02 : パーティはじめました
なんかくどくなってしまいました、すみません。
『エルフ』がいた。
輝く様なブロンドの長い髪、透き通るような白い肌に宝石のようにキラキラした蒼い瞳。
作り物かと思うような尖った耳、いかにも身動きのしやすそうな緑色の衣装を纏い『神々しさ』すら感じさせる。
だがしかし。
一つの違和感があった。
なんと言うべきだろうか。と、僕は思ったことをついつい口に出してしまった。
「ちっさ!ロリっ子エル…」
『ドガッ!!』と、全てを言い切る前に彼女から思いっきり腹を蹴り飛ばされ、僕は地面に這いつくばってしまった。そりゃあ仕方ない、自分が悪いんだから。
蹴って来た相手であるエルフの女の子を見ると、慌てふためいてオロオロしていた。
「あーっ!またやっちゃった、、、本当にごめんなさい。小さいって言われると我を忘れて頭に血が上っちゃうのよ…。ケガしてない?大丈夫??」
若干泣きそうな瞳を潤わせて謝ってきた。
「大丈夫大丈夫、ちょっと驚いただけだから。ホント気にしないで?」
エルフの女の子は静かにコクリと頷き、泣かないように頑張っていた。
また変な事を言って蹴られるのは勘弁だから言葉選びを慎重に返事をした。すると、彼女が本題に入ってきた。
「実はね…、貴方を呼び止めたのには理由があるの。てゆうか、ちょっと頼みたいことがあったからなの。貴方、魔眼持ちよね?そのチカラを使って…私に協力して貰えないかしら?」
魔眼?チョトナニイッテルカワカンナイ…
そんな能力、僕にはないぞ?人違いじゃかいのかな?
「あのぉ…大変申し訳にくいんですけど…、人違いされてるんじゃないのかな?魔眼なんて初めて聞いたし、そんなの持ってないよ?」
と言うと、エルフの女の子はゴソゴソとカバンを漁り始め手鏡を出し、僕を写しだした。
「ほら、見てみなさいよ?それが何よりの証拠よ?」
ドヤ顔で自信たっぷりの態度で宣言されたが、僕は仕方なく鏡をみることに。
「えええええっ!?目がァ目がァァ!なんじゃこりゃァァ!?右目の色が宝石みたいなんだけど!?」
確か、スマホの画面で自分の顔を確認した時は問題なかったハズ…
ん?画面が暗かったから瞳の色までは認識できなかったのか?
だからガゼルさんも『ちょっと変わってる』なんて言ってたのか。もしかしたらまだ色々隠れたモノがあるかもしれないな。落ち着いたらみてみよう。
「ごめん、こんなの着いてるなんて知らなかったんだよ。魔眼なのかも分からないし使い方?とかもサッパリだからチカラになれないよ。それに戦闘経験とか殆どないド素人だもん。」
と言うと、彼女はしょんぼりしてしまった。居た堪れない感じになったので、すかさずフォローを入れてみる。
「なんで、魔眼のチカラが必要なの?もし良かったら聞かせてくれるかな?」
理由によっては手助けできるかも知れないと思い、コチラの質問をぶつけてみる。
「私の姿、貴方にはどう見える?ハッキリ言ってくれて構わないわ。」
と言われたので、遠慮なく答える。
「ちっちゃい…ロ…、女の子?にみえるよ。」
一瞬空気が凍りついたが、そのまま彼女は話しを続けた。
「実はね?以前、ダンジョンを探索してる時に呪いを掛けられてしまったみたいなのよ。しかも、突然ね?
見た目は小さくなるし、魔法や剣術とか色々使えなくなっちゃったのよ。呪いを掛けてきた相手も理由も分からないから困ってるって訳。それで不確かな情報なんだけど、色々調べたら解呪の方法は魔眼の持ち主にしか見つけだせないって。」
何か恨まれるような事でもしたのだろうか?それにしてもちょっと可哀想だ。
「だから僕に声をかけてきたのか。」
目を閉じほんの少しだけ考え、答えを捻り出すことにした。
「じゃあ、こういうのはどう?僕は知らない事ばかりだから色々と教えてもらいたい。その代わりに魔眼のチカラが発動するようになったら真っ先に解呪の方法を見つけに行くってのは。」
ギブアンドテイク。これでダメなら諦めて貰うとしよう。
「わかったわ!それでいいわ?じゃあパーティ結成という事でよろしくね?」
さっきまでしょんぼりしていた姿はもう既に無かった。満面の笑みを浮かべ僕に自己紹介をしてきた。
「私、エルフのサリア。一応冒険者。ホントはもっと背が高くてスタイルもいいんだからね?」
何故か念を押された。余程小さいということが嫌なのだろうか。僕にはそれほど小さいとは思えないけどコンプレックスなのだろうか?
