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熊王伝  作者: ウル
モンスター部隊初出動
10/100

84捜索の準備

登場人物

ガイン  主人公・エルモンドモンスター部隊副大将(★4アルカス)

パワー  ガインの兄貴分でエルモンドモンスター部隊大将(★4モサ)

オーウェルメキロ家当主でエルモンド領主18歳(人間)

グレアス エルモンド衛兵隊総隊長19歳(人間)

ライオス エルモンド衛兵隊副隊長26歳(人間)

エイク  エルモンド冒険者部隊長37歳(人間)

ヴァディス モンスター部隊長(★4竜シルバードラゴン)

ホーク   モンスター部隊長(★4鳥シムルグ)

サラ    モンスター部隊長(★3虎ライガー)

ウィル   モンスター部隊長(★3熊グリズリー)

ゼル    モンスター部隊長(★3熊グリズリー)

アリサ   モンスター部隊長(★3熊グリズリー)

 俺達がオーウェル様の部屋に入ると、グレアス衛兵隊長とライオス副隊長、エイク冒険者部隊長とネフェル内政官、3人の副内政官が既に来ていた。


「今日集まってもらったのは、エルモンド周辺に展開しているノリクの特殊部隊の掃討について相談するためです。

 昨日、モンスター部隊がウル殿の姿を発見した場所を捜索したところ、敵の待ち伏せに会いました。

 撃退はしたものの、まだエルモンド近辺にノリクの部隊が残存している可能性が高いです。

 ノリクの特殊部隊の掃討をするため、方針の相談をさせてください。」

 オーウェル様が口火を切る。


「数は分かっているのか?」

 グレアス隊長が聞いてくる。


(昨日襲ってきたのは、人間が20人くらい、★4テンロウ1匹、★3ダイアウルフ2匹、★3キラーウルフ2匹だ。だが、それで終わりかは分からないぜ。)

 兄貴が答える。


「その数で居場所も分かっていれば楽勝ですが、問題は、捜索するために我らが分散せざるを得ないことでしょう。

 少数で動いている所を奇襲されないように、ある程度の人数の捜索チームを編成して捜索させたいですね。

 あとは、敵を発見したときにどうやって他のチームに伝えるかです。」

 ライオス副隊長が言う。


(チームに1匹ずつ狼のメンバーを入れるのはどうだ?

 遠吠えで知らせられるからな。)

 俺も意見を言う。


「それはいいですね。

 ただ、衛兵隊にはモンスターと意思疎通できるメンバーが少ないので、それができる冒険者部隊のメンバーも欲しいですね。」

 ライオス副隊長が言う。


「だったら、衛兵隊・冒険者部隊・モンスター部隊の混成チームを作ったらどうだ?

 全チームに連絡用の狼と通訳用の冒険者1人ずつを入れて、あとはバランスが取れた戦力になるように配分すればいいんじゃねえか。」

 グレアス隊長が言う。


「そんな初めての運用をいきなり実戦で行うのですか?」

 エイク冒険者部隊長が意見を言う。

 まあ、確かにその危惧は分からないでもないな。


「冒険者部隊もバランスの取れたパーティー組んでいるだろ。

 連絡用の狼と通訳を入れたパーティーを作ると考えりゃ、難しい話じゃないと思うぜ。」

 グレアス隊長が言う。


「チームのリーダーはどうするのですか?」

 エイク隊長が聞いてくる。


「衛兵隊は半分の隊長がドンロンに行っているからな。

 チーム数を決めてから考えた方がいいかもな。」

 グレアス隊長が言う。


(モンスター部隊の狼族は★1を入れても全部で13匹だ。

 森の中を分散して捜索するには、全部で13チームは少なくないか?)

 兄貴が言う。


(他のモンスターでも吠え声は出せるが、狼族ほど遠くまでは知らせることはできないからな。

 冒険者部隊のモンスター使いの中に狼族はいないのか?

