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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
15/100

89戦後処理(2)

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェルメキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

グレアス エルモンド衛兵隊総隊長19歳(人間)

ライオス エルモンド衛兵隊副隊長26歳(人間)

エイク  エルモンド冒険者部隊長37歳(人間)

「早かったな。やはりダメだったか。」

 ダガンが言ってくる。

 1時間余りで戻ってきたのでダメだと思っていたらしい。


(ガインの僕モンスターとして契約することに成功すればOKと言うことになったぜ。)

 兄貴が言う。


「僕の契約って、モンスター使いがモンスター相手にやってるやつだろ。

 人間相手でもできるのか?」


(人間は知恵がある分コストがかなり高いが、それ以上の支配力があれば可能だぜ。)

 兄貴が答える。


「俺があんたの相棒の僕モンスターとして契約すればいいんだな。いいぜ。俺にはもう失う物はないからな。」

 ダガンには、モンスターの僕として契約することに抵抗はないらしい。


(俺の支配力で足りるか分からねえけどやってみるぜ。

 俺が、「汝、ダガンよ、我が僕となるか?」と言ったら、なると答えて、心からそう願うんだ。)

 俺はやり方を説明する。


「分かったぜ。」

 ダガンが言うので、俺は契約を始めてみることにした。


(汝、ダガンよ、我が僕となるか?)

 俺はそう言って、ダガンの額に手を当てる。


「なるぜ。」

 ダガンが答える。

 その瞬間俺の体が重くなった気がした。


(ガイン、体が重くなった気がしたか?)

 兄貴が聞く。


(したぜ。)

 俺が答える。


(ガイン、お前は人間を支配することに成功したんだな。

 一応、施設で契約できているかを確認してくるか。)


 俺達は、縛られたままのダガンを連れて、モンスターが進化できる施設へ行く。

 そして、契約を確認すると契約は成立していると分かった。


(それじゃあ、ダガン。ガインの僕として契約できているみたいだから、縄を解いてやるぜ。)

 兄貴がダガンの縄を解く。

 契約ができているので、ダガンが反抗する様子はない。


(それじゃあ、一応コストを測ってもらうか。)

 兄貴はダガンのコストを測ってもらう。


 ダガンのコストは145と出た。

 人間のコストも測ることができるんだな。


(気になることがあるから、俺達もコスト図ってもらうか。)

 兄貴がそう言うので俺達もコストを図ってもらう。


 兄貴が155、俺が285になっていた。

 何かの間違いだと驚いたが、俺の場合は支配しているダガンの分もコストが加算されるらしい。

 なので、俺の本来のコストは(285-145=)140と言うことになる。

 それでもかなり上がっている。 

 確か前回測ったときの俺のコストは105だったはずだ。


(やはり、賢くなった分だけコストは上がっていくみたいだな。)

 兄貴が言う。

 確かに、モンスター部隊を作る前に比べて、俺も色々考えるようになったからな。

 あの頃に比べれば、俺もかなり賢くなった自信はある。

 それがコストに反映されるのか。


「コストと言うのは、強さ+賢さって事なのか?」

 ダガンが聞いてくる。


(多分な。ウル様は俺様の分を引いてもコストが200はあったから相当賢いってことだろうな。)

 兄貴が答える。俺はウル様のコストを初めて知った。モンスターでも努力すればそこまで行けるんだなと思った。


 俺達は次に、ネフェルさんについて研究所に行く。

 ダガンも連れて行った。


 中に入ると、首輪が外れたモンスター達が1匹ずつ、檻に入っていた。

 暴れるといけないから仕方ないか。


(俺達を助けてくれた熊だ。)

 モンスター達が俺達を見つけて、口々に言う。


(みんな無事首輪が外せてよかったな。

 お前達、俺様達と一緒に首輪をつけた奴らと戦う気はあるか?)

 兄貴が言う。


(やるぜ。

 いつ殺されるか分からない首輪なんて真っ平だ。)

 檻のモンスター達が答える。


(後ろにいるのは、俺達の元ボスじゃねえのか?)

 1匹のモンスターがダガンに気付く。


(ほんとだ、何でここにいるんだ?)

 檻のモンスターがざわめき出す。


(元はそうだが、俺達と一緒に戦うことになったダガンだ。

 俺が支配しているから大丈夫だ。)

 俺がそう言うと、モンスター達は黙り込む。


「俺は、支給されたこいつらを使って任務を実行しろって言われただけだぜ。

 その時からこいつらに首輪はついていたぜ。」

 ダガンが言う。


(首輪をつけた奴は、裏切ったり逃げたりしたら首輪に絞め殺されるぞって言っていたぞ。)


(もう首輪はついていないだろ。

 それ以外に、こいつになんか酷い目にあわされたのか?)

