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アストは追い出して飲み会をする

 アストの部屋で、アストを追い出して二人で飲み始めた。

帰りのコンビニで、かご一杯の酒とつまみを買い込んだ。

店員はつまらなそうな顔をしていたから、たぶん、これからわたし達が合コンの二次会でもするんだと思ったに違い無い。二人で飲むには多すぎる量だった。

アストは気を利かせて出て行った。

「いいのかな、町田くんを追い出して」

友美が言うと、わたしは声を立てて笑った。わたし達は床に酒とつまみを並べて向かい合っていた。

「いいのよ。ああ見えても気が利くんだから。それにね、彼、付き合っている子がいるのよ」

友美は目を丸くした。

「え?そうなの。奈々と付き合っているんじゃないの?」

わたしは首を振った。

「冬に二週間付き合っただけよ。もっと短かったかもしれない」

「それだけ?でも町田君、奈々に気があるように見えたけど」

わたしは頷いた。

「彼も、そんなこと言っていたわ。でも、だからって付き合っている人は別にいるの、今はね」

「そうなのかなあ。そんなふうには見えなかったけど」

ワインをグラスにつぎながら、友美は言った。

「うん。でも確かよ。ああ見えてもね、結構もててたりするから」

わたしは、缶チューハイを缶のまま飲んでいた。

「確かめたわけじゃないんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、付き合っていないんじゃないの?」

「そうかなあ。だって昨日も夜中に電話していたわよ」

「そうだったわね。でも彼女かなあ」

わたしは缶チューハイを飲み干して立ち上がった。

「どっちでもいいわよ。わたしはアストと付き合う気、無いんだから」

そういうと空き缶をゴミ袋に入れて新しい缶を冷蔵庫から取り出した。

「そう?奈々、町田君とお似合いなのに」

ワインに口をつけるようにして少しづつ飲んでいた。二人とも、つまみに買ってきたポテチには、あまり手を出していなかった。

「やめてよね。それに、わたしはここに住むわけじゃないし。遠距離なんてガラじゃないもの」

友美は、それには頷いた。

「そうよね。奈々なら何処にいても、すぐに新しい彼氏作れるわよね。私と違って」

「あら?そうかしら。友美ってゼミで結構な人気あったのに」

「そうなの?初めて聞いたわよ。奈々こそ、みんな狙っていたのよ、彼氏がいるって言うまでは」

わたしはプルタブを引き、そして友美の前に座り直した。

「そう言えば、友美、彼とはどうなったの?」

「彼?」

「ほら、ゼミも一緒に来てたじゃない?」

友美は弱々しく微笑んだ。

「ああ、大紀ね。振られたの」

「え?いつ?」

「奈々が来なくなってすぐかな。だから二年くらい前」

缶チューハイを一気に煽った。全然、酔った気がしなかった。

「そっか。大変だったのね。」

「うん。落ちこんじゃって。大紀ね、他に好きな子が出来たから、とか言って、前触れも無く電話してきて。突然だったわ」

「わたしなら、飲みまくっていたでしょうね」

「わたし、そんなに、お酒強くないから。死んでやろうかって思ったわよ」

わたしは頷いた。

「じゃあ、それでカウンセラーに相談に行っていたの?」

「うん。それだけじゃなかったけどね。卒業はしたかったし、バランスを取りたかったんだと思う」

「心のバランス?」

「そう。浦上先生にはお世話になったわ」

わたしは、しばらく考えていた。

「浦上先生とはどんな話をしたの?」

「大紀の話もしたし家族の話もしたわ。小さい時の話とかね。それで、わたしは、小さい頃に父親からイタズラをされていたって思い出したの」

「退行催眠、かしら」

「あ、それそれ」

なるほど。わたしは頷いた。

「いたずらって、どんな感じの?」

「私、ほとんど覚えて無かったんだけど、浦上先生はね、私には過去に何かトラウマがあって、それが原因でうまく男の人とやっていけないじゃないかって。だから、何度か退行催眠をしたの。それでね、父親が小さい頃に夜中に来た事とか、それを思い出したの」

「夜中に来たの?で、触られたりってこと?」

「うん。怖かったわ。思い出した時、私は泣いていたの」

「そっか」

わたしは、ため息をついた。彼女は信じているようだったけれど、それが真実だったのかどうかは分からない。退行催眠っていうのは前世までも思い出すらしいから。UFOに連れ去られた事とか。

「奈々、私ね、五才の頃に父親にレイプされたの」

友美はにっこりして言った。ワインを勢い良く飲みこんだ。わたしは缶チューハイを床に置いた。

「お母さんは、どうしていたの?」

友美は首を振った。

「それが思い出せなかったのよ。たぶん、見て見ぬ振りをしたんだと思う」

「そっか。それで家には帰りたく無いって言ったのね」

友美は頷いた。

「それで、カウンセリングはどうなったの?」

友美は、空になったグラスに次を注いだ。

「やめたの。夏過ぎ頃から行き始めたんだけど、卒論が忙しくなってきたし、その後は『トランステクノロジー』に通い始めていたから」

「じゃあ、カウンセリングは中途半端だったのね?」

「うん。でも、トランスで立ち直ったの。だからね、奈々もやってみるといいと思うわ」

わたしは首を振った。

「効果出ないわよ、わたし」

「どうして?どんなことをするか、知らないでしょ?」

「知っているわよ。一週間いたし」

「あれは、トランスのベーシックとは違うものよ」

「うん。でも、そのベーシックってのも、実は知っているわけ、内容を」

友美は驚いて、わたしを見た。

「やったことあるの?」

「無いわ。でも、そういうの、いくら口止めしても情報は流れるのよね。それに、セミナーって、だいたい元の会社の卒業生がやっていたりするから」

「誰かがグランドルールを破ったのね。誰に聞いたの?」

わたしは、友美の前で指を振った。

「誰か、は問題じゃないの。例えセミナーの人が何と言おうとね。それに、わたしはインターネットを使って調べたから。ネット上の名前しか知らないわ」

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