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伝染

作者: 藤野

 殺しちゃ意味ないんだよね。特に、即死じゃ。皆殺しもダメだよ。伝わらないから……。

 やっぱ死んでるなりに、お化けにも生命力ってあるのかな? 

 だってね、そういうのが無いと今の時代生き残っていけないでしょ。心霊スポットとかに肝試しで行った人達が祟られて……とかあるけど、その場で全員即死、見た人達も即死じゃ存在は広まらない。広まらせる為には影響を弱くして当事者に語らせるか、影響力はそのままに猶予を与えるか。これは数日経ったら死ぬパターンね。

 それとも、某テレビから出てくる幽霊みたいに、特定の行動をすることで被害者に影響が及ばないようにするか。あとこれは神様系にありがちだと思うんだけど、村とか家から生贄をもらう間は何もしなかったり。

 多少は作り手側の事情もあるとは思う。でも幽霊側の事情もあるんじゃないかな?

 自分の存在が語り継がれないと、自分が幽霊として存在していることが忘れ去られてしまう。私ね、それこそが幽霊の死だと思うの。元から死んでるけどね。だから皆、語り継がせようとする。人へ人へと広がって……。ウイルスみたいじゃない?

 でも怪談話で、その幽霊が噂によって全世界まで広がって、パニックを引き起こす……みたいのは、中々ないじゃん? 例えば……ある場所で自殺した生徒の霊。そこに行った人は、毎晩女の子の声を聞くようになる。その後行った人は死ぬんだけど、他の人に話すことで自分は声を聞くだけにとどめられるとしたら……。皆話すと思う。で、話された人は行ってないにも関わらず同じリスクを背負ってしまうの。だから広めざるを得ない。そしたらどんどん広がる。ある学校から始まって、その街、県、日本、世界にまで……って、ウイルスはなるけど、怪談はならないよね。

 怪談はね、ウイルスと違って大元を断ち切れば無くなるから。今の例えだと、大抵どっかで霊能者が現れて食い止める。早ければ学校の親戚のあたりでね。でも、それって、面白くなくない?

 だからさ……私最近あることをやってるの。

 出来るだけ惨いやり方で人を殺して、その血を取っておく。それを何人も何人も続けてくわけ。もちろんやり方はそれぞれ違う。色んな歴史上の犯罪を参考にしてるとはいえ、被らないように殺すのも大変だよ。しかも、毎回別の場所でやるからね。逮捕されないように工夫するのもうんざり。

 私が何を企んでるか?

 それはね、私がその人を殺した後、その人の霊が現れるのを待ってるんだよ。現れたらその時採取した血を蚊に飲ませて、養殖する。それを全世界に放つって計画。

 でも残念ながら、今のところそこで幽霊が出たなんて話は聞いてない。意外と幽霊になる人って少ないんだね。見るのに素質がいるように、なるのにも素質がいるのかな? それとも、幽霊自体が見える人の虚言か……。

 現世にとどまりたいと強く思わせること。それこそが幽霊の作り方なんだと思う。どうしてこんなこと話してるか分かった?

 そんな理由で殺されるなんて。そう思うでしょ。そしたらあなたは幽霊になるかもしれない。少なくとも、私がただのサイコパスだとか思いながら死ぬよりはずっと。世界中に怪異を伝染させたいの。私の力で。

 でもこれにはね、大元となる……被害者の幽霊が除霊されても、蚊に運ばれた怪異が怪現象を起こせるかが問題。更に、運ばれることでどんどん薄まっていかないかも気になる。いーっぱい実験をしなきゃいけないの。その為には沢山の幽霊がいる。幽霊の実体は殺した本人じゃないと手に入らないでしょ。

 だから、私の為に幽霊になってよ。

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