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お孫さま、次の国へ発つ

区切りがいいところまではと思ったので、短いですがふたつめです。

 ブイヨンとフォン、扱いやすさから牛、鶏、魚、野菜で頼んでいた。これで洋風出汁が数種揃った。それぞれ大きな寸胴鍋一杯分ずつ、デミグラスソースも寸胴鍋半分くらいの量で仕込んでもらった。費用については第二口座から。金額は聞いていないが経理担当と信吉が交渉していたので任せた。正直、現状第二口座にいくら入っているのかよくわかっていない。灰まだらの報酬までは把握していたがルフの報酬が入って、勘定するのが怖くなった。信吉に相談すると、その辺りは店の番頭クラスに言えば都度見てくれるとのことだ。いつでもすぐ引き出せてしまう口座にたくさん入っているのは落ち着かない、寧ろ残高を忘れている方が精神的には平和だろうか。

「若旦那が散財なさるのは食材くらいでしょう? 武器や防具も買わないし派手な遊びもなさらない。今後大きな出費が予想されるのは恐らく馬車でしょう。なら、いちいち細かくお気になさらずとも残高不足には絶対になりませんから」

 アルフにも言われたが、やはり自分は金の使い方がおかしいらしい。

「派手な遊びって、例えば?」

「よしてくださいな、それをご存知ない若旦那に手前が教えたとなれば、いったいどんなお咎めを受けるやら」

 重郎や信次からのお叱りを想像したのか、信吉は身震いする。

「あちらでだったら、……一言で表すなら飲む打つ買う、かな」

 信吉の顔が強張った。こちらでも大差ないようだ。

「お酒はそれなりに好きだけれど過ぎればよくないものだし。賭け事はしないし」

 どんなギャンブルがこちらにあるかわからないが、する気はない。

「あ、勿論、買うは論外だよ」

 信吉の顔がふにゃりと緩んだ。身体全体の力が抜けたように肩まで堕ちている。

「はー……よかったぁ……」

「まあ、お芝居では女性を侍らせて金貨を撒いて群がるのを眺めるってのもあったけれどあれも趣味じゃないねぇ」

 どんな役だったんだと信吉は目を剥いていたがもっと嫌味な役だって演じたが、黙っておく。あまりあちらでの自分を話すのはよくないだろう。

「それにお酒を飲むにしても今は酔えないから味わうだけなんだ」

「え、酔えない?」

「うん。たぶん、お酒も軽い毒だと認識されているんじゃないかな、だから影響がなくてね……そこだけ少し寂しいかな」

 だが酒で失敗することがないのでその点だけを考えればいいのかもしれない。

「泥酔まではしたくないけれど、気分よくほろ酔いくらい楽しみたいねぇ」

 部屋で、お茶をいただきながら忘れ物がないか確認している。添えられた菓子はチョコレートだ。ノワゼットだと出された、ヘーゼルナッツにチョコレートを掛け固め、適当な大きさに割ったものだ。手軽に摘まめて食べ応えもある。実は甘味も好きな方なので、こうしたおやつも旅の食料に少しはあってもいいかもしれない。

 この時の発言が切っ掛けはわからないが、賜ったあの酒、ネクタルでなら程良くほろ酔いになれることにかなりあとになって気付くのだが今はまだ先の話だ。







 チョコレート数種をセルジュに用立ててもらい、出発の支度は調った。

 旅の再開だ。






「立派なのを作ってもらったねぇ、青藍」

 旅装束で牧場へ向かうと青藍もしっかり支度が済んでいた。ルフの風切り羽根を使った馬鎧。揚羽紋の鞍敷きの上から装着されたそれは、ハイグランドエクウスの疾走にも耐えるだろう。

「必ずや、サントル殿へのお伺いを。重ねてお願い申し上げます」

「宿との契約が済んだ時点でセルジュさんにはうちで待ってていただきますんで」

 見送りはセルジュと信吉だ。

「うん、返事がどうだったかまずは信吉さんに知らせるから」

「お待ちしておりやす」

「じゃ、行きますね」

 鐙に足を掛け、青藍へ跨がる。

「旅のご無事を」

「いってらっしゃいませ」

 セルジュはボウアンドスクレイプ、信吉は両手を膝に遣って深々としたお辞儀。軽く手を振って、検問所を抜けた。


三が日、家に居る間に書き進められたらと思っています。

今年は本当に、無事生きているだけで上出来だと思ってます。


よいお年を!

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