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二話

「うぉぉ‼︎ スッゲェな‼︎ なんだここ⁉︎」


 目の前に広がる街並みはまさに異世界と呼ぶべきものだろう。

 テンプレ的なローマ風の風景、隣を走り去って行った馬車、カラフルな髪の毛の色。

 うん、異世界だ、ここは正真正銘の異世界だ。


「さ、こっちに来てくれ」


「おう」


 高まる興奮を抑えて少女に着いて行くこと約数十分、とある建物の前で立ち止まった。

 見た目は教会のような……でもどこか違うような……。

 まあ教会でいいだろう。


「ここが今の本拠地さ。以前はもっと大きな建物だったんだけど乗っ取られてちゃって……」


「あー、いや、気にするな。もう一度取り返せば良いさ」


 急に涙目になりやがったぞこの少女。

 心臓に悪いわ! 危うく惚れそうになるところだったわ!


「さ、入ってくれ」


 大きな扉が音を立てて開かれた。

 まず目に飛び込んできたのが立派なステンドグラスだ。……やっぱりここ教会じゃねーか。

 案の定ステンドグラスの手前にでっかい像が鎮座している。

 その他にも、この建物の何もかもが異色の空気を放っていて、神聖な何かをヒシヒシと感じざるを得ない。


「おー、立派だなぁー」


 内観は完全に教会だ。

 やっぱこの世界にもキリスト教的な宗教があるんだろうな。

 ……宗教の勧誘じゃないよね?


「そこの部屋に入って待っててくれ。仲間を連れてくる」


 彼女が指を指した場所には木製の扉があった。

 ドアノブに手を掛けて遠慮なく扉を開けると、そこにはソファと机があった。


「応接室みたいだ……」


 壁には訳の分からん文字が書かれた旗が飾られてある。


「ふーん……ぜんっぜん読めねぇ」


 なんだよこれ、絶対英語よりも難しいぞ。

 ふと傍を見ると腰あたりまである棚の上に十字架が置いていた。


「どこの世界も十字架を神聖なものとして扱ってる宗教はあるんだなー」


 ま、俺は無宗教だから関係ないけどな。


「失礼するよ。さっき言っていた仲間を連れてきた」


 少女の後ろを見ると確かに人影がある。


「お、そうか」


「さて、そこのソファに座ってくれ」


 うお‼︎ ソファがフカフカだ‼︎


「何に感動しているの分からないが、紹介するよ。彼女はアリアだ」


「は、初めまして。アリアです。この教会の管理をしています」


 うぉぉぉおおおおぉぉぉ‼︎ スッゲェェェ‼︎ リアルシスターだぁぁぁぁぁあああああ‼︎

 しかもおっとり系の巨乳お姉さんだぁぁあぁあぁぁぁ‼︎

 やっべぇ、ヤッベェよ、異世界。

 こんなフィクションみたいな人が実在するなんて……‼︎


「初めまして。俺は……」


 えっとー、どの名前で自己紹介するべきなんだ?

 初めまして魔王です、で良いのか?

 いや年上のシスターさん相手にそれはマズイよなぁ……。


「なぁ、俺の名前ってなんなんだ?」


「ああ、そのこと「もぉぉぉ‼︎ 遅いわよアンタたち‼︎」


 ええい! セリフにセリフを重ねるな‼︎


「久し振りね! アシュ!」


 騒がしく入ってきた赤髪の少女……一体何人少女居るんだよ‼︎

 俺に向かってアシュ、今アシュと言ったな。


「俺の名前はアシュなのか?」


「それはあだ名だよ。君の前世での本名はアルシャ・ノーグだ」


「ふーん。なんか変な気分だ。今の名前じゃ駄目なのか?」


「まぁ駄目ではないが、私はどっちでも良いぞ?」


「よーし三人とも、改めて自己紹介する。俺は坂上(さかがみ)孝之(たかゆき)だ。呼ぶときは簡単にタカでも……まあアシュでも良いぞ」


 とりあえずこれからは日本名の名前で通すことにしよう。


「タカ……で良いのね?」


「ああ。それで、君はなんて呼べばいい?」


「私はミーシャよ。以前からアンタの味方、幹部だったのよ」


 へぇー、スッゲーな。

 こんなツインテールのせいでぱっと見ツンデレの王道みたいな見た目してる子が幹部かー。


「そういえばお前名前聞いてなかったよな?」


 ふと思い出しここに来るきっかけを作った白い髪の少女に声をかける。


「あれ、言ってなかったかい? 私のことはティアラと呼んでくれ」


「おう、了解」


 一通りの自己紹介が済んだところで、早速本題に入ろう。


「突然で悪いが、全て説明をしてもらいたい。ご覧の通り俺は記憶が無いから全く何が何だか分からないんだ」


「ん、そうだね。その前にアリア、例の物を持ってきてくれ」


「分かりました」


 軽い足取りでアリアは部屋から出て行った。


「今の君は魔法を使えない。何故なら力を別の器に保管しているからなんだ」


 ティアラは机を挟んで俺が座っているソファとは反対側のソファに腰掛けた。


「ふーん。なかなか凄いことをしてたんだなぁ」


「これくらい僕にかかればお手の物さ。まずは君に本来の力を取り戻してもらう、これが最初の君の仕事さ」


「おまたせしました」


 おーう、お前ら仕込んでたのか? タイミングがスッゴイ良すぎだぞー。


「これは? ただの水に見えますけど」


 アリアが持ってきたものはガラスの瓶の中だった。

 中には透明な液体が入っていて、どこからどう見ても水のようだ。


「ああ。それは人が飲める限り不純物を取り除いた水だよ。そこに君の力を分解して混ぜたのさ」


「へー、魔法って応用の範囲が広いんだなー」


 アリアから瓶を受け取り蓋を開ける。


「そういえば俺の記憶が戻る目処ってあるのか?」


「戻るかもしれないし戻らないかもしれない」


「つまりは分からない、と」


「仕方ないんだ。これに関しては本当に予想外だからね」


「ふーん。まあ仕方ないか」


 一呼吸置いてから一気に水を飲み干した。

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