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熊王伝  作者: ウル
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105正体

登場人物

ガイン   主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー   ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェル メキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

バート   フィロソフィー商会のドンロン支店長(人間)

アウルス  ドンロンモンスター部隊副隊長(★5ナイトメア)

「バート殿はアレン・リッチモンドの挙兵についてどのあたりまでご存じだったのですか?」

 アレスが帰った後、オーウェル様が聞く。


「アレン・リッチモンドの挙兵については、メキロ家が苦戦した時の穴埋めのためにアレス殿から指示が来ていましたので知ってはいましたが、御三家共同のノリク討伐作戦については初耳で、先ほどアレス殿の話を聞いて初めて知りました。」

 バートさんが答える。


(フィロソフィー商会の当主はブライアンなのか?)

 俺は、フィロソフィー商会の内部組織が分からないので聞いてみる。


「ええ、そうです。

 私は幹部とは言っても、あくまでドンロンの支店長ですからね。

 アレス殿は、当主であるブライアンの相談役兼実行部隊責任者という位置づけです。」

 バートさんが答える。


(当主のブライアンってどんな奴なんだ?)

 俺が聞く。


「アレス殿以上の策略家ですよ。

 ノリクが台頭しそうになると、世界中の国に進出して店を出し、エルシアが戦火に包まれてもいいよう保険をかけつつ、進出した先の領主等に接近して色々交渉をしていますね。

 私もドンロンの店の番頭を2人も新店舗の店長に持っていかれてしまいましたが、アレス殿と違って方針についても詳しく説明してくれますので、理解して送り出しました。

 仮にノリクにハキルシア帝国を押さえられたとしても、世界中の国を纏めてノリクを抑え込もうと考えていますね。」

 ウル様もそうだけど、策略家って言われる奴は、先の先まで考えて準備しているんだな。


「ブライアン殿は、どうしてそこまでノリクと敵対しているのですか?」

 オーウェル様が聞く。


 バートさんはこの場のメンバーの顔を見る。

「これは、ここだけの話にしておいてください。」

 バートさんが言う。


「分かりました。

 この場にいる我々だけの胸にしまっておきますので。」

 オーウェルさんが答える。


「ブライアンは、ノリクのモンスターに対する待遇に反感を持っているのです。

 なぜなら、当主のブライアン自身もモンスターだからです。

 これは、エルシアの他の6大商人すら知らない秘密事項です。」

 バートさんが言う。


「それなら、ブライアン殿はノリクと敵対するしかありませんね。

 しかし、他の商人すら知らないなどと言うことができるのでしょうか?」

 オーウェル様がさらに聞く。


「★5セトが覚醒すると★6ゲブに進化します。

 ★6ゲブの専用技にシェイプチェンジと言う技があり、ブライアンは人間の姿になることができるのです。

 ちなみに、アレス殿はブライアンの弟です。」

 セトの段階で人間の言葉を喋ることができるのだから、さらに人間に変身したら、もう人間と見分けはつかないよな。


(バートさんは、人間なのにモンスターに仕えてるのか?)

 俺が聞くが、


「相手が人間かモンスターかというのは関係ないでしょう。

 私はブライアンが商人としても上司としても尊敬できるから仕えているのです。

 しっかりした統治ができるのなら、私はモンスターの領主がいてもいいと思いますよ。」

 バートさんが言う。

 偏見がなくて尊敬できるけど、モンスターである俺から見ても先進的過ぎて理解されないかも知れないのではと思った。

 だが、こういう話を聞く限り、フィロソフィー商会は本当に味方なんだと思えてくる。


「そう言えば、物資の調達の件で話があるということでしたが。」

 一通り話が終わったところで、オーウェル様が話題を変える。


「エリーゼ様と話はしたのですが、鉱石の調達量について確認したいと思いまして。売れない在庫を抱えるわけにはいきませんので。」

 バートが聞いてくる。


「ストラリアからの調達が可能になったのですね。ありがとうございます。

 備蓄のため1万トンほどの調達をお願いします。

 その後は年間3000トン程度を安定的に調達したいですね。」

 オーウェル様が答える。


「了解いたしました。調達は全量フィロソフィー商会にて行ってもよろしいですか?」

 バートが聞いてくる。


「ハルメルン商会はまだ準備ができていないようですので、備蓄のための1万トンは全てフィロソフィー商会でお願いします。」

 流石商人。商売上手だな。


「了解いたしました。調達単価は1トン900ジュエル程度の見込みです。」


「遠くストラリアから運ぶにしては予想より安いですね。

 帝都方面からの調達単価が1トン当たり850ジュエルですから。」


「ストラリアは他国に輸出をしていますし、こちらも大量に調達するので、この程度は交渉できそうです。来年以降、調達量が減ると若干単価が上がるでしょうが。」


「それは仕方ないです。

 帝都方面からの買い付けに頼らない調達先を確保したいのでよろしくお願いします。」

 オーウェル様とバートさんの商談はあっさり終わった。


(連合国内の他の領主からも欲しいとか言われないのか?)

