応募の規定を守らねぇコは、いねがぁ? ~小説パトロール妖怪・マナハゲちゃん~
『ラズオ、聴かねがぁ……?』
『ポイムはラズオ宛てに、ミェールでねがったっけぇ……?』
『規定よめぇ……、キーワード入れろぉ……』
『タイトルにもタイトルさおもすろげのタイトル、入んねがぁ……?』
『千文字未満だぁ……』
『コレェ! オメェまだまちげえて……千文字以内だぁ、ちゃんど数えろぉ……』
異世界電脳図書館に伝わる、都市伝説。
七月になると夜な夜な聞こえるという、低いうめき声と、普通のうめき声。
赤き肌、二本の角、藁苞の装束と草履、
その納豆の糸引く手には応募要項マニュアル……
彼らは小説警備員妖怪。
真名緒と羽毛男。
『……あんれ? めんずらし。めんこい三人組さんだぁ』
『ん、団体さん? 待でマナオ、いまマニュアルみっから……他作と合わせで読まねえと分がんね作品は、と……ううむ、このケースは容易でねぇど……微妙なラインだぁ』
『ハゲオ、ばしこぐでねえ! めんこくて胸さギューンとなる作品はセーフだ! 誰が何言わんがセーフ! 次さ行ぐど、こっちゃ来!』
『まっ、待でぇマナオ、無理言うでね!――おねげえだぁ、気付いでけれぇ、まんだ時間あっからぁ――』
ハゲオは業務に実直で几帳面。問題があればすぐマニュアルを確認します。
でも相方のマナオは、自分の好物にはついつい甘口判定をしてしまう乙女派。
一説には、ミステリーものもお好みらしいです。
『……ハゲオ、あんの高げなパンプス……ウワサの異次元創作女優さんでねが?』
『あん方はバッグもリーガルさんだぁ、きぢんとコーデネードしでんなぁ』
ハゲオは人情熱き男ですが、女性には若干、甘目なタイプかも?
も、もちろん、彼女は違反などしていません。
もし舞台中にハプニングがあっても、きっと即座に毅然たる演技の出来る、
凛とした美しい女優さんなのでしょう。
『……おいマナオ? あんのヤロォ、まぁた規定外でねが?』
『ダメだぁハゲオ、前も言ったがぁ? 履きモン見れ?』
『あ……妖怪退治の強え奴さんだっけ? いげね、髪針さ来るど、逃げろぃ!』
そりゃあ、彼らが怒られるのも、仕方がないのです。
なぜならその時――その時だけは――彼は規定違反などしていなかったのですから。
『……んああぁん! こえがったぁよぉ……ハゲオ、も、もう、帰んべ?』
『……待っで。ぢっど、ぢびっでまっだで……でげえ方』
こんな調子ですが、彼ら小説パトロールは次回、活躍の場があるのでしょうか?
……大変、心配です。多方面にご迷惑をお掛けし兼ねませんので。
真面目にふざけてすみません。審査員特別賞があるなら是非、最後のカレに、お願いします。
ホラーもラジオにメールですか? 確かにある意味怖い作品です。