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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
12/100

86捜索開始

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェルメキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

グレアス エルモンド衛兵隊総隊長19歳(人間)

ライオス エルモンド衛兵隊副隊長26歳(人間)

エイク  エルモンド冒険者部隊長37歳(人間)


夜になったが全部隊が撤収完了し、部隊が休息のため解散した後、俺達は再度オーウェル様の館で会議に入る。


「全員無事帰還できて何よりです。

 まずは、出てきた課題と対策を整理していきましょう。」

 エイク隊長が切り出す。


(まず、全体的な問題としては各チームが隊長の判断で独自に動きすぎて、統一的な行動ができていない事。もし、突出したチームが敵と遭遇すると各個撃破されるぜ。)

 兄貴が言う。


「ある程度の方向性は指揮部隊で指示を出す必要がありそうですね。」

 エイク隊長が答える。


「とは言え、指揮部隊で全部指示を出してしまったらチームを作った意味がないぜ。」

 グレアス隊長が言う。


(今日の目ぼしい情報は、19チームが発見した野営の跡だけだ。

 何か手掛かりがあるときは全体で指揮して、手掛かりが途絶えたら各隊長の判断で散開するってのはどうだ?)

 俺が言う。


(基本的にそれがいいな。

 ただ、明日、野営の跡に全部隊を集結はさせない方がいいと思うぜ。)

 兄貴が言う。


「野営の跡をどんな部隊が捜索しているか、敵はどこかでこちらの戦力を確認しているかもしれないというパワーのいつもの持論か?」

 グレアス隊長も兄貴の考えが分かってきたな。

 それで、兄貴と息が合っているんだ。


(指揮チーム含めた4~5チームを調査チームにして野営跡を調査、その間残りの部隊は近くに潜んで待機。

 野営跡の調査終了後、俺が他の部隊が集結している待機場所まで戻って残りのチームに全体指示を出すというのでどうだ?)

 俺が言う。


「それでは、この件はその方向で行きましょう。」

 エイク隊長のまとめで1つ目の方針が決まった。


「次に捜索日程についてです。

 今度の捜索は、ある程度の日数がかかると予想されますが、敵が既に撤退していて何も見つからない可能性もあります。

 その場合、何を目途に捜索の終了を決めますか?」

 ライオス副隊長が次の議題を出してきた。


「捜索範囲を決めましょうか。

 虱潰しの捜索は、エルモンドの町から歩いて2日の範囲。

 ただし、手掛かりがあった場合は手掛かりが消えるまで追跡すると言う基準でどうでしょうか?」

 エイク隊長が言う。


(それ以上離れると、向こうも仕掛けるのに行軍が大変だろうから、そんなところだな。

 だがよ、2日以内の範囲全てだとかなり広いが、それでいいんだな。)

 兄貴がエイク隊長に確認する。


「ちゃんと捜索するなら、その範囲は確実に押さえたいですので。

 チームを散開させれば、多大な日数はかからないですので。」

 エイク隊長は言うが、逆に言うと、敵が出た時に1チームだけで対応しないといけなくなる可能性が増えるということだ。


(前回襲ってきた敵部隊は人間20人、★4が1匹、★3が4匹だ。

 1チームだけだと心許ない。

 散開するなら少なくとも2チーム単位で移動させたい。)

 俺が言うが、


(前回の失敗を生かして敵はもっと大勢でいるかもな。)

 兄貴にそう言われると、その通りだ。


「明日野営の跡を捜索すれば、敵の数が見えてくるかもしれない。

 それから考えても遅くないんじゃねえのか。」

 グレアス隊長が言う。

 確かに、それが一番無難か。


「それだと、日程が読めなくなりますが。」

 ライオス副隊長が言う。


(それなら10日とか最大日程を決めて、日付が来たら一旦撤退して、さらに続けるか考えるってのはどうだ?)

 俺が言う。


「それがいいでしょうね。

 隊員からしても、いつまで続くのか分からないというのは不安でしょうし。」

 エイク隊長が言う。


「それじゃあ、捜索密度は臨機応変で、最大捜索日程は10日だな。

 野営はチームごとにするのか?」

 グレアス隊長のまとめでこの議題も決まり、次の議題に進む。


(密集はしない方がいいな。

 敵にこちらの戦力を把握される可能性があるぜ。)

 兄貴が言う。


「何かあったときに援護できるよう、ある程度の距離には保ちたいですね。

 付近に目立たないよう散開してチーム毎に野営でしょうか。」

 エイク隊長の意見に反対も出ず、これもすぐに決まる。


「今日は兵も疲れています。

 明日の午前中は休憩にして、出発は明日の午後か、明後日にできませんか?」

 ライオス副隊長が言ってくる。


「それがいいな。

 明日の午前中で、野営のための物資の調達しておくべきだろうし。」

 これもグレアス隊長の意見ですぐに決まる。


(野営で思ったんだけどよ。

 モンスター部隊の隊長は物資の管理とかしたことがないからな。

 チームメンバーの通訳担当に物資の管理を頼めねえか?)

