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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
13/100

87特殊部隊撃退戦

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェルメキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

グレアス エルモンド衛兵隊総隊長19歳(人間)

ライオス エルモンド衛兵隊副隊長26歳(人間)

エイク  エルモンド冒険者部隊長37歳(人間)

ヴァディス モンスター部隊長(★4竜シルバードラゴン)

ホーク   モンスター部隊長(★4鳥シムルグ)

サラ    モンスター部隊長(★3虎ライガー)

ウィル   モンスター部隊長(★3熊グリズリー)

ゼル    モンスター部隊長(★3熊グリズリー)

アリサ   モンスター部隊長(★3熊グリズリー)


 俺達4つのチームは野営跡で野営の準備に入る。

 それと同時に、他のチームに状況と作戦を伝え、野営跡にすぐ駆け付けられる場所でチーム毎に野営をしてもらった。


 日が暮れてきたので餌を食べ、チーム毎に順番を決めて交代で寝る。

 22チームは、責任者4人と狼と鳥が1匹ずつと、衛兵隊が30人だけなので、責任者+7~8人で交代で見張りをすることになった。責任者の順番は、俺→兄貴→グレアス隊長→エイク隊長だ。


 俺の順番では何も起こらなかった。

 俺は兄貴を起こす。


(普通に起こされるってことは、まだ敵は来ていないんだな。)

 兄貴が言う。


(最短で回り込んだのなら、そろそろ来てもおかしくない時間だけどな。

 朝まで何もなければ、明日は山頂の確認だな。)

 俺は兄貴にそう言って、寝ることにした。



 俺と兄貴は、グレアス隊長に起こされた。

 予想通り、敵襲のようだ。

 ばっちり準備はできているぜ。


 俺は起きて戦況を見る。

 一番西側にいた1チームに弓が放たれると同時に、魔法がいくつか飛んできた。

 1チームも弓と魔法で応戦している。


 すぐに他のチームが加勢に入り、弓の数でこちらが圧倒する。

 と思った所に、北と南から人間とモンスターの混成部隊が襲い掛かってきた。

 俺は南側にいたのでそちらを見ると、★4ライジュウ、★4ヘルハウンド

 それ以外にも★3モンスターが10匹近く。全員しっかり首輪をしてやがる。

 そして50人近い人間が剣を持って襲い掛かってくる。

 南側だけでこれかよ。

 敵も戦力を集中させてきたな。チームがばらばらに捜索していたら返り討ちにあっていたな。


(ブレス)

「モラル」

 予めの計画通り、俺とグレアス隊長で味方の強化魔法をかける。

 近くにいる味方全員に恩恵があるはずだ。

 狼の遠吠えが聞こえてくる。全部隊に総攻撃に入る合図だ。

 起きた部隊から順次加勢に来てくれるだろう。


 敵に★3ダイアウルフの姿が見えた。

 精神集中を始めたな。


(サンダー)

 俺はダイアウルフの技を妨害する。

 ブレスやモラルの効果は1人だけなら大した効果ではないが、一度に数十人にかかるとなると、全体ではかなりの効果になる。それがかかるかどうかの差はでかい。

 敵全体の強化を妨害すれば、それだけ戦力差が開くからだ。

 見た限り、ダイアウルフは1匹。前回はもう1匹いたはず。北か。北は、他のチームに任せるしかない。


 近くの寝ていた衛兵は、まだ鎧を着ようとしている。少し時間がかかりそうだ。

 それまで何とか持ちこたえないといけないな。


(シャルロンは、敵のダイアウルフにストーンエッジ連射)

 ウィルの声だ。19チームは南側にいたな。俺の代わりにダイアウルフの強化技を妨害してくれるらしい。

 ウィルはこういう所によく気が付くのでいつも助かる。

 これで、俺は他のことができそうだ。


 アースドラゴンのドルガが、前に出て敵兵を薙ぎ払いまくっている。

 俺は、敵のモンスター部隊を1匹ずつ片づけるか。

 戦況を見渡すと、★4ライジュウに突破された。さらに★4ヘルハウンドが続いてくる。

 まずいな。鎧を装着中の兵達が一方的にやられるぞ。


(ジャンピングクロススラッシュ)

 俺は、魔法で準備しておいたストレングスとシャープを素早くかけると、本陣になだれ込もうとしていたヘルハウンドに俺の必殺技を放つ。

 横からの不意打ちにヘルハウンドは大打撃を受けた。同格の★4は一発では倒せないのは、前回と同じだ。

 ヘルハウンドが俺を見て、貯めに入った。ブラッドファングだろ。バレバレだ。

 俺は、ヘルハウンドが貯めている間に、さらにトリプルスラッシュで追い打ちをかける。

 これ以上は耐えられずにヘルハウンドは気絶した。

 とりあえず1匹。敵の★4の数が減るのは、でかいからな。


 ★4ライジュウが、19チームの鎧装着中だった衛兵に噛みついていた。

 ウィルが組み付いて、肉弾戦で引きはがそうとしている。


(ジャンピングクロススラッシュ)