 モンスター使いと狼のコンビで両方をこなせるわけだし。)

 俺がエイク隊長に聞く。


「冒険者部隊の中の狼は全部で9匹ですが、マスターは8人です。

 1人で2匹連れている者が1人いますので。」

 エイク隊長が答える。


「とりあえず、狼が22匹いるなら22チームは作れますね。

 これくらいのチーム数いればいいのではないでしょうか。」

 ライオス副隊長が言う。


 確かにそうだな。

 ★1や指導中のヴァディス隊メンバーを除くとモンスター部隊は1チームあたり、狼を入れて5匹くらいか。

 ★1ヤングウルフだけは全員出てもらうとして。

 とは言え、エイク隊長の危惧通り、問題は混成部隊が上手く機能するかどうかだ。


「冒険者部隊には、モンスター使い14名を含め、モンスターと意思疎通できるメンバーが22人以上いますので、全チームで意思疎通はできるかと思います。

 また、冒険者部隊には10のパーティーに夫々リーダーがいますので、10チームまでは指揮できると思いますが、

 衛兵隊もモンスター部隊も指揮に従ってくれるでしょうか?」

 エイク隊長が言う。


(モンスター部隊は、チームのリーダーの指示に従うよう言っておく。)

 兄貴が言う。


「衛兵隊も一緒ですね。」

 ライオス副隊長が言う。


「それなら大丈夫でしょうか。

 残りのチームは衛兵隊で指揮してもらえますか?」

 エイク隊長が言う。

 モンスター部隊が指揮することは考えてないのか?


「今は、隊長は6人ですね。私とグレアス隊長を入れても8人までです。」

 ライオス副隊長が言う。


(モンスター部隊は指揮できる奴が5匹はいるぜ。俺様とガインを入れれば7匹だ。)

 兄貴が言う。


(隊長は6匹いるんじゃ?)

 俺が言うが、


(ヴァディス隊長は★1の面倒を見ないといけないから無理だろ。

 何かあったときの留守の調整もしてもらいたいしな。)

 と兄貴に言われて納得する。アリサを外したのかと思ってしまった。


「それなら、指揮をする人数は足りそうですね。」

 ライオス副隊長が言うが、


「モンスター部隊の隊長に人間を率いることができるのでしょうか?」

 エイク隊長が聞いてくる。

 エイク隊長はモンスター部隊とは今まで関わってないから、俺達の実力がどの程度なのか知らなんだな。

 寧ろ昨日一緒に行動した冒険者達の方が俺達の実力を知っているだろう。


「大丈夫だって。

 モンスターの部隊長のチームに入ったメンバーに、ちゃんと話しておいてくれよ。」

 グレアス隊長がフォローしてくれた。

 メキロ家じゃなければ絶対出てこない台詞だよな。

 俺はモンスターの部隊長が人間を率いることができるくらいまでになったんだとちょっと感激した。

 エルモンドに来てよかった。


「あと、全体の総指揮はどうしますか?」

 ライオス副隊長が言ってくる。


(総指揮用のチームが要るな。

 俺様とグレアス隊長とエイク隊長が入って、

 それぞれの隊長の報告を1か所に集めるのがいいと思うぜ。)

 兄貴もモンスター部隊が人間と一緒に行動するのが当たり前と言わんばかりに意見を言ってるな。


「そうだな。

 それじゃあ、1チームは責任者が集まるチーム、

 衛兵部隊長が率いる6チームは俺の指揮下に入り、

 モンスター部隊長が率いる5チームはパワーの指揮下、

 冒険者部隊長が率いる10チームはエイク殿の指揮下に入るということでどうだ?

