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お孫さま、お洋服

短いです。このあと別視点で「一方あの頃」を挟みます

 こちらに来て、重郎に会って二十九の夜を経た。つまり、今日で三十日目。






「本日はいかがなさいますか?」

 セルジュのお伺いはぼんやりしてしまった影響だろう。滞在中はどこへなりともお伴しますと言外で言われている。どうやらとても浮世離れした状態になっていたらしいから、心配させたのだと思う。

「うーん……そうだなぁ……」

 ルフの解体完了予定は明日の午後と聞いている。かといってどこかへ移動すればまた取りに戻ってくる必要がある。信次に渡せればと思って昨日は思い出せる限り列車の車輌内の図を描いた。バックシェル型のシート、前の座席の下部スペースを使った物入れ。読書灯や肘掛けに収納する折りたたみのテーブルなんかはこちらの技術でも再現出来そうだ。

 魔道具部門開発班に立場を置いてもらっているが随分と身勝手だ。落書き同然の図で見たこともないものを作らせる、安全面やコスト面等諸々押し付けて。信次はそれはそれ、その方面に精通した専門家に任せてくれと言うが身勝手過ぎやしないだろうか。会社勤めしたことがないからわからないが、企画立案とは実現性を無視して案を投げ掛けるだけが仕事ではない筈だ。それに厳密にいえば盗作だ、自分が伝えるものは自分が生み出したものではなくあちらでの記憶。ある意味情報という商品になるのかもしれないがどうにも罪悪感というか、他人の褌で、の感がある。個人の感情だとその点を無視しても、何を伝え何を伏せるか、生憎と今の自分ではその辺りの見極めが不得意だ。世間一般を知らねば判断なんて出来ない。

 まだ今暫くは信次や重郎の世話になるのがこちらの世界の為でもあろうか。



「あ、そうだ」

 セルジュの服装を見て思い出した。

「和装、こちらではヤマト装束か、それ以外の服を見たいと思っていたんだった」

 スーツに限らず、シャツやパンツ、いやトラウザーズというべきか。ヤマト国を出てから多く見掛けるのはやはり洋装だ。ヤマト国は、好きであの江戸時代っぽい文化なのだ。

「ヤマト国に籍を置くからといって服装の制限はなかったと記憶してるんですが」

「えぇ、ございません。では、お召しものをお仕立てになると?」

 仕立てることになるのだろうか、既製服を見られればよかったのだが。

「安価なものでしたら既製品もございますが若旦那さまが袖をお通しになることを考えればお仕立てになる方が」

 かなり粗末なもの以外は基本、古着だそうだ。安価なものもサイズ展開はあまり細かくなく、あちらでいうところフリーサイズか、大、中、小といった、大まかな分け方になるとか。そうなると古着でも既製品でも合うサイズを探すのはかなりの手間だ。着物、ヤマト装束は元々着方である程度のサイズ調整が出来る為これまで意識してこなかった。

「貴族的な装いじゃなくて、もっとカジュアルなものを考えていて」

 セルジュの服装はテイルコート、いわゆる燕尾服だがこれはかなり斬新な服で、最先端と考えていいらしい。プレリポトのアルフが着ていたのも、そうだ。文庫のクロードにいたっては着物の中にハイネックのカットソーのようなものを着込んでいた。自分が思うような、気軽な洋服は存在している筈だが。

 セルジュは少し考えたあと。

「実は、ちょうど私が知る職人がプレリアトに滞在しておりまして」

 普段はフラッハに居る、セルジュの服装一式を仕立てた職人が来ていると言う。気軽な洋服、からは遠ざかるが予定を訊いて呼んでくれることになった。スーツを作っておくことは無駄にはならないだろうし服飾を専門とする職人なら自分が思う気軽な服装について聞けるかもしれない。

「あ、信次さんにも話を通しておいてくれると助かります」

 揚羽紋の入らないものを、身に付けさせたくない筈だ。派手にされるとさすがに困るが多少の我慢で重郎や信次の安心に繋がるのなら断るつもりはない。

「お伝えします」

 洋装なら紋を入れるのも限られてくる、織って浮かび上がらせるか裏地か。

「靴職人も同時にお呼びしてよろしゅうございますか?」

「えぇ、頼みます」

 そうだ、洋装で足袋と草履というわけにはいかない。






 セルジュから話を聞いた信次は多少衝撃を受けたようだがあちらでの着物事情を伝えればけっしてヤマト装束を疎んだわけではないと理解された。

「日常的に着物をお召しのひとは少なかったね、時代なんだろうけれど」

 自分の周りだけなら少なくなかったが、さすがにそれをもってして世間一般だと言ってしまうほど無知ではない。

「央京をお出になる支度の際にお申し付けくださいましたらよかったのに」

 重郎の意見も取り入れて仕立てられたのに、と思っていそうだがヤマト国の外に出るまでよくわかっていなかったし、不自由を感じていなかったのだ。

「熊を素手でやった時に寝間着の裾がね、さすがにばたついてしまって」

 何故か信次は一瞬固まった。

「信次さん?」

「若旦那、そもそも寝間着で戦うのもおやめいただきたければ素手で熊と戦うのもおやめいただきたいのですが」


ここ最近プロットは進んでいるのですがやはり

清書と推敲が追い着きません。

次、区切りがいいところまでいったら

一回書き溜め期間作ろうか迷い中です。

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