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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
19/100

93戦闘スタイル

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

ダガン  エルモンドモンスター部隊補佐(人間)

クロガネ エルモンドの鍛冶屋(犬人)


 そして夜になり、色々な方面の知識を学ぶ時間がやってきた。

 今日から講師が変わるから、ネフェルさんが紹介してくれるはずだ。


 ネフェルさんが、1人の犬人を連れて部屋に入ってきた。


「こちらが本日からの講師となる犬人のクロガネ殿です。

 クロガネ殿はエルモンドの武器職人で、武器と装備について話していただくことになっています。

 クロガネ殿、こちらの★4モサがモンスタ部隊大将のパワー殿、★4アルカスが副大将のガイン殿です。

 もう一人の人間が、モンスター部隊の唯一の人間でお二方の補佐をしているダガン殿です。」

 ネフェルさんがお互いを紹介してくれたので、お互いに名乗り合う。

 その後、ネフェルさんは部屋を退室した。


「では、今日からワイが、人間の使う武器防具について説明させてもらうで。

 まさか、自分達モンスターは装備を使わないから人間の武器防具なんて知らなくていいとか思っとらんよな?」

 クロガネ講師が話を始める。


(分かってるぜ。

 これから多数の人間と敵として戦うと分かっているからな。是非とも知っておきたいぜ。)

 兄貴が答える。


「分かっておるんならええ。

 それじゃあ、はじめるで。

 最初に武器スタイルについてや。

 人間が使う武器スタイルは主に2つあるで。犬人も一緒やけどな。

 1つが、1ウェポンスタイル。1つの武器を両手で持って使うスタイルや。

 もう1つが、1ウェポン1シールドスタイル。利き腕で武器を持ち、逆腕に盾を持つスタイルや。

 他にも例外はあるにはあるが一般的ではないから略すで。


 今日はちょうど人間がおるさかい、動きを見せたるで。

 ダガンはん、このソード(剣)を使って、ゆっくりとワイを攻撃する動きをしてみてくれや。

 ワイは、1ウェポン1シールドスタイルで受けるで。」


 講師に言われ、ダガンはクロガネ講師にゆっくりと武器を振り下ろす真似をする。

 講師は、右手に武器を構えたまま、ダガンの攻撃を左手に持った盾で受ける。


「いい感じやで。ありがとな。

 このように、1ウェポン1シールドスタイルは、盾を使って敵の攻撃を防ぐこと優先することにより防御力に長けたスタイルやで。

 では、ダガンはんと同じ1ウェポンスタイルの場合、敵の攻撃をどうやって受けると思う?」

 講師が俺達に聞いてきた。


(武器で受けるんじゃねえのか?)

 俺が答えると、


「その通りやで。」

 講師は、そう答えるとこれも実演して見せてくれた。

 ダガンのソードによる攻撃を同じソードで受けることにより防ぐのだ。

 とは言え、当たり前のような気がする。


「次に、あんたらモンスターは、強敵がソードで攻撃してきたときに、どうやって受けるつもりか教えてくれ。

 雑魚相手ならどんな武器相手でも倒せるだろうが、自分と同等以上の相手だと簡単ではないはずやで。」

 クロガネ講師が聞いてくる。


(俺の図体の大きさを利用して、体当たりかな。)

 俺が言うと、


「相手の方が技量が上だと、急所を狙われるで。」

 講師に返される。


(それじゃあ、技で遠くから遠隔攻撃か。)

 俺が別の答えを言う。


「敵がそれをいつも許してくれるとは限らんで。」

 これも講師に返される。

 そりゃそうだよな。


(どう考えても不利だぜ。

 俺様達も人間みたいに盾が使えればな。)

 兄貴が答える。

 それができれば苦労はないぜ。


「その通りやで。

 武器を持たないことが不利だということを知ることは大事やで。」

 講師が言う。


(確かにその通りだけど、問題解決になってないぜ。)

 俺が言うと、


「と言うわけで、今日のテーマは装備の試行や。

 熊の体格に合った盾を試作してみたで。」

 クロガネ講師が言う。

 講師は、兄貴の言ったように俺達が盾を使うことを考えていたんだ。

 確かに、俺達モンスターと違って武器防具を装備する人間はリーチも長く、防御力も高い。

 一定レベル以上の戦士を相手にするのは厳しいのは確かだ。

 それに対抗するために、熊に合った盾を用意してきたという。一体どんなものなのだろうか?


 試作品を見ると、盾から2本の紐が出ていて、この紐を予め逆腕に縛って、盾を腕に固定するもののようだ。

 俺達熊族には紐を縛るような器用なことはできないので、講師に装備させてもらう。


「それじゃあダガンはん、パワーはんとガインはんに順番にゆっくりと攻撃するポーズをしてみてくれ。

 パワーはんとガインはんは、装備した盾で攻撃を受けるにはどうしたらいいか考えて受けてみるんやで。」

 講師に言われて、まずは兄貴がスローモーションで攻撃してくるダガンの攻撃を盾で受ける。

 次に俺もやってみるが、スローモーションなんだから簡単だ。一発でできる。


「盾を使う動きは分かったみたいやな。

 今は部屋の中やでこれ以上は難しいで、これから外に出て、実践的な訓練するで。

 ダガンはんは、こっちの威力の弱い練習用のソード持って出てくれ。」

 講師に言われ、俺達は館の庭に出る。


 今度はダガンが本気で攻撃してくるのを相手にして練習するようだ。

 練習用のソードとは言っても、まともに喰らえば当然痛いし、当たり所が悪いと怪我をすることもある。

 しかも、ダガンは俺と兄貴の2匹がかりでやっと倒した相手で、単独ならダガンの近接戦闘力は俺達より上だ。

 いきなり本番さながらの練習をさせられるとは思っていなかった。

 とは言え、人間の強力な戦士相手の訓練と考えると貴重な経験だ。是非とも受けたい訓練ではある。


 ダガンはソードで一撃を与えれば勝ち、俺達はダガンに1発パンチを当てれば勝ちということになった。パンチをダガンのソードで正面から受けられたら腕を攻撃されたと同義で俺達の負けだ。

 基本技は禁止だが、図体の差があってダガンの攻撃が兄貴の肩から上に届かないので、ダガンが予め自分にフライトだけは、かけていいということになった。

 まずは、兄貴とダガンが実戦練習を行う。


(ダガン、こないだの戦闘ではダガーを使っていたが、長いソードも使えるのか?)