 この配分ならライオスとガインはフリーになるぜ。」

 グレアス隊長が言う。


(いいな。

 ガインがいれば、各部隊との連絡調整もスムーズにいくし、

 各部隊の責任者が集まっていれば、最終的な撤収判断もできそうだしな。)

 兄貴とグレアス隊長の息が合って、どんどん決まっていく。


「分かりました。その方針で行きましょう。

 冒険者部隊は各チーム2名、一部のチームだけ3名になります。」

 エイク隊長も、兄貴とグレアス隊長の意気投合ぶりを見て折れてくれたか。


(モンスター部隊は、狼族を入れて各チーム4~5匹だ。

 基本★2以上だが、狼族だけは★1も入る。)

 俺が人数を答える。


「衛兵部隊は町の警備も必要ですので、各チーム30人くらいですね。」

 ライオス副隊長が答える。


「それじゃあ、自分の部隊の配分調整してくるか。

 初めてのことで時間かかるかもしれないから、出発は昼からでどうだ?」

 グレアス隊長が言う。


(そうだな。

 それじゃあ、昼を食べてから西門前に集合でいいか?)

 兄貴が言う。


「了解しました。

 それでお願いします。

 ですが、初めての試みですので、今日はあまり遠方まで行かず、混合部隊の指揮に関して、問題点の洗い出しをした方がいいかと思うのですが。」

 エイク隊長が言う。

 グレアス隊長も兄貴も思いついたらそのまま突っ走るタイプだから、エイク隊長みたいな冷静な意見もいるよな。


(確かにそうだな。

 初めての試みで敵を前にして問題が起きたら洒落にならない。

 本格的に掃討する時は、野営をしながら数日はかけるんだろ?

 その準備も兼ねて、今日は試行的な捜索にして問題点を洗い出し、本格的な捜索は今日の試行で出てきた問題点を解消してからの方がいいと思うぜ。)

 俺も、エイク隊長側の意見を言う。


「そうなんですよ。

 ガイン殿もそう思いますよね。」

 兄貴達に押されていたエイク隊長が、俺の意見を聞いて大きく同意してくれた。


(確かにそうだな。

 昼から出るのは予定通りとして、今日は指揮・統率の訓練と課題の洗い出しをするか。)

 それを聞いて兄貴が折れてくれた。


「まあ、そうだな。

 今日はそうしておくか。」

 グレアス隊長も折れてくれた。


「方針が決まったようですね。

 それでは、皆さんのご武運をお祈りします。」

 方針が決まったのを確認すると、オーウェル様の締めで会議が終わった。


 会議の後、兄貴と配分について相談する。


(まずはモンスター部隊の狼13匹の配分だな。

 冒険者部隊10チームのうちの1チーム、

 衛兵部隊6チーム、

 モンスター部隊5チーム、

 総指揮1チームの配分でいいよな?)

 俺が聞く。


(冒険者部隊の狼もまずは冒険者部隊のチームを優先で入れるだろ。

 それでいいと思うぜ。)

 兄貴も同じ考えなので配分を決める。


(★3ダイアウルフのクーと★2ウルフのリコは、安心できるから他に行かせたい。

 ★1の6匹はなるべくモンスター部隊に入れておきたいな。)

 俺が案を言うと、


(★1の6匹は、モンスター部隊と総指揮に入れるか。

 モンスター部隊の隊長が面倒を見ることができるからな。)

 兄貴の了解が得られたので、ここは決定だな。


(冒険者部隊にはクーを行かせるか。

 一番経験があるだろうし。

 リコ含めた★2のメンバーは衛兵部隊に割り振るか。)


(よし、それでいくぜ。)

 ここも兄貴の了解で決まった。


(次にメンバーの配分だが、飛行部隊をばらけさせた方がいいんじゃねえか?

 空中からの偵察ができるわけだし。)

 俺が言うが、


(空を飛べるメンバーの数が足りないぜ。)

 兄貴が言う。

 確かに飛行メンバーはホーク隊長を入れても全部で19匹。22チームには足りない。


(足りない分は、冒険者部隊のモンスター使いに頼めないか?)