 兄貴が言う。

 確かにそうだな。

 俺でも聞いたことない物資とかありそうだし。


(10日の行軍の場合、物資は何を持っていくんだ?)

 俺が聞く。


「全員分の食糧、ある程度は現地確保するとして水、

 人間には寝袋か毛布、雨が降ったとき用のマント、

 枝を切る用の斧を少々、それ以外にロープとか冒険にあれば便利な品を色々ですね。」

 エイク隊長が教えてくれる。


(モンスター用の食料も持っていくんだよな。

 図体のでかいモンスターは結構食うぞ。)

 俺が聞く。


「持って行きますよ。

 自分の食べる分くらいは運んでほしいですが。」

 エイク隊長が答える。


(運ぶのはいいんだが、明日の午前中だけですぐに用意できるのか?)


「衛兵隊に、自分の寝袋・毛布・マントなどを用意してもらえれば、何とかしますよ。

 モンスター用の食料はチームごとにメンバーの種族を見て準備しますね。」

 エイク隊長、助かるぜ。

 モンスター部隊はそう言ったことをしてきてないから、ここは素直に冒険者部隊に頼むことにした。冒険者部隊にはモンスター使いもいるから、モンスターの食糧事情はよく分かっているだろうし。


「必要に応じて貯蔵庫から出しますので、言ってくださいね。」

 ほとんど議論を聞いているだけとは言え、オーウェル様も物資の提供に好意的で助かる。


「全体的な話はこれくらいかと思いますが、チームメンバーについて何か意見・要望が出てますか?」

 エイク隊長が言う。


(衛兵隊の隊長で、モンスター部隊に、人間の衛兵と同じ役割しか指示しないという意見があったぜ。)

 俺が言う。


「聞いてるぜ。

 本人には注意しておいた。

 色々な能力を持つ混成部隊を作った意味がなくなるからな。」

 予め話をしておいたから、グレアス隊長はすぐに対応してくれたみたいだ。


「モンスター部隊の隊長と自分のマスターのモンスター使いの指示が違った場合にどうしたらいいのかと言う質問があった。」

 エイク隊長が言う。


(チームの意思統一するには、チームの隊長の意見に従うように言っておいてくれねえか。モンスター使いにはモンスターの隊長の指示に従うのに抵抗のある奴もいるかもしれないが、今回はその方針で行くと伝えておいてほしい。)

 兄貴が言う。


(モンスター部隊の隊長からは、モンスター使いが指示に従わないと言う報告は上がってきていないから、そこを伝えればメンバー変更の必要はないと思うぜ。)

 俺が補足する。


「後は、通訳が1人しかいないチームから、奇襲を受けた時指示を待つことなく反撃して問題ないのかと言う意見もあった。」

 エイク隊長が言う。各チームに配属できる通訳は1~2人だしな。


(敵襲などの緊急時は各メンバーが即対応するしかないだろ。

 隊長が通訳を通じて早急に指示を出して、体制を修正していくしかないな。

 人間隊長のモンスターも同じだろ。)

 兄貴が言う。


「確かにそうですね。そのあたりは話をしておきます。」

 エイク隊長がそう言って、この話は終わる。


「出てきた意見で検討しないといけないのはこれくらいか。

 とにかく、メンバーを変更しなくてよさそうなのは大きいな。」

 グレアス隊長が言う。

 そりゃあ、問題が出ないように、事前に相談してメンバーを配分したからな。



 今日の指揮部隊での議論は早く終わった。

 翌日の昼、再び捜索を開始する。


 野営跡を調査するのは、発見した第19チーム、冒険者隊長の第1チーム、衛兵部隊の第11チーム、そして指揮部隊の第22チームの計4チームだ。

 それ以外の部隊は、手前の尾根近辺にある程度散開して目立たないよう待機してもらった。


 4つのチームが野営跡近くまでやってくる。

 野営跡は開けた場所にあった。

 付近の森の木の陰から野営跡の様子を見ることができるだろう。

 1チームを風下の探索に充てるか。


(エイク隊長、周囲の森から敵が様子を見ている可能性が十分ある。

 1チームを風下の森近辺を探索させられないか。)

 俺が聞く。


「了解しました。

 第1チームは、野営跡から西・北西・南西の森に敵が潜んでいないか探索をお願いします。

 こちらの様子を見ることができる近くに、敵部隊がいないようなら合流しに戻ってきてください。」

 エイク隊長が第1チームに指示を出すと、1チームは風下の西の森へ入って行った。

 よし、これで風下からの不意打ちは防いだ。

 敵の匂いが流れてこないから、風上に敵がいないのは確実だ。

 その間に、野営跡を確認するか。


 俺たちが野営跡に到着すると、

 岩を円状に並べて薪で火をたいた跡が残っている。


(わざとらしいぜ。)

 兄貴が言う。

 確かに、隠密に行動する特殊部隊なら、ここまで目立つ野営はしないだろう。

 明らかに、後から俺たちに発見させて、捜索に来ることを想定していたとしか考えられない。


(各チームの狼の部隊に分かる匂いを確認してもらおう。

 特に、モンスターの種族が知りたい。

 グレアス隊長、エイク隊長、残った部隊長に俺が指示出してもいいか?)