見た感じの年齢は妹の夏那と同じくらいで、身長は小さめの140cm無いくらいと言ったところ。そのほか諸々のサイズも小さめではあるが。
「僕はハルト。この国に来たばかりの見習い冒険者ってところかな?この後、雑貨屋さんで色々買おうと思ってるから、お勧めのアイテムとかあれば教えてほくれると有難いな。」
見習い冒険者と聞いてサリアは目をぱちくりとさせていた。
「えっ??さっき役場で金塊換金してなかった!?あの金塊どこで手に入れたのよ??てっきりベテラン冒険者かと思ったわ。戦闘経験ないって謙遜してるのかと思ったらホントに武器一つないのね?ハァ…。見込み違いだったかしら。まぁいいわ、旅は道連れって言うしね。さっさと雑貨屋に買い出しに行くわよ!」
完全に主導権を握られてしまったようだ。気が変わってパーティ解散って事も言い出されそうなので、そうなる前に必要な物事を教わっておこう。それにしても、さっきのやり取り見られてたとは。今度から色々気をつけないとな。
気を取り直して、雑貨屋に向かい冒険の準備を進めることにした。
「キャロルさん、約束通り戻ってきましたー!」
雑貨屋に戻り声をかけた。
「おや、ハルト。いらっしゃい。なんだい早速女の子なんか連れて来ちゃってアンタも隅に置けないね?」
目敏くツッコミが入るが、あくまでもパーティメンバーだ。さらりと流すように冷静に切り替えす事にした。
「さっき色々あってパーティを組むことになったんで、色々必要な物のアドバイスを貰おうと思ってるんですよ。彼女はエルフのサリアです。」
「サリアです。よろしくお願いしますね!早速だけどこのお店の武器や防具ってどんなのがあるの?見せて貰えないかしら?」
キャロルさんは様々な武器や防具などを僕達に提示してきた。お店自体そんなに大きな規模じゃないのに何処から持ってきたんだろうって言う物量だ。
「ハルト、あんた得意な武器とか使ってみたいのはあるのかい?ここに来るまでに魔物とはどうやって戦ったんだい?」
「うーん、最初は踏みつけてスライムを倒しましたよ。あとは木の枝と魔法で。武器はオススメのがあればそれを使ってみようかなと思ってます。」
正直に答えたら二人に唖然とされてしまった。
「スライムを踏みつけて?木の枝で?弱い魔物だけど虫を潰すような感覚で倒してないかい?呆れたねぇ…。
スライムは魔物の中でも弱い部類だけどそんな簡単じゃないと思うんだけどね。それじゃ、ひとまず使い易いショートソードなんかをオススメしとこうかね。」
勧められるがままに用意してもらう。金額の相場などは分からないのでサリアに交渉して貰い、装備一式やその他のアイテムも色々と揃えた。
「ハルト、私はこの弓と矢でいいから一緒に買っておいてね?前はロングソードとかレイピアとかも使えたのになぁ。」
あれ?サリアの分も僕が支払うのか…?仲介手数料って事で文句を言わずに支払いを済ませた。トホホ…
「ところでアンタ達、しばらくこの村に居るのかい?もし、ギルドの依頼受けるなら拠点が必要だろ?すぐ側に宿屋があるからそこに行くといいよ?値段も手頃だし料理も美味しいからね!」
面倒見がよいのか、色々良くして貰ったのでオススメの宿屋に行くことにした。
店を出てすぐの曲がり角にその宿屋はあった。
宿屋には雑貨屋とは異なり、屋号が掲げられていた。
『黒角亭』
こう読める。この国の言語で正確に表すと違うのだろうけど翻訳スキルによるとこう解釈されている。
村の宿屋としてはかなり落ち着いた佇まいだ。
「いらっしゃい、ようこそ黒角亭へ。お二人さんかしら?丁度、良い部屋が空いてるから泊まっていきなよ。」
と、活気のあるお姉さんに声を掛けられる。ちょっと待たれい。エルフのサリアさんと同室は色々とマズイ。
「イヤイヤ、部屋は二部屋でお願いします!別々で!!」
「ごめんね?今、一部屋しか空いてないのよ。大丈夫だったらそこの宿帳に名前を記帳しといてね?」
ものすごく強調してみたのだが、無理だった。空きがでたらもう一部屋借りるしかないと諦める事にした。
サリアを見ると、このやり取りに全く動じていなかった。冒険者同士での同室に慣れているからなのだろうか。
「私はクリスティ、この宿の女将をやってるわ。それじゃ、部屋に案内するからさ、落ち着いたら食事しに降りてくるといいわ?」
と、2階の角部屋に案内された。
部屋は簡素な作りで広くはないのだがかなり小綺麗だ。テーブルに椅子が二脚、ベッドが二つ並んでいる。窓からの換気もしっかりしていて快適な空間である。
どうやら、風呂やトイレなどは無さそうだ。衛生面が気になるが、そもそもこの世界に風呂やトイレなどはあるのだろうか?