 俺が案を言うと、


(そうだな。方向が決まったら頼みに行くか。

 だがその前に、それ以外のメンバーの配分を決めるぜ。)

 兄貴も同意してくれたので、その方向で検討していく。


(ホーク隊はばらけることになるから、サラ隊・ウィル隊・ゼル隊・アリサ隊の各隊長に5~6のチームに分けてもらっちゃダメか?)

 俺が聞くと、


(そうだな。指揮用チームは、狼と飛行モンスターが1匹ずついればいいよな。

 サラ隊・ウィル隊・ゼル隊・アリサ隊に隊を5つに分けてもらおう。

 残り2チームのうちホーク隊長にホーク隊の残りのメンバーを率いてもらい、

 最後の指揮チームは狼と飛行モンスターが1匹ずついればいいからな。

 あと、他の部隊に迷惑かけないためにも、問題児は自分の部隊においてもらうか。)

 兄貴がその方向でまとめてくれた。


(それじゃあ、まず、隊長に話をしてメンバーの配分をしてもらわないといけないな。)

 俺は、兄貴との相談が終わった後、各隊長に作戦について話すため、ヴァディス隊以外の隊長に集まってもらった。


(訓練中に集まってもらったのは、今日の午後からエルモンド近辺にいるノリクの特殊部隊の掃討をするからだ。

 まあ、今日は実質訓練と統率の問題点の洗い出しの予定だが。

 衛兵隊・冒険者部隊との混成チームを22作り、エルモンド北の森を捜索する。

 偵察と連絡用にホーク隊のメンバーと狼族のメンバーはばらけて入ることになる。

 それ以外のメンバーをサラ隊・ウィル隊・ゼル隊・アリサ隊は5つに分けてくれ。

 分けた部隊が混成チーム1つの中のモンスター部隊のメンバーになる。

 あと、隊長達には人間の冒険者部隊と衛兵部隊を含めた1つのチームを率いてもらうから頼むぜ。

 質問はあるか?)

 兄貴が言う。


(人間が俺達モンスター部隊の隊長の指示に従ってくれるのでしょうか?)

 ウィルが聞いてくる。

 ウィルは心配性な所があるからな。


(そこは頼んできたら大丈夫だ。

 衛兵隊のグレアス隊長は、そんなの当たり前みたいに言っていたぞ。)

 俺はウィルを安心させられるよう、調整した話をする。


(俺がいないチームに入ったメンバーは、衛兵隊の隊長か冒険者部隊の隊長の指示に従うのですよね。

 チームに通訳ができるメンバーはいるのでしょうか?)

 ウィルはこういう所によく気がつくな。


(全てのチームにモンスターと意思疎通ができる冒険者部隊のメンバーが最低1人はいるから大丈夫だ。

 ただ、メンバーにチームの隊長の指示に従うよう言っておいてくれ。)

 これも調整済みだから、俺がこう言って危惧を払拭した。


(ホーク隊はメンバーがばらけるんだよな。

 俺は人間だけを率いるのか?)

 ホーク隊長が聞いてくる。


(そこは、冒険者部隊の飛行モンスターの数次第になる。

 あとで調整をしてくるから保留させてくれ。

 ボルンガみたいな問題児はできれば、ホーク隊長の目の届くところに置いておきたいしな。)

 兄貴が答える。


(捜索範囲の配分とかはどうするの?)

 サラ隊長が聞いてきた。


(基本は手分けして北の森を捜索する。

 捜索の進行方向は隊長の判断に任せるが、1チームだけ突出しないように気を付けてくれ。)

 ここは詳細まで詰めてないので、これくらいしか答えられない。


(何かあったときの連絡手段はどうするんだ?)

 今度はゼルが聞いてきた。ゼルも考えるようになったな。


(全チームに狼族が1匹ずつ配属される。

 敵襲があれば遠吠えで近くの部隊に知らせてくれ。

 それ以外に報告事項があれば、俺とパワー大将がいる指揮用のチームに連絡を入れてくれ。)


(どうやって指揮用のチームに連絡を入れるの。

 と言うより、指揮用のチームはどこにいるの?)

