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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
14/100

88戦後処理(1)

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェルメキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

グレアス エルモンド衛兵隊総隊長19歳(人間)

ライオス エルモンド衛兵隊副隊長26歳(人間)

エイク  エルモンド冒険者部隊長37歳(人間)

 捕虜を一旦牢屋に入れ、敵モンスターを施設に預ける。

 そして、衛兵の犠牲者17人を弔った。

 その後、混成部隊は解散し、今日1日は休養日とすることを決めた。


 兄貴と俺も館で一旦寝る。

 午後に目が覚めると、兄貴は既に起きていた。

 その後、メアリがやってきて、敵ボスの尋問に入ってほしいと言われる。

 話を聞くと、敵ボスが俺達に話をしたいと言うのだ。

 俺達が行けば、情報を吐くかもしれないから呼ばれたらしい。


 仕方ないので、俺達は案内されて独房に向かう。

 そこには縛られている敵ボスと、グレアス隊長とライオス副隊長がいた。


「パワー、ガイン、待っていたぜ。

 こいつが、お前達になら情報を話してもいいって言うからな。」

 グレアス隊長が説明する。


(自爆したりしないよな。

 聞いた話だと、リッチモンド家の騎士団長は敵を集めてから自爆したらしいからな。)

 兄貴が言う。


「今更、そんな小賢しいことはしないぜ。」

 敵ボスが言ってきた。


「ここは一応、結界が貼ってあるので、余程のことでなければ大丈夫ですよ。」

 ライオス副隊長が教えてくれる。


(なんで俺達に話をしたいんだ?)

 俺が聞くと、


「あんた、★4だよな。

 ディスペルガードが使えるのか?」

 敵ボスが俺に聞いてきた。


(ああ、使えるぜ。)


「麻痺した振りをしたのもわざとか?」


(まあな)


「完全にやられたぜ。

 まさか熊相手に、嵌められるとはな。」

 敵ボスが笑い出す。


(そんなことを聞くために、俺達を呼んだのか?)


「ノリク殿の話じゃモンスターと言うのは知恵が足りないから使い捨てでいいって聞いていたが、何が何が、人間以上に策士じゃねえか。」


(エルモンドでは、モンスターは人間と混成部隊を作って普通に活躍しているぜ。

 人間を率いるモンスターの隊長もいるからな。)

 兄貴がくぎを刺す。


「いや、悪気はないんだ。

 ノリク殿の情報を鵜呑みにして判断を誤った俺のミスさ。」


(聞きたいことはそれだけか?)


「あと、すぐに援軍が来たが、野営場所に俺が奇襲すると読んでいたのか?」


(ああ、わざとらしかったからな。

 山頂から見ていると踏んで、囮部隊だけを見せて、他の部隊を見えないように近くに潜ませた。)

 兄貴が言う。


「完全に読まれてたってわけか。

 ここまで完璧に負けると逆に気持ちがいいぜ。

 俺が聞きたいのはそれだけさ、俺の知ってる話なら何でも喋ってやるぜ。」

 敵ボスが言う。


(ウル様を攫ったのはお前達か?)

 兄貴が聞く。


「別部隊の協力と言う形だが、その通りだぜ。

 ノリク殿は、あの★4テンロウを絶対に捕まえたかったみたいだからな。」


(別部隊はどうしている?)


「そのテンロウを連れて、帝都に向かってるぜ。

 俺たちが全滅して、エルモンド近辺の部隊は今はゼロのはずさ。」

 わざわざそこまで教えてくれるんだ。


(部隊のモンスターはどこから連れてきた?)


「ノリク殿からの支給だからな。分からねえぜ。」


(それじゃあ、人間の部隊は?)


「俺の特殊部隊のメンバーさ。

 元は帝都で部下として入ってきた奴らだ。」


(帝都の部隊がなんでエルモンドにいるんだ?)


「俺達の部隊は任務であちこち回っていたが、ここ1年はずっと大陸の東側にいたからな。

 エルモンドでの任務にちょうど近くにいた俺達が選ばれたんだろ。」


(他にどんな任務をしていた?)


「ノリク殿に反抗的な貴族を脅してノリク殿に従わせたり、最近ではリッチモンド家に協力させろって、あちこち回ったな。」


(ウル様を攫った後のお前の任務はなんだ?)


「森を捜索してくる部隊を少しでも各個撃破して始末することだ。

 まあ、俺達の部隊を時間稼ぎに使ったんだろうな。」


(他の部隊について、何を知っている?)


「俺達への指令は諜報部隊から来るからな。

 他の部隊がどんな任務をしているかは知らされてないぜ。

 あいつらの口ぶりからして俺達のような部隊が他にも沢山あるんだろうけどよ。」


(ガインとグレアス隊長は他に聞くことあるか?)

