とーだいもとくらしー
わたしには、手を伸ばしても届かない色がある。
わたしには、憧れの色がある。
しかし、それを出せたことがない。何度も色を重ねたが、納得することができる色は出なかった。
わたしには、手にいれたい色をこの手に呼び出すことができない。憧れる色を出すことができない。このことは、わたしを暗い気分にさせた。まるで星をとろうとする子供のようだ。無駄なことだと自分を嗤いたいが、その風景を手放すことはしたくない。
だが、最近気づいた。
わたしが手を伸ばす色は、憧れる色は、もう既にあったことを。
もう既に……わたしの体に流れていたことを。
わたしが手を伸ばし、憧れる色は、「指先から滴る血の赤」だ。この赤は、わたしの目を奪う赤だ。わたしのこころを奪う赤だ。鮮やかでありながら暗く、愛しいがどこか痛みを感じる。そう思うのはわたしだけかもしれない。しかし、わたしはこの赤を愛しいと思わずにはいられない。手のなかにおさめ、わたし自身がその赤のようになりたいと思わずにはいられない。
この赤が出せないことは苦痛だった。だが自分の手を見たとき、ふと思ったのだ。
「わたしの欲しい赤は、ここにあるじゃないか。」と。
そして、届かない、叶わない苦痛は消えた。痛いほど望んでいた色は身近にあったからだ。
愛しい赤は、既に自分のなかにいる。これをどうするかは、これからのわたし次第だ。自分のなかにいる赤が、そう言って、なにかを託してくれた気がした。
このことは、他のことにも言えるのではないだろうか。自分が求めているものが、実は身近にあった……そういったことがあったのは、わたしだけじゃないはずだ。もしも、これを読んでいるあなたがわたしと似たような境遇なら、自分のなかを探して欲しい。きっと、「かくれんぼしていたあなた」が、行き詰まったあなたの背中を優しく押してくれる一言をくれるはずだ。