 俺は両隊長に確認を取る。

 すぐに了解が取れたので、俺は残った隊長に、チームの狼に野営跡の匂いを、特に連れていたモンスターの種族を確認してもらうよう頼んだ。


 兄貴は周りの森を見回している。ここを遠くから確認できる場所に目星をつけているのだろう。兄貴とは付き合いも長くなったから、これくらいはすぐに分かるようになった。

 一応、他の部隊が潜んでいる尾根も対象範囲なんだよな。だがここへ来るときに通る可能性が高いから、敵としては潜伏しにくいだろうな。

 それ以外には、さらに奥の谷を越えた先の斜面のどこかか。ただ、そこだと俺たちの姿を見つけてもすぐには襲いに来れないんだよな。まずは、敵戦力を確認と言うのならありかもな。

 あとは、他の部隊が隠れている尾根のさらに上。低い山の山頂近く。そこならこの野営跡も含め周囲全体を見ることができるだろう。他の拠点も見渡せるかもしれない。俺なら山頂で待つな。尾根近辺に匂いは残さないようにして。


(俺様は、山頂が怪しいと思うぜ。)

 兄貴が言う。俺もそう思う。


(俺も山頂だな。

 1チームがまだ敵を見つけていない時点で、敵は今ここの西の森にはいないと思うぜ。

 第一、敵からすれば俺達がいつここに来るかどうかなんて分からないわけだし。

 敵のしたいことは、まず、俺達の戦力の確認だろうな。

 だとしたら、谷の向こうの斜面もあるが、他にも野営跡みたいなのがあるなら、尾根を上った山頂から、俺達がいつどこにきてもいいようにまとめて確認しているんじゃないのか?)

 俺は兄貴の考えを補足する。


「もし、敵が山頂にいるなら、我々4チームの姿をしっかり確認しているでしょうね。」

 エイク隊長が言う。

 それが俺たちの目論見だ。敵が4チーム程度なら勝てると襲い掛かってくるなら、残りのチームも含めて総攻撃ができるからだ。


「俺は、ちょっと考えにくいと思ってるぜ。

 山頂はここから東だ。遠いとは言っても風上だぜ。

 ここまで匂いが流れてくる可能性もあるんじゃないのか?

 俺は人間だからどれくらいの距離が分かるのか知らないけどよ。」

 グレアス隊長が言う。

 敵からすれば、風下の野営跡に敵の俺達が現れたことになる。

 とは言え、ここまで遠いと匂いが届かない可能性高いけどな。


(ここから山頂までは、流石に遠すぎるから匂いは分からないぜ。

 ある程度近づかないとな。

 仮に、敵が山頂にいて、今俺達を発見したとして、グレアス隊長が敵ならどう動く?)

 俺はグレアス隊長に聞いてみる。


「できるだけ、風下に回りたいな。

 一旦北方向から山を下りて、見つからないようにしながら大回りして風下に回り込みたいな。

 戦力的に勝てそうもないなら隠れるか撤退するが。」


(今日も午後からの出発だから、もうすぐ夕方だぞ。

 今夜はこの野営跡で待ち受けないか。

 他の部隊をすぐに駆け付けられる場所で目立たないように野営させるってのはどうだ?)

 兄貴が言う。


「我々4チームを囮にするわけですね。」

 エイク隊長が確認してくる。


(その通りだぜ。

 敵がこの近辺にいるなら、俺達がここに展開しているのを確認した可能性は高い。

 勝てそうな戦力なら、今夜襲撃に来てもおかしくないと思うぜ。)


「いいな。

 全チームで返り討ちか。

 問題は、実はいなかった、または、我々4チームとすら戦えない戦力しかなくて襲ってこなかった場合か。」

 グレアス隊長が言う。


(今夜夜襲がなければ、全軍撤退済みか、あるいは、囮の4つのチームとすら戦えない戦力しか残っていない可能性が高い。

 明日山頂を確認したうえで、チームを散開させた捜索がしやすくなるぜ。)

 俺が言う。


「なるほど、確かにそうだな。

 いずれにしても、今夜が楽しみだ。」


 そうこうしているうちに、1チームは何も発見できずに戻ってくる。

 野営跡の捜索は結構な人数の人間と狼族と虎族と竜族と鳥族の匂いが見つかった。

 結構数がいるな。それなら襲ってきてもおかしくなさそうだ。


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