 一通り話をしたようで兄貴が話を振る。


「お前の名前と部隊名は?」

 グレアス隊長が聞く。


「俺は、ダガン。ノリク軍特殊第3部隊だ。」

 つまり、最低3つは部隊があるということか。


(お前は、これからどうするつもりだ?)

 兄貴が聞く。


「どうするも何も、俺は情報を吐かせるだけ吐かされて殺されるだけだろ。」


(ノリクならそうするだろうな。

 こっち側につく気はねえか?)

 兄貴が聞く。


「パワー殿、それは流石に危険では?」

 ライオス副隊長が言う。


「この熊達の下にならついてもいいぜ。

 尤も、俺は殺されても文句は言えねえ立場だけどな。」


「お前は、家族とかはいないのか?」

 グレアス隊長が聞く。


「そんなのがいたら、こんな特殊部隊なんて率いてないぜ。

 もっと真っ当な事をしているはずだろ。」


(調整してみるから、待っててくれねえか。

 やっぱダメだったで死んでもらうことになるかもしれねえけどな。)

 兄貴が言う。


「無理すんな。

 別にダメでも恨みはしねえからよ。

 あと、部下には家族がいる奴もいるからな。

 どうなるかは保障できないぜ。」

 ダガンが答える。

 一応、こいつなりに兄貴のことを気遣ってくれているらしい。


 俺達は、ダガンを縛って牢に入れたまま、一旦牢から出ることにした。

 外へ出て、相談をする。


「パワー殿、本当に奴を味方に引き入れるつもりですか?」

 ライオス副隊長が聞いてくる。


(できればな。

 裏切られないための方法はないか?)

 兄貴が聞く。


「ノリクのように首輪で縛らない限りは厳しいかと。」

 ライオス副隊長が答える。


「俺は、さすがにそこまでして生き残りたくはないな。

 そもそも稼働する首輪自体が手に入らないだろ。」

 グレアス隊長が言う。


(それじゃあ、モンスターを僕にする契約はどうなんだ?)

 俺が聞く。


「あれって、人間相手でも契約できるのか?」

 グレアス隊長が聞いてくる。


「さあ?」


(人間でもコストは測れるんだよな?)


「それはできるでしょうけど、誰が契約するのですか?」

 ライオス副隊長が逆に聞いてくる。


(俺様が契約すると、ウル様の支配力を圧迫するから無理だぜ。)

 兄貴が言う。


(俺かよ?)


「パワーかガインじゃなければ、あいつは了承しないぜ。」

 グレアス隊長が言う。


(仮にそこまでできたとして、支配できるのはダガン1人だけだぜ。部下は無理だ。)

 俺が言う。


「部下にはしばらく牢に入っていてもらいますか。」


(とりあえず、その案でオーウェルさんに確認したいぜ。)

 兄貴はそう言って、両隊長を連れてオーウェル様の館に行った。


「グレアス、ライオス殿、パワー殿、ガイン殿、お疲れさまでした。

 敵部隊を壊滅させたそうですね。」

 オーウェル様が労ってくれる。


「エイク隊長がいないが、報告しちまっていいか?」

 グレアス隊長が言う。


「すぐに呼んできますので、待ってください。」

 オーウェル様は、使いを出してエイク隊長を呼びに行った。


(それじゃあ、その間に1つ相談したいんだが。

 敵ボスのダガンをモンスター部隊に入れてもいいか?)

 兄貴が切り出す。


「なぜ、モンスター部隊に?」

 オーウェル様が聞いてくる。

 そりゃそう思うよな。


(尋問したら、俺様達に完璧に負けたと言って気に入ってくれたようで、俺様達の下になら入ってもいいと本人が言っていたからだ。)


「裏切ったりしませんよね?」

 まあ、当然の反応だよな。


(雰囲気的には大丈夫そうに見えるが、演技かもしれねえ。

 ここに来る途中、首輪か契約で縛ればいいんじゃねえかと言う話が出た。)


「契約すれば、マスターに敵対する行為はできなくなりますから安全にはなりますね。

 我々がやろうとしていることに逆行しますが。」


(当面は、それでいけねえか?)


「分かりました。パワー殿がそこまで言うのであれば、契約等で縛ることを条件に許可しましょう。」

 オーウェル様、決断が早いな。

 当主のオーウェル様が決断した以上、誰も文句は言えない。


(恩にきるぜ。)


(そもそも、俺達モンスターに契約することができるのか?