 俺はモンスター達に聞く。


(それはないけど、首輪が怖くて・・・)

 とりあえず、モンスター達の反応からダガン本人はモンスターを虐待してないことが分かった。


(ダガンも仲間になるんだからな。

 今まで色々あったが、仲良くやるんだぞ。)

 兄貴がそう言うと、モンスター達は黙った。

 今までのボスと仲良くと急に言われても難しいよな。少しずつでも慣れて欲しいが。

 とは言え、ノリク側についてもまた首輪に支配されるだけだ。

 そう考えると、こいつらが逃げることはあっても、裏切って再度敵に回ることはまずないだろう。


 俺達はそう言って、お互いに自己紹介しようとするが、こいつらには名前さえ付けられていないことが分かる。

 確かに、野生のモンスターには名前なんてついていないからな。


(ダガン、名前もないのにどうやって指示を出していたんだ?)


「ヘルハウンドとか種族名で指示をしていたぜ。」

 確かにほとんどのモンスターが1種族1匹だから、それで問題ないとはいえるが。


 このまま、これから部隊のメンバーとして行動してもらうのに、名前がないのは不便だ。

 とは言え、今ここで13匹ものモンスターに一度に名前を付けるのも難しい。


(部隊に配分して、隊のメンバーに名前を付けてもらうか。)

 俺が言うと、


(それがいいな。ここで全員に名前をつけるのは大変だからな。)

 兄貴も同意してくれた。


(とりあえず、こいつらを連れて行ってコストを測ってもらいに行くか。)

 俺は兄貴にそう言って、

 ネフェルさんを通じてこいつらを檻から出して連れていくことにした。


 そして、再び施設へ行ってモンスター達のコストを図る。


 ★4ヘルハウンド 55

 ★4ライジュウ  62

 ★4ホウオウ   47

 ★3シルバーウルフ27

 ★3ダイアウルフ 28

 ★3ダイアウルフ 28

 ★3フリカムイ  23

 ★3ロック    22

 ★3レオ     31

 ★3ライガー   30

 ★3ワーム    33

 ★3ブルードラゴン35

 ★3レッドドラゴン36


 これは低い。全員種族平均以下だ。

 今まで命令に従うことだけを求められてきたわけだから、何も考えてこなかったのだろうな。


 とりあえず、ダガンとモンスター全員を部隊のところに連れていく。

 休憩中とは言え、全員がここにいるわけだからすぐに多くの隊員が集まってくる。

 折角だから紹介するか。


(今連れてきたのは、新たにエルモンドモンスター部隊に配属されることになったモンスター達だ。

 この前の戦闘でお前達と戦ったから顔は知っているだろうが、こいつらはノリクに首輪をつけられて支配されていた奴らだ。

 首輪を外して自由になった今、俺達と一緒に戦ってくれることになった。

 いずれ、隊への配分も考えるから、仲良くしてやってくれ。

 あと、こいつらは名前さえ付けてもらってないんだ。

 本人が気に入る名前があったらつけてやってくれ。)

 兄貴が言う。


(そして、こちらがダガン。

 人間だが、モンスター部隊に配属されたのでよろしくな。

 まあ、ダガンは、俺とパワー大将の直属になるが。)

 俺がダガンも紹介する。いつも傍にいるなら通訳としても便利だしな。


 俺達は、13匹のモンスターを隊員達のところに置いて、ダガンだけを連れてダルトンのところへ行く。

 今日からメンバーが増えたので食料の準備を依頼した。


(次は、敵捕虜の扱いだな。

 ダガン、元部下の指揮はできそうか?)

 兄貴が聞く。


「部隊として率いても、脱走する奴がでるだろうな。」

 ダガンが答える。


(部隊としては使わない。

 自分達分の食料を作ってもらうのと、人手がかかる作業をしてもらうつもりだ。)


「それなら、首輪を外したモンスター達に見張りを頼めないか。

 武器を持たせない以上肉体能力はモンスターの方が優れるわけだから、逃げようとした奴を捕まえることはできるだろう。

 俺1人で見るより、余程効果的だと思うぜ。」

 なるほど、ダガンの言うとおりだな。


(それじゃあ、グレアス隊長に言って、予定を変更してもらうか。)

 俺が言う。

 俺達は、衛兵詰所へ行ってグレアス隊長に会う。


「パワー、ガイン、戻ってきたんだな。どうした?」

 グレアス隊長が聞いてくる。


(捕虜の話だが、ダガンが指揮をしても脱走する奴が出そうだ。

 作業してもらうのに、首輪から解放したモンスター達に見張りをしてもらう方向で行きたい。)

 兄貴が言う。


「まあ、その辺は任せるぜ。

 脱走されないようにな。」


(農作業をどこでやるかとか決まっているのか?)