「ねぇ…ハルト。」
先程まで静かだったサリアが口を開いた。
「どうしたのサリア?」
と声を掛けると彼女は顔を真っ赤にしていた。
「おっ、男の子と一緒の部屋に泊まるとか…私…まさかこんな展開になるなんて思いもしなかったわ。。。」
さっきまで動じてなかったのはただの強がりだった様だ。
そりゃそうだよね。初めて出会った日にいきなり同じ部屋で寝泊まりなんて。どんなラブコメ展開だよってなる。冷静に対応してた僕はタガが外れて動揺してきた。
「ベッドを離したり、敷居を作ろう!そうしたら少しは気が紛れるかもしれない。僕だって緊張、あれ?動揺して?るんだから!!」
動揺して上手く話せなくなっているヘタレな僕がそこにはいた。何かをして気を紛らわそうとアイテム整理や敷居を作ったりしていると、あっという間に時間が経過していた。
「よしっ。お腹も空いてきた事だし、ご飯食べてそのあとゆっくりしようよ!」
そういえば、この世界に来てから食事というマトモな飯を食べていなかった。アイテムの食料をこの村に来る前に食べたくらいなので充分に腹が減っていた。
気まずい雰囲気になる前に階下の食堂に二人は向かうことにした。
「やっと降りてきたね?お二人さん。そこ一角を使ってちょうだい。今日のメニューはシェフのおまかせ料理になってるからちょっと待っててね!」
クリスティさんは忙しなくホールを動きながら案内してくれた。
食堂は冒険者で溢れていた。人種も様々で、亜人とでも言うのだろうか?獣の耳が生えてる男女や、魔族のように顔の色が青い人もいる。
辺りを見渡すと、第一村人のガゼルさんとキャロルさんが食事をしてるのが見えた。
彼らは僕達に気付き、声をかけてきた。
「よぉ、ハルト。ようこそ黒角亭へ!ゆっくりしてってくれよな!」
え?どういう事だろうか?とその言葉に僕はキョトンとしている。
「あぁ、この宿と雑貨屋は俺の店なんだよ!以後よろしくなっ!ちなみにクリスティは俺の娘だ。ガハハッ。」
「そういう事だったんですか!全く気づきませんでしたよ。」
最初から仕組まれていたようだったので悔しかったが、品揃えも良い店、居心地の悪くない宿だから紹介してくれた事に感謝しておこう。今後、色々融通効きそうだしね。
「はいっ、お待ちどうさま!出来たてだから火傷しないように気をつけて食べてね?お口に合うといいんだけどね!」
何とも豪快な料理がでてきた。ボリューム満点の炭火で焼いたであろう鹿の骨付き肉と、野菜と肉などの具材がゴロゴロと入ったシチューの二品でとても美味そうだ。
「う、うまっっ!ホント美味しいですっ!こんなに美味しいお肉は初めて食べましたよ。」
鹿肉自体食べたことがなかった。もっと野性味あって臭みなどあるのかと思ったが、旨みがありジューシーで柔らかい。
シチューもじっくり煮込んであるのか、野菜と肉の旨みが溶け込んでいて後を引く美味さだ。あぁ、コメくいてぇ〜っ。
サリアも満足そうに頬張りながら満面の笑みをうかべている。
じっくりと料理を堪能し、しばらく食堂に居る面々との会話を楽しんだが、夜も更けてきたので部屋に戻る事にしようと席を立つと、ガゼルさんからアドバイスを受けた。
「そうだ。もし明日、ギルドの依頼を受けるようなら森の奥の沼地にはなるべく行かないようにしときな?ウワサ程度なんだが、めっぽう強い金色の毛を纏った狼が居るみたいだ。冒険者達が軒並みやられてるらしいんでな。じゃ、おやすみ!」
「わかりました、気をつけます。おやすみなさい。」
と挨拶を交わして部屋に戻る。
戻って一息つくとメニューのアイコンが点滅しだした。
確認すると、アイテム欄のスマートフォンのコマンドが光っていたのでスマホを取り出すと、ショートメッセージのアプリアイコンに『!』マークがついている。
そして、そこにはこう記されていた。
『討伐クエスト:レベルアップの時間となりました。』