 俺は、このままだと危ない衛兵の援護に、ライジュウの後ろから必殺技を放った。

 ライジュウの悲鳴が上がり、衛兵を噛みついていた口を離す。


(ウィル、後は頼むぞ。)

 俺はそう言うと、再度戦況を確認した。

 ★4の2匹を押さえたものの、多くの★3モンスターに突破されて、鎧なしで戦っている衛兵もいる。

 罠を張って、待ち構えてこれかよ。

 流石に全員に徹夜させるわけにはいかなかったからな。

 俺達が全員起きないうちに、ここまで攻め込んだ敵の判断の早さによるものか。

 だが、近くに隠しておいた援軍が到着し鎧を着終わった衛兵が次々と戦闘に加わってくると、形勢は変わってくる。

 北側はもっと苦戦しているかと思っていたが、別チームの援軍が既に到着していたらしく、敵を挟撃し始めていた。

 南側も援軍が近づいてくるのが見える。

 援軍が到着すれば、形勢逆転だな。

 4チームしかいないと思って夜襲したら実は22チームもいたのだから、敵もたまらないだろう。


 問題は敵の指揮官だ。

 何とか捕えたい。

 しかし、南側の敵にはそれらしい人間はいない。

 前回の敵の指揮官は魔術師だったな。となると、西にいる可能性が高いか。

 南から他の部隊と一緒に、ゼル隊とアリサ隊がやってくるのが見える。


(ゼル、アリサ、西からくる敵軍を攻撃に回ってくれ。)

 俺は、2つの隊に向かって叫ぶ。

 ゼル隊、アリサ隊は俺の声を聞いて、西からくる敵に向かってくれた。

 とりあえず、援軍が戦闘に加わったことで、数では圧倒したはずだ。


 俺は、ようやくフリーになれたので、自分にフライトの技をかける。

 いざとなった時に、敵の指揮官を追いかけるためだ。

 俺は、フライトで上空に飛び、全体の戦況を再度確認する。

 北も南もほぼ敵部隊を包囲している。

 これでは敵は撤退すら困難なはずだ。

 俺がいなくても問題はないな。


 西から弓矢や魔法を仕掛けていた部隊も、こちらの援軍に近接されて防戦一方だ。

 さらに、西に向かってこちらの援軍が向かっている。

 このままだと包囲するのも時間の問題だな。


 俺は、西の部隊の向こう側に飛んでいく。

 敵部隊も相当混乱しているようだ。

 さてと、今度は逃がさねえぜ。


 俺は、西の部隊の敵を見回す。

 いた。前回部隊を率いていた魔術師だ。

 だが、今回のボスじゃないな。前回の奴は隊長の1人に過ぎないってことか。

 隊長クラスが一回撤退させられた程度じゃ、全軍撤退はないよな。


 その時、何者かが俺の肩を掴む。

 振り向くと、兄貴だった。


(ガイン、お前までボルンガみたいなことするのか?)

 兄貴が言ってくる。ちょっとビクッとした。


(戦況は有利になったからな。

 俺がいなくても勝てるだろう。

 なら、何とかボスを捕えたい。)

 俺は答える。


(そういう時は、俺様も誘うもんだぜ。

 それじゃあ、技の強化をしっかりしていくか。)

 そう言うと、兄貴はニッと笑う。

 どうやら、兄貴も同じ事を考えていたらしい。

 俺達は、戦況を見ながら、自分に強化技をかけていく。

 ある程度かけ終わった所で、敵は撤退を始めたようだ。


 敵のボスは、魔術師には見えない。小さな弓と短剣を持っている。

 前回の魔術師のボスは手下の一隊長にすぎないようだ。


(それじゃあ、前回のボスから片付けるぜ。)

 俺はそう言うと、撤退を始めた部隊の上の空中から隊長の魔術師を不意打ちした。

 魔術師というのは体力があまりないらしい。

 俺の必殺技の一撃で気絶した。

 そして、俺は敵のボスを見る。


「貴様が囮で、後ろにいる奴が本命か?」

 敵のボスが言ってきた。

 こいつ、後ろに潜んだ兄貴に気付いてる。

 手強いぞ。何とか包囲が完成するまで時間を稼がないと。


(アースクエイク)

 敵ボス周辺が地震に見舞われる。

 姿を見せなくても声で分かる。

 ボルンガ、やるじゃねえか。


 しかし、敵ボスは地面が揺れ始める瞬間にフライトをかけると空中に浮かぶ。

(ボルンガ、お前にはこれ以上は無理だ。

 敵ボスに近づくなよ。)

