
過去に数十回は対戦していたのだが、そのいずれにも大怪我を伴う大敗を喫していたからだ。
それに――
「そもそも俺相手に後の先を狙おうってのがもう一端以上だってのに……って、もう聞こえてねぇか……そいじゃやるぞっ!」
エリンは、前回の試合で後の先を狙った。だが、逆に合わされた。
この細腕だ。受け太刀などしようものなら途端に腕と指の骨が粉砕される。
前回負けた時の、痛みと屈辱が脳裏を過っていた。
同時に、その時の恐怖が甦ってきていた。
(だけど、これまで今日に焦点を当ててきた。だから、絶対に勝つ!)
エリンは今日こそジェイコブに勝ちたかったのだ。初勝利を収めたかった。
だから、痛みの恐怖を飲み込む。
逆にそれを栄養にとして、起爆剤にして、心を奮い立たせた。
ここにきて一番の、鼓動の高鳴りだった。だが――。
あまりの集中力に、聴覚が閉ざれていく。
心音すらが消え始める。
そして、不要な情報として視野の色彩すらも失われていった。
極限を超えた集中力で、目の前の大男の一挙手一投足に没頭し始めたのだ。
エリンは非力な細腕で、倍では済まない巨漢を相手取ろうとしていた。
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