「そこまでは決まってないな。

 このまま狭い牢屋に全員入れておくのは衛生上問題があるから、寝泊まりする用の空き家は確保しておいたぜ。

 とりあえず、そこに全員移動させて、明日から何をさせるかは検討中だな。」


(それじゃあ、場所を教えてくれ。)

 俺はグレアス隊長に確保した空き家に案内してもらう。

 普通の家が5軒か。1軒10人くらいなら余裕で住めるな。

 ちょうどこの5件の周りは何もないから、見張っていれば脱走はしにくいか。


 予め、近くにモンスターを配置しておくか。

 俺達は一旦部隊に戻り、新規モンスターの様子を聞く。

 まだ、馴染むには時間がかかりそうだ。


(配分は改めて考えるから、ついてきてくれ。)

 兄貴はそう言って、13匹のモンスター達を5軒の家に連れてくる。


(お前達には悪いが、準備ができるまでこの家の周りで暮らしてくれねえか。)

 兄貴が言う。


(この辺にいればいいのか?)

 ライジュウが聞いてきた。


(そうだ。

 餌もここに運んでくるようにするから。

 で、この家に住む人間が脱走しないか見張っていてくれ。

 脱走しようとした人間がいたら捕まえて、先ほどのモンスター仲間のところに連れてきてくれ。

 できそうか?)

 兄貴が確認を取る。

 こいつらはまだ賢くない。あまり難しい命令はさせられないからな。


(分かった。)

 ライジュウが答える。


(他のみんなも大丈夫か?)

 俺が確認すると、全員から返事が返ってきた。


 ここまで準備ができたので、俺達は再度衛兵詰所に行く。


「準備ができたのか?」

 グレアス隊長が聞いてくるので、


(捕虜の移動をするので、家につくまで見張りを頼む。)

 兄貴がグレアス隊長に協力要請した。


 グレアス隊長に連れられて、再び牢の中に入る。

 いくつかに分かれて入っているとはいえ、53人はきつそうだ。


「お前達には、戦争が終わるまでエルモンドの家で作業をしながら暮らしてもらうことになった。

 これから案内するからついてこい。」

 グレアス隊長はそう言うと、53人の捕虜を牢から出す。

 一度投降しているし武器も何も持っていないので、誰も暴れたりしない。

 捕虜の一人が元ボスのダガンに気付く。


「ボスが何で一緒にいるんですか?」

 捕虜の1人が聞いてくる。


「俺は、エルモンド側につくことになった。鎖付きだけどな。

 全員に鎖は無理だから、お前達は作業しながら暮らしてもらうって言っていたぞ。

 俺と違って危険なことはさせられないみたいだ。」

 ダガンが元仲間に説明する。

 それを聞いて、捕虜たちが安心しだす。

 ダガン、元指揮者だけあって、人の扱いが上手いな。


 衛兵の見張りが付いたまま、捕虜を5軒の家のところまで連れてくる。


「モンスターがうろついている。」

 家の近くに屯しているモンスターに気づいた1人の捕虜が声を上げる。


「元仲間だろ。

 今度は、お前達が脱走しないか見張ってもらうことになった。

 明日からは、お前達にあいつらの餌の準備も頼むことになるぞ。」

 また、ダガンが言う。

 それを聞いて、捕虜たちがざわめき出す。


「餌はどこから持ってくるんですか?

 俺達の食料は?」

 捕虜が色々質問してくる。


「そこまでは聞いてない。

 別の奴が説明に来るはずだから、よく聞いて、言う通りにしてくれ。

 今日から、この5軒の家に分かれて住んでくれと。

 配分はお前達で決めてくれ。元の班毎でもいいしな。」

 ダガンが言うと、元部下だけあって話が早い。

 捕虜たちはざわつきながらも、5軒の家に入っていった。


「ダガンのおかげでスムーズに進んだ。助かったぜ。」

 グレアス隊長が言う。


「これくらいならお安い御用だ。」


(捕虜の作業とか必要物資とかは衛兵隊の方で準備してくれるんだよな?)

 兄貴が確認する。


「ああ、こちらで調整しておくから問題ない。

 当面のモンスター達の餌も準備しておく。」

 グレアス隊長が言うので、ようやく捕虜の当面の対応が終わった。

 あとは、衛兵隊に任せよう。

 極力元からエルモンド側にいた人間の手を借りない形にできてよかった。


(ガイン、見張りはいずれ、モンスター部隊が交代ですることになるぞ。)

 兄貴が言う。

 そうだよな。そうしなければ、こいつらをいつまでも隊に入れることできないからな。

 それは、おいおい考えていくか。


 こうして、俺達の長い戦後処理が終わった。

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