 俺はそう言いつつ、敵ボスがボルンガを狙わないよう、上空に飛ぶ。


 その瞬間敵ボスは俺に魔法をかけてきた。

 だが、何も起こらない。

 どうせディスペルマジックだろ。

 あいにく俺にはディスペルガードがかかっているからな。

 敵ボスは近接攻撃の腕は立ちそうだが、技の駆け引きは大したことがなさそうだ。


 敵ボスは短剣を抜くと、俺に切りかかってきた。

 それと同時に兄貴が敵ボスに飛んでくる。

 敵の短剣の攻撃が俺に当たる。

 逆に俺の攻撃はかろうじて掠る程度だ。

 それも、兄貴の攻撃をかわした結果掠っただけという。


 俺は兄貴と2匹がかりで敵ボスに攻撃を続ける。

 しばらくすると、俺の体が重くなってきた。

 しまった、毒か。

 奴の短剣に毒が塗られていたに違いない。

 このままだとまずい。


 俺は、動けなくなった振りをする。

 実際、麻痺の毒が効いてきたようで、動きが鈍くなっている。

 敵ボスがチャンスとばかりに俺の首を狙ってきた。

 俺は、右腕で何とか防ごうとするが間に合わない。

 敵ボスは俺の首筋に短剣を突き立てる。


 なんて、させるわけないだろ。

 お前が短剣を突き立てたのは俺の左腕だ。

 左腕はもともと首の前で構えてたからちょっと動かしただけだ。

 俺は右腕で、俺の首を守るのではなく、敵ボスの腹にカウンターパンチを決める。

 すぐに短剣を手放さなかったのは失敗だったな。

 俺のパンチを受けて一瞬蹲った敵ボスの隙を兄貴が見逃すはずもなく、俺譲りの兄貴の必殺技が後ろから決まった。

 敵ボスは気絶して地面に落ちていく。

 意外とあっけなかったな。


(ガイン、大丈夫か?

 後は俺様が何とかするから、先に回復しろ。)

 兄貴に言われ、俺は短剣を抜くと、自分にクリアランスをかける。

 何回かかけると、麻痺も治まってきた。


 その間に兄貴が、逃げようとしている敵の大軍を薙ぎ払いまくっていた。

 敵兵は兄貴を恐れて、散り散りに逃げていこうとするが、西の軍もほぼ包囲されている。

 ボスも倒され、敵兵には絶望の顔が見える。


「ボスは倒した。

 死にたくなければ、武器を捨てて降伏しろ。」

 グレアス隊長の叫ぶ声が聞こえてくる。


「降伏した奴は殺さないように。」

 エイク隊長も叫んでいる。


 降伏すれば殺されないと分かったのか、残った敵兵は次々と武器を捨てて降伏した。

 だが、敵モンスター達は抵抗をやめない。

 降伏しても、いずれ、首輪に殺されると思っているのだろう。


 俺と兄貴は目で合図をして飛んでいく。


(降伏しておとなしくしたら、首輪の効果を消してやるぞ。)

 俺は、南側のモンスターが多くいるところへ飛んで叫ぶ。


(本当か?)

 一番近くにいた★4ライジュウが俺を見ると、一旦下がって攻撃してこなくなった。


(とりあえず、逃亡防止用機能だけは解除するからじっとしていろよ。)

 俺はそう言うと、ライジュウに近づく。

 ライジュウは不安そうにしながらも大人しくしている。

 首輪を見ると前回と同じ量産型だな。


(これなら、逃亡防止機能は解除できるな。)

 俺は、わざとそう言ってライジュウを安心させると、水晶に向けてディスペルマジックをかけた。

 当然1回では解除できない。

 2回目のディスペルマジックをかけて、溢れたエネルギーを受ける。

 よし、水晶の色が消えた。


(これで、当面発動しないようにはできた。

 ちゃんと解除するのは、町に戻ってからになるから大人しくしていろよ。)

 俺はライジュウにそう言うと、ライジュウは言われた通り大人しくしている。

 今なら逃げても大丈夫とは言わない。できれば味方に引き入れることを目論んでいるからだ。


 それを見て、まだ動いている★3モンスター達も大人しくなった。

 俺は1匹ずつディスペルマジックで首輪の機能の解除を繰り返していく。

 そして、倒れている★4ヘルハウンドにも同じことを繰り返した。


 その間に兄貴も北側のモンスターの首輪の解除を済ませたようだ。

 そして、グレアス隊長・エイク隊長も、味方の治療を進めると同時に、敵の生き残りの武装解除を進めていた。


 気絶している敵ボスだけは厳重に縛っておく。魔術師の隊長は既に死んでいたのでそのままだ。俺の必殺技の1発しか当てていないのだけどな。手加減とかする余裕はなかったし。

 戦闘が終わり、全員の無事を確認するものの、味方の衛兵に17人もの犠牲者を出してしまった。モンスター部隊と冒険者部隊は重傷者も多数いたものの全員無事だった。

 しかし、敵兵の生き残りはわずか53人。7割以上を虐殺してしまったことになる。

 エイク隊長が言うには、俺達が敵を完全に包囲して逃げられなかったために、敵が必死に抵抗して両軍の犠牲者を増やしてしまったらしい。

 ノリクの特殊部隊だから逃がさない方がいいかと思ったが、人間同士の戦争ではお互いの兵士の犠牲者を減らすためにあえて逃げ道を残したりするらしい。今後の課題だな。

 人間よりもモンスターの方が生命力が高いだけあって、敵モンスターは7割方が生きてはいた。

 その場で尋問することも考えたが、敵ボスが気が付いて首輪を発動させると危険だったので、17人の味方の遺体だけは運んで、そのままエルモンドの町に撤退する事になった。

 次の日の午前中には、無事エルモンドの町に帰還することができた。


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