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御告げの子

 ―――姫様が、最後、西を見られました。我々は西の地、何処かに生まれ変わられておられる姫様を、迎えにいかなくてはなりません。


 サリの街から旅立ちの鐘に送られ、迎えの神官達が西へと進む。


 七月七夜七才の日を迎えた少女を探すために………



 ――――今日の昼からの畑の手伝いは、二人共に抜けてもいい、と、家族に許してもらえた、ルスとエルビス。


 小さな手籠てかごをそれぞれ持ち、イチゴを摘みに、茂みへと来ていた。


 青い空の下、笑いながら、食べながら、話ながら、ふざけながら、イチゴを摘んで籠へといれる。


 足元に咲いている赤い花、花の部分だけ摘み取り、がくを外し根元を吸う、微かに甘い花の蜜が、口の中に広がる。


 青い蝶々がふわり、と二人の側を戯れる様に、通りすぎる。


 捕まえようか、と追いかけるエルビス、無理でしょう、とその背中に声をかけるルス、


 空には小鳥が歌いながら、飛んで行く。キラキラと眩い光の太陽。爽やかに抜ける風、穏やかな午後。


 サリの姫様からの贈り物、幼なじみの背を見ながらルスはそう思った。戦に捲き込まれる事もなく、幸せな、静かな時を与えてくれるのは、


 サリの姫様が神様に、全てを捧げて護って下さってるから……


 幼い時から家族と共に、祈祷の為に時折訪れる、町の小さな神殿、そこで年老いた神官からそう教えてもらった。


 カザから歩いて、七日かかるというサリの街、その高い塔に、姫様はお住まいになられ日々、祈りを捧げられてると聞いている。


 やがて、蝶々を追いかけて行った、エルビスが戻って来ると、町から誰か登って来るよ、見に行こうよ、と誘って来た。


 嘘でしょう?とルスは思う、家々が建ち並ぶ集落ならともかく、山の畑に来るのは、作業する集落の人達だけなのだから、


 見晴らしのいい、山の端へと来た。カザの町が一望出きる。


 エルビスと並んで見下ろす先には、年老いた神官を先頭に、見知らぬ旅人達が、確かに山の畑目指して、登って来ていた。


 誰だろう、こんな所まで、神官様も一緒だね、とエルビスが怪訝そうに話してくる。


 その時、サリの街の方角から、鋭いコンドルの鳴き声が、大空に響いた気がした。


 二人は空を見上げ、辺りを伺う、何か冷たく怖い気配を感じたから……


 ラトスの山頂高く舞う、神の使者と呼ばれる大鳥


 カザの町では見かける事はない。彼らにとって、サリの姫様と同様にお話の世界の筈だった。


 何だろうね。所幼なじみがルスに話してくる。それに対して、彼女は答える事が出来ない。


………胸の鼓動が、痛いほど高まってくる。彼の声も、空を駆ける小鳥の声も、吹き抜ける風の音も、何も聞こえない。何も、


 目を大きく見開き、その場にただ、立ち尽くす。


 ………何故だか少女はわかった。


 ………あの人達は、自分を迎えに来たということが

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