 アリサが聞いてくる。


(捜索チームのなるべく中央近くを移動する予定だ。

 確かに、具体的な連絡手段を決めておいた方がいいな。

 衛兵部隊・冒険者部隊と調整して、捜索開始前に伝達する。)

 アリサは未調整部分まで質問してきた。考えるようになったな。


(あと、指揮用のチームにモンスターを割り当てなくていいの?)

 アリサがさらに聞いてくる。


(狼1匹と連絡用の飛行部隊だけでいいぜ。)

 これは、兄貴が答えてくれた。


(他に質問はないか?)

 俺は確認するが、ないようなので各隊長に部隊の配分について考えてもらうことにした。


 その間に、俺は兄貴と未調整分を片付けに行く。

 冒険者部隊の飛行モンスターの数を確認しなかったのはミスったな。

 各チームに1匹ずつ飛行モンスターを配分する話をしなかったからな。

 あとは、指揮用チームの移動と連絡手段だ。こちらは衛兵隊とも調整がいるな。


 まずは、冒険者ギルドに行く。

 エイク隊長が忙しく指示している。


(エイク隊長、忙しいところ悪いが2つだけ確認させてくれ。)

 兄貴が言う。


「何でしょう?」


(まず、冒険者部隊の飛行モンスターの数を教えてくれ。

 各チームに1匹は空から偵察できる奴がいるだろうからな。)


「竜族込みなら11匹います。モンスター部隊の方は?」


(こちらは19匹いる。いや、ホーク隊長除くから18匹だ。

 こちらのモンスターは衛兵隊とモンスター部隊が率いる12チームに充てるから、冒険者部隊が率いる10チームは任せたい。

 元々飛行部隊しかいない部隊は1チームに数匹入れたいしな。)


「分かりました。10チームすべてに1羽以上の飛行モンスターを配分しておきましょう。

 2つ目は何でしょうか?」


(指揮チームがいつどこにいて、どうやって連絡を取ったらいいか隊員から質問が出た。

 後で、出発前にグレアス隊長も入れて相談したい。)


「これは今すぐでなくいてもいいですね。

 出発前に少し早めに行きますので、そこで相談しましょう。」

 エイク隊長にそれだけ確認をし、至急の用事は終わった。


(邪魔したな。

 それじゃあ後で。)

 兄貴はそう言って、冒険者ギルドを後にする。


(実際問題、指揮チームの場所が分からないと報告もままならないな。)

 衛兵詰所に向かいながら俺は兄貴に相談する。


(俺様とガインが交代で指揮部隊の真上に待機して、飛行部隊から見えるようにするか。)

 兄貴は言うが、敵からも目立ちすぎるだろ。


(人間の戦争でも指揮部隊への連絡調整はしていた筈だろ。

 そのやり方を聞いて考えるのはどうだ?)

 俺が言う。


(それじゃあ、グレアス隊長に聞くか。)

 俺達が衛兵詰所に着くと、隊長への説明は終わって、各隊長が隊員の配分を行っていた。

 これなら今からでも話ができそうだな。


(グレアス隊長に聞きたいことがあるんだがいいか?)

 兄貴が隊長達の様子を見ていたグレアス隊長に聞く。


「パワー、どうした?」


(人間の戦争で、指揮部隊はどうやって分かるようにしていたんだ?

