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AIice  作者: 黒川 翔
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AIice 04.四つのカップと五つの声(前編)




なんというか…これはどう言えばいいんだ?




「ミツキ……まだ?」

「アリスがいるとなりゃ先に向こうに行ってるんだろ。我慢しな、坊」

「ネズちゃん、ボクもいるよ。うん、アリスと一緒だよ」

「ああ、シロも忘れちゃいねえさ」

「わーい」


……どこから説明したものか。俺の前には二人しかいないのだが…会話は三人分。大人しそうな女の人はミツキさんというらしく、お茶をとりに行くから待っていて欲しいどこかへ行ってしまった。待つのは良いんだ…待つのは。森の中のバンガローみたいな、いや立派だから別荘とでもいうべきか。そんな家の前に置かれている椅子は木で出来ていて、それに腰掛けていると中学時代の臨海学校を思い出す。まあ、森だけどさ。


「アリスは自棄に大人しいな。病気か?」


聞いてきたのは、ネズミのぬいぐるみだ。ネズミ色で目が黒いボタンで縫われてる。それを抱えている少年はシロと同じくらいだろうか。真っ黒なシルクハットで顔が隠れているせいでよくわからない。ついでにあんまり話さないのでどういう奴かも分からない。


「病気じゃない。ただ…」


俺はネズミのぬいぐるみを凝視する。ネズミは話さないし、ましてやぬいぐるみはもっと話さない。腹話術か?


「アリスは俺が気になるか。まあ、ミツキが戻ってくるまで暇だしな。自己紹介をしてやろう。坊もシロもだぞ」

「ボク、アリスに名前言ったよ。うん、アリスが聞いてくれたんだよ」

「…ヤダ」


ツッコミ所が多すぎだろ、コイツら。


「まあ、アリス。俺は眠りネズミだ。まあ、ぬいぐるみに見えるだろうが」


まさか、何かしら退っ引きならない事情でもあるのか?!


「そのまんま、ただのぬいぐるみだ。最近中身を綿よりビーズなんたら…なんたらビーズ?まあ、そいつにしたいんだが、手に入れるのが難しくてな」

「……」

「はいはーい!次はボクね。うん、ボクがやる!ボクはシロウサギだよ。最近は〜、新しい時計が欲しいんだよ。うん、シロウサギ時計はひっすアイテムだもんね」

「さっき時計使って来てなかったか?」

「あれは、アリスのだよ。うん、アリスの時計でボクの時計じゃないよ」

「女王にまだとられたままなのか。アイツは時計嫌いだからな」

「女王様は時計が嫌いだよね。うん、チシャちゃんが好きだからね」

「最後は坊だぞ」

「嫌…」

「ミツキが聞いたら悲しむぞ、坊。アイツ、お前が他の奴と仲良くしないの心配してるんだからな」

「…帽子屋」

「よし、偉いぞ。ミツキも喜ぶ。お前もそう思うだろ、アリス」

「あ、ああ…」


忘れられてなかったのか…。いや、忘れたままでも良かったんだけどさ。自己紹介をしてくれたらしいが、ちょっと待て!誰も名前を言ってないだろ?!


「…住人は名前を隠す。見つからせない為に」

ぼ、帽子屋がしゃべった。いや単語だけはしゃべってたけど会話出来たんだな。…俺の思っていた事が伝わっちまったんだろうか。


「そういう訳だ。おう、これは約束事だからな。アリスにゃ悪いが名前名乗らなくていいからな」

「わかった」


正直助かった。実は名前にトラウマがあるっていうか…お陰で始業式は毎回憂鬱なんだ。


「物分かりいいアリスだな。坊が約束事の話したのはミツキに聞くなって話だ」

ミツキさんは……名前じゃなかったのか。俺と同じようにトラウマになるような事があったのか。


「ミツキちゃん悲しむと、はーくんも悲しいもんね。うん、はーくんはミツキちゃん大好きだから、悲しんで暴れるんだよね。」

「…当然。ミツキを泣かせたらアリスでも許さない」


俺とシロを睨み付ける帽子屋…シロ曰く可愛らしく言うとはーくんだが、俺でもビビりそうなくらい睨み付けてきた。いや、シロに九割は矛先が行ってるんだが、シロはすでに俺の後ろに避難している。俺を通して睨むな。


「ミツキさんを泣かせたりしないさ。な、シロ」

「そうだよ。うん、ボクだってミツキちゃん大好きだもん」

「シロは信用ならない」


シロ、お前何したんだ。やけに敵意があるぞ、コイツ。助けを求めるように、いや、なんか求めたくないんだが、眠りネズミに…ぬいぐるみに助けを求める日がくるとは。

「まあ、シロが昔聞いたんだな。坊も悪気がないのは分かっちゃいるが…お、ミツキが戻ってくるぞ」


眠りネズミの言葉に…ミツキさんに救われた。いや、マジで。


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