 ウル様はできたみたいだが。)

 俺が聞く。


(人間並みに知恵がつけばできると聞いた。

 魔法も習得した俺様達ならできるんじゃねえか。

 あとで、冒険者ギルドでやり方を聞きに行くか。)


 そんな話をしている間に、エイク隊長とネフェル内政官・3人の副内政官が部屋に入ってきた。


「皆さん、ノリク特殊部隊の討伐お疲れさまでした。

 ざっと概要は聞いていますが、この場で正式な報告と今後の対応の相談をさせていただきたく、集まっていただきました。」

 オーウェル様が言う。


「それじゃあ、ざっと報告するぜ。

 前回第19チームが見つけた野営跡を4つのチームで調査した。

 野営跡は遠くから目立つようになっていたので罠の可能性を感じて付近を捜索したが敵は出ず。

 野営跡が開けた場所にあったことから、敵はこちらの戦力を見極めていると判断。

 4チームだけでそのまま野営し、他の部隊は近くに潜んでいてもらった。

 4チームなら勝てると判断して敵が襲撃してきたので、22チーム全員で包囲して壊滅させた。

 我が軍の犠牲者は衛兵隊の17名。今朝エルモンドに戻ってから追悼してきた。

 敵軍は53名を残してほぼ虐殺してしまった。

 敵ボスと生き残った敵兵は牢に入れ、敵モンスターは首輪の解除のため研究所に連れて行った。

 こんなところか。」

 グレアス隊長が報告する。


「敵ボスから何か情報は聞けましたか?」

 オーウェル様が聞く。


「名前はダガン。ノリク特殊第3部隊。

 今回の任務は、エルモンドから捜索に出た部隊の壊滅だった。

 その前にウル殿を攫う部隊にも協力した様だ。攫った部隊は帝都に向かっていて撤退済みだ。

 第3部隊は、これまで反ノリク派貴族を脅して、リッチモンド家に協力するよう仕向けていたようだ。

 第3部隊の壊滅により、今、エルモンド近辺に特殊部隊はいないと言っていた。」


「知っている情報はすべて話してくれた感じですか?」

 オーウェル様が聞く。


「そうみたいだ。」

 グレアス隊長が答える。


「では、私からは、研究所の方の報告をさせてもらいます。

 保護した13匹のモンスターの首輪はすべて解除しました。

 ただ、味方になるかはまだ不明ですので、研究所の中で過ごしてもらっています。

 後程、パワー殿、ガイン殿に来てもらい説得してもらいたいと考えています。」

 ネフェル内政官が報告する。

 もう首輪の解除が済んだのか。早いな。


「報告は以上でよろしいですか?」

 オーウェル様の問いに追加がなかったので、今後の話になる。


「敵モンスターはできる限り、味方に引き入れたいですね。

 パワー殿、ガイン殿、説得をお願いします。」

 オーウェル様が言う。


(ああ、できるだけのことはする。)

 兄貴が答える。


「敵ボスについては、味方になる可能性があるということで、危険性も対処した上で、これもパワー殿に説得をお願いします。」

 オーウェル様が言う。


(ああ、分かっている。)


「残ったのは、生き残った敵兵53名ですね。」


「歴史上の記録を確認してみますと、陣営により捕虜の対処が異なるようです。

 すぐに故郷へ帰す場合もありますが、戦争終了後に返す場合が多いですね。

 酷い場合は奴隷として売ったという記録も残っていますが。」

 エルモンドでは200年くらい戦争が起こってないから、こういった対処は過去の記録に頼ることになる。

 ネフェルさんが過去の捕虜の取扱いについて教えてくれた。


「戦争終了後に故郷に返すというのが一番無難でしょうか。」

 エイク隊長が言う。


(それまでずっと、牢の中に入れておくのか?

 全員が入るにはちょっと狭そうだったぜ。)

 俺が聞く。


「あの中にずっと全員を入れておくのは衛生上も問題がありますので、半数ずつ交代で農作業でもしてもらいましょうか。

 自分たちの食べる分くらいは作って欲しいですので。」

 ライオス副隊長が言う。


(誰が指揮するんだ?)

 兄貴が聞く。


「支配の問題が片付いたらダガンにやってもらうのはどうだ?」

 グレアス隊長が言う。


(契約に成功したらな。)

 俺が答える。


「契約とはどういうことですか?」

 エイク隊長が聞く。


(敵ボスは協力してくれる素振りを見せてるからな。

 僕として契約して、敵対しない確約が取れたら協力してもらうつもりだ。)

 兄貴が答える。


「人間と契約と言うのは聞いたことないですが、それができれば大丈夫そうですね。」

 エイク隊長は答えるが、上手くいった場合だけだからな。


「それでは、ダガンとの契約が成功すればその方針で、ダメなら再度検討することにしましょう。」

 オーウェルさんがそう締めくくって、会議が終わった。


 その後、俺達は冒険者ギルドで契約の方法を聞き、ダガンに会いに行った。


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