蝉よ何故なく
蝉よ何故なく
限りある時力いっぱいのその声は
何を思っている
蝉よ何故なく
この世を憂いているのか
生への無情と我が身の性は
何なのだと歌うようだ
蝉よ何故なく
求愛のためかそれとも仲間の死のためか
あなたの声は自らの境遇を
いっそうあなたを輝かせている
蝉よ何故なく
戦没者たちの嘆きのようだ
ただただ訴えかける
彼らの残した教訓を
蝉よ何故なく
夏の始まりを告げるための神の造作なのか
ならばあなたは使命をまっとうした
夏の終わりをその身を持って我らに伝えたのだから