 俺が聞くと、


「そこは、バート殿が他の領主にも営業をするから大丈夫でしょう。」

 オーウェル様が答える。

 そりゃそうだよな。

 そこは商人の仕事だよな。


「あと、パワー殿に話があるのですが、ドンロンに見えますか?」

 バートさんが兄貴に直接話って何なんだ?


(パワー大将はエルモンドの軍を率いているから、ドンロンへの到着は明後日になる。)

 俺がそう答えると、


「分かりました。

 では、到着しましたら、一度フィロソフィー商会を訪ねるよう伝えてください。」

 どんな話か全く予想がつかないが、兄貴がドンロンに着いてから聞くか。

 こうして、バートさんとの会談が終わった。


 もうすぐパール伯が到着し、到着後にパール伯も交えた会談が行われるようだ。

 俺は、エルモンドの部隊の到着する明後日まで、ドンロンのモンスター部隊の中で過ごす事になったので、部隊の所へ戻った。




 モンスター部隊のところに戻ると、アウルスさんが待っていた。スレイルさんもいる。

 ★5ペガサスの姿がないので、アウルスさんに聞くとローランさんはまだ巡回の最中のようだ。


(遅かったな。

 フィロソフィー商会の話が長くなったのか?)

 アウルスさんが言う。


(大事な話になり、オーウェル様のところまで案内して話すことになった。

 ノリクの密偵がいる可能性がある場所では話せないような内容が色々出た。)

 俺は、スレイルさんとアウルスさんに報告する。


(アウルス、私が部隊の訓練を進めておくからガイン殿から話の内容をシャドウウォークで聞いておいてくれ。)

 スレイルさんが言う。


(シャドウウォークって、ナイトメアの専用技だよな。密談に使えるのか?)

 俺は詳しい効果まで知らないので、アウルスさんに聞くと、


(本来は隠密行動に使う技だが、複数の者に使えば密談もできる。

 シャドウォーク中は対象外の者に声を聞かれる心配は全くない。)

 アウルスさんが答える。それなら安心して話せそうだな。


 アウルスさんが俺にシャドウウォークの技を使うと、俺は泡の中に入り、泡の中から周りの状況をみる状態になった。

 続いて、アウルスさんが自分にもシャドウォークを使い、アウルスさんも泡の中に入ってきた。


(これがシャドウウォークの中か。

 周りの状況は見えるが、音は全く聞こえないし、匂いもしないんだな。)


(そうだ。こちらからは視覚で周りの状況を確認する事しかできないし、外からは視覚・聴覚・嗅覚で我々の存在を感知することはできない。ただし、触覚では感知することができ、我々が外の何かとぶつかれば技は強制的に終了する。)

 アウルスさんが、技の注意点を説明をしてくれた。

 近くにいる誰かとぶつかるわけにはいかないので、俺とアウルスさんはフライトの技で空中に浮いて話をすることにした。



(フィロソフィー商会のバートさんは、★5ガルムのアレスの依頼で行方不明になっているエルシアの使者のタロウについて調査をしていて、ウル様を攫う直前にエルモンドでタロウに会った俺に状況を聞いてきた。)

 俺は1つずつ話を始める。


(★5ガルムのアレスは、帝都を騒がせていた者か?)

 アウルスさんが聞いてくる。


(そうだ。エルシア商人のブライアン・フィロソフィーの弟だ。)


(ちょっと待て。ブライアン・フィロソフィーは人間ではないのか?)

 普通はそう思うよな。伝える俺もぶっ飛んだ状況だと思う。


(ブライアンはモンスターだ。★6ゲブはシェイプチェンジという専用技で人間に化けることができるようになる。

 進化前の★5セトの専用技で人間の言葉も話せる。

 あっ、これは絶対口外しないでくれって言われているが、アウルスさん達とパワーの兄貴だけには伝えるつもりだ。

 それ以外はオーウェル様と内政官のアルシャンさんしか知らない。)

 それでも、アウルスさん達と兄貴にだけは伝えておきたいので言ってしまった。


(なるほど。モンスターであることが明らかになると本人にとっては非常に都合が悪いな。

 私もこの件は兄達以外には口外しないようにしよう。)

 アウルスさんも当然この情報の重大性は理解してくれているようだ。


(で、お互いの情報を整理した結果、使者のタロウはノリクに捕まって洗脳された上で、ウル様の拉致をさせられたらしいという結論になった。

 アレスは状況を知って、御三家共同のノリク討伐軍を上げるために既にエルシアに向かった。

 オーウェル様は、ウル様救出の部隊を至急エルシアに向かわせると話していたので、近い内にその話になるはずだ。)

 俺は、ざっと要点を報告する。


(内容は分かったが、アレスだけでノリクに勝てる見込みはあるのか?)