 兄貴がダガンに聞く。


「得意とは言えないが、使えない訳じゃねえぜ。」

 ダガンが答える。

 まあ、ダガンの動きを見れば分かるか。

 俺は両者の戦いをしっかりと見せてもらおう。


 最初にダガンが正面から飛び込みつつ斬りかかる。

 兄貴は当然のように左腕の盾で受けると、ダガンのソードが盾の前にあるからダガンの腹から下ががら空きだ。

 兄貴は盾で受けると同時に、右腕でダガンの腹に向かってパンチをする。

 が、ダガンはその動きを読んでいたようで、ソードを受け止められた直後から上に向かって飛び出そうとしていた。

 兄貴のパンチもかなり速かったが、ダガンに空中に逃げられて空を切る。


「流石はパワー様、パンチが早えぜ。」

 ダガンが言う。


(ダガンだって、ソードは使い慣れていないと言いながら、スピードが変わらなかったぜ。)

 兄貴が返す。

 確かにそうだ。ダガーに比べて長くて重いソードを使っている割には、先日の戦闘と比べてダガンの攻撃のスピードが落ちているようには見えなかった。

 だが、落ち着いているのは兄貴の方だ。表情には出さずとも、ダガンの方が余裕がなさそうに見える。


「そりゃそうや。図体が違う。

 スピードにそんなに違いがなければ、でかい方が有利に決まっとるで。」

 俺の考えを知ってか、横で見ていたクロガネ講師が当たり前のように言う。


(先日の戦闘では、俺と兄貴の2匹がかりでやっと倒せたんだが。)

 俺が聞くと、


「武器ありと武器なしじゃ、ハンデがありすぎやで。

 それに、ダガンはんはダガーを得意としていると聞いとるで。

 重いソードでは細かいフェイントとかはやり難いやろな。」

 なるほど、武器が重くてダガンの得意なフェイントを交えた細かい動きができそうにないからダガンに余裕がない訳だ。

 そう考えると、今回の訓練は油断しなければ兄貴が勝てるように講師は計算していたということになる。

 兄貴の盾の使い方の練習と考えれば当然か。


 ダガンが横から回り込みつつ何度も攻撃を仕掛けるが、兄貴は落ち着いて全ての攻撃を盾で受ける。

 そして、兄貴は空中を横に移動しながら攻撃してくるダガンの動きを先読みして、パンチを決めた。

 ダガンの体が空中に飛ばされた。


(ダガン、お疲れ。

 不利な設定の戦闘でよく戦ったな。)

 俺は、空中から降りてきたダガンにリザレクションをかけてダガンの体力を回復させる。


(やはり、俺様の盾の使い方の練習だったということか。)

 兄貴も気づいたようだ。


「そうみたいだが、弱点っぽいものを見つけたぜ。」

 ダガンが言う。


「そりゃ楽しみやで。

 今度は、ガインはんとやってみてくれや。」

 講師が言う。


 今度は俺がダガンと向き合う。

 普通にやれば、盾でダガンの攻撃を受けつつ隙を見て1発ぶち込めば勝てるはずだ。

 油断しないよう全力で行かないとな。


 ダガンが俺の左前から飛び込んできた。

 その位置なら正面から盾で受けられるぜ。

 俺は難なくダガンの攻撃を盾で受ける。

 そのはずだったが、ダガンは盾で止められたソードの傾きを変えてソードを滑らせ、そのまま盾の範囲外の俺の腕に攻撃を当てた。

 一瞬のことで俺には何が起こったが理解するのに時間を要してしまったらしい。

 練習用のソードなので、殆どけがはしていないとは言え、僅か一撃で俺の負けが決まってしまった。


「ダガンはんやるな。

 盾はガインはんの図体からしたら小さい。

 ソードを滑らせて盾のすぐ外側を攻撃するとはよく考えたで。」

 講師が言う。

 俺もようやく起こったことを完全に理解することができた。


(人間が盾を使うときはこんなことはないのか?)

 俺が聞くと、


「盾を使う人間はたいてい鎧も使っとるさかい、そう言う攻撃を受けても攻撃の勢いが死んどるから大したダメージを受けへんで。」

 確かに、衛兵達も鎧を着ていたな。どちらかと言うと急所を守るような作りに見えたが。


(なあ、この盾に鍔をつけて今みたいな攻撃を防げねえか?)

 兄貴が言う。


(鍔って、ソードの持つところに前にある、相手の武器を受け止めるやつか?)

 俺が聞く。

 確か、以前に武器についてグレアス隊長に聞いたことがあるのを思い出した。


(そうだぜ。俺様達は、ストレングスが使えなくなるから鎧は着れねえからな。

 鍔があれば、ソードを滑らされても受けられるだろ。)

 兄貴が答える。


「パワーはん、それはいい考えやで。

 明日、試作品の改良版を作ってくるで楽しみにしてくれや。」

 講師が言う。

 その後、講師は俺と兄貴の通常時とストレングス時の左腕のサイズを色々測って、今日の訓練が終わった。

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