 報告をするのに、何を目印に向かえばいいのか分からないという質問が出た。)


「昔の記録だけどな、指揮部隊には遠くからでも見えるように旗を立てていたらしい。

 今、ライオスがネフェルさんのところで準備をしてもらってるぜ。

 急の話だから、今回だけの簡易的なものだけどな。」

 衛兵隊でも同じ質問が出たんだな。


(それなら安心だな。

 全チームに飛行部隊を1匹ずつ入れることをエイク隊長と調整したから、旗を目指して報告に来てもらえばいいな。)

 兄貴が答える。

 あっさり片付いたな。

 とは言え、今までに見えた課題を片付けただけだ。実際に動き出すとまだまだ課題が出そうな気がする。


「あと、ライオスはエルモンドに残って、連絡調整してもらうことにしたぜ。」

 そりゃ、エルモンドの町の指揮もいるだろうしな。


(それじゃあ、昼に来るぜ。)

 俺達はそう言って、衛兵詰所を後にする。


(ホーク隊19匹中、11匹をホーク隊長以外の部隊に割り振ると、ホーク隊には隊長を入れて8匹が残るな。)

 帰りながら、俺が言う。


(狼も入るんだから9匹だろ。ホーク隊だけ多くなりすぎるな。モンスターのメンバーの少ないチームに少し配分してもらうか。)


(それがいいな。)

 俺達は部隊に戻ってホーク隊長を呼ぶと、調整結果を伝えて部隊の配分をしてもらった。

 また、ヴァディス隊長に狼族のメンバーを全員出してもらうことも含め、留守を頼んでおいた。


 それじゃあ、昼までに部隊の配分を見てみるか。

 ヴァディス隊以外全員と狼族全員を呼んで、チームの配分を確認する。

 22のチームができていた。

 とは言っても、指揮用のチームは狼と鳥が1匹ずつだけだ。


(今日、チームを分けてもらったのは、エルモンドの北にいるノリクの特殊部隊の掃討をするために衛兵隊・冒険者部隊・モンスター部隊の混成チームを作ることになったからだ。

 10のチームは冒険者部隊の隊長が、6のチームは衛兵隊の隊長が、5のチームはモンスター部隊の隊長が率いることになる。

 自分の所属するチームの隊長の指示に従ってくれ。

 初めての試みだから、今日の昼から、実践訓練をする。と言っても森の入り口付近で実際に捜索をするぞ。

 何か疑問や問題に気づいたら、自分の入るチームの隊長に報告してくれ。)

 隊員にはまだ何をするのか話していなかったので、ここで兄貴が説明をする。

 その後、兄貴と俺は、隊長が決めたメンバー配分を確認して調整をしていった。特に狼族と鳥族については1匹ずつ確認し、元の隊長と相談しながらどこのチームに配属するかを決めていった。


(昼の餌を食べたら集合するように。

 それでは、解散。)

 兄貴の話が終わり、部隊は一旦解散する。


 そして、昼過ぎ。

 22の混成チームがエルモンドの西門の外に集結した。



「これから、エルモンド近くで活動しているノリク特殊部隊の掃討を始めるぜ。

 今日は、訓練と問題点の洗い出しのため、森の入り口近辺を捜索する。

 その結果を踏まえて、森の中を数日かけて本格的に捜索するから頼むぞ。

 各チームに狼のメンバーが1匹はいるはずだ。敵襲を受けたら遠吠えで近くのチームに知らせてくれ。

 また、各チームには空を飛べるモンスターが1羽はいるから、2時間に1回俺やエイク隊長・パワー隊長がいる指揮チームに状況を報告してくれ。指揮チームは後ろにある軍用旗を持って移動するから、これを目印にしてくれ。」

 グレアス隊長が全体説明をする。


(あと、もし敵が現れて、敵の中で首輪をしているモンスターを倒すか捕らえるかした場合は、すぐに指揮部隊まで報告してくれ。放っておくと、ノリクの手下に処分される。支配の首輪の効果を解除しないといけないからな。)

 兄貴が支配の首輪関係の補足をする。


「その他、相談事項・問題事項があったときもすぐに指揮部隊まで報告をしてください。」

 エイク隊長が兄貴の話を通訳した上で補足する。


 こうして22チーム混成部隊による、エルモンド北部の森の掃討作戦が始まった。

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