 確かにその懸念はあるよな。


(アレスの話では、俺達が連合国として独立したことでノリクの求心力が衰えているらしい。

 そこへ、ノリクが偽の皇帝を仕立てて好き勝手したことを公にして、ノリク討伐の軍を上げ、帝国内の殆どの勢力で袋叩きにする算段らしい。

 失敗することも想定して、連合国としてもウラジオの町に軍を集結させる方向で、現在パール伯を交えて会談が行われている。)


(そんなに上手くいくものなのか。

 アレスは、帝都で騒ぎを起こす程度のことしかしていない筈で、反ノリクの勢力を纏められるとは思えないが。)

 そりゃ、アウルスさんはアレン・リッチモンドの件を知らないからな。

 俺もその件について聞かなければ同じことを思っただろうし。


(いや、アレスは結構な策士だったぜ。

 アレン・リッチモンドにメキロ家討伐軍を出すようにノリクの偽指示書を送ったのはアレスだ。勿論、穴だらけにしてメキロ家に潰されるようにして。結果として、大陸の東側を反ノリクで纏める作戦だったようだ。

 しかも、メキロ家がもたついたときの穴埋めの準備も万全だったらしい。

 結局メキロ家がアレスの思惑以上に動いてくれたようで、アレスは騎士団長のルフトーラの自爆からアウルスさん達を守ることぐらいしか手を出してないと言っていたが。)

 俺が言うと、


(なんと、あの時の防護壁はアレスによるものだったのか。

 どこにいたかも分からなかった。

 なるほど、我々はアレスの掌の上だったというわけだな。

 それだけの策士が本気でノリクを潰しに行けば成功する可能性もあると。)


(ああ、そうだ。

 過度な期待は禁物だが、俺達が手を出さなくともノリクが倒れる可能性はあると思っている。

 だが、逆に問題も発生した。

 ウル様の件だ。

 アレスは口ぶりから言って、ウル様の救出を余裕があればノリク打倒のついでに行う程度に考えている。

 急いで準備しないと、ノリクは潰れたが、ウル様は助からなかったという事態になる可能性が低くない。)


(それで、オーウェル殿は、ウル殿の救出部隊を急いで向かわせようとしているわけか。

 しかし、多数の精鋭を送ろうとすると、本体を指揮するものがいなくなってウラジオまでの行軍に支障をきたすな。)

 アウルスさんが言う。


(そのことで思ったんだが、ドンロンのモンスター部隊の前線部隊にフライトとスピードを使えるメンバーは何匹いる?)

 俺は、アウルスさんに聞く。


(軍全体を高速で行軍させるのか。

 モンスター部隊に比べ人間の衛兵の人数が桁違いに多い。とても全員にかけることはできない。)

 アウルスさんは言う。


(いや、モンスター部隊全員だけで高速行軍するつもりだ。

 我々モンスターは人間に比べて走行速度がかなり速いから、全員にフライトがかけられると一番いいが、それが無理でも全員にスピードをかけることができれば、少なくとも人間の5倍以上の速度で全員行軍が可能なはずだ。

 人間の軍なら2か月以上かかるウラジオまで、10日以内に着ける。

 これなら、ウル様救出にも間に合うし、場合によってはアレスの行軍の援軍として参加することも可能だ。)

 俺は、自分の考えをアウルスさんにぶつける。


(なるほど、実際にするかどうかは相談の必要はあるが、選択肢を増やすために準備はしておいた方が良さそうだな。

 前線組でフライトが使えるのは、私と隊長3匹、それにアルガ隊の★4カクリュウのスコチオの全部で5匹。

 スピードを使えるものまではしっかり把握できていないが、★2ではそんなに多くないはずだ。恐らく全体の2割と言った所か。)


(なら、エルモンドからの部隊が到着するまでに、前線組全員にスピードを習得してもらった方がいいな。

 と言いながら、俺もまだスピードを習得していないから急いで覚えるつもりだ。)


 こうして、俺は兄貴が行軍してくる2日の間にスピードの技を覚え、前線組の全員に教えて回ることになった。


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