AIice 11.十一人家族の隠れ家的秘密基地
そこは本当に隠れ家のような秘密基地のような場所だった。
「あ、お姉ちゃんのご飯だ!」
「兄ちゃん、食べて良い?」
「……まだだめじゃない?」
聞き取れた声はこれだけだが、いろんな声が飛び交っていた。
「何人家族?」
「今は11人かな。あ〜、これは昼!先ずはお客さんにご挨拶だ!」
「「「「「いっらっしゃいませ〜」」」」」
「…お邪魔します」
元気よく出迎えられ、少し驚いた。
ハトリくらいの子供が10人はいるらしいが、じっとしてるのは数人であとはチシャと遊んだりしてる。
数えられねぇ…。
「こいつら元気だろ?」
「元気過ぎないか?」
「それはたまに俺も思うけどな〜。ま、落ち込むよりずっといいよな」
「なんかあったのか?」
「ん、こいつらの親代わりが居なくなってさ。ティ…ネズさんも姉貴もゲームの為に出てったからさ。こいつらは能力とかまだだしさ、巻き込みたくないんだって言ってさ」
「能力って生まれ持ってとかじゃないのか?」
「そういう奴もいるけどな。なんだアリスはまだか〜」
「俺もあるのか?」
「違う違う。ちょっと俺や姉貴が居た時代とアリスの時間が違うんだなって。姉貴、年聞いただろ?」
確かに聞かれた。何故かは分からなかったけど。
「俺と姉貴っていわゆる未来人になるんだよ、アリスからしたら」
「は?」
突拍子もない単語が出てきたぞ、おい。
「能力の説明なんてするとは思わなくてさ。まあ、定義とかは知らないほうがいいだろうけど」
未来の事は知らない方が良いだろ。なんて言われたが、ちょっと気になるが。
サツキが言うには生まれ持った能力はタイプで五段階に分かれ、大きさで三段階に分かれるという事だ。成長により段階も進んでいくとかいかないとか、その辺は濁されてしまった。
「アリスは信じやすいよな」
「そうか?」
「普通は信じないぜ。時間・時空移動は俺らの時間でも特殊中の特殊。この島でも、シロとか数人だから」
シロ…んな能力をミツキさん達のところに行くしか使ってないのかよ……。
「なあ、島ってここは不思議の国じゃないのか?」
「そう呼んでるのは、役持った奴。本当の名前はもう誰も口にしないけどな。あ、見せてやるよ」
サツキは棚の上にバケットを置く。そうしないとチシャが全部食べてしまうらしい。
そのまま幾つかの穴やら梯子やらを登ったり降りたり。そうして見張り小屋と書かれたドアの前まで来た。
「本当は夕方とかの方が綺麗なんだけどさ」
だけどアリスは進まなきゃいけないからな。とサツキは残念そうにドアを開けた。
海鳥の鳴き声と潮の匂い。
陽によって輝く海はどこまでも蒼かった。
「これが不思議の国になりきれない島だよ。名前は口にされないけど、景色は昔と変わらない」
懐かしむようにサツキは言う。
「アリスが行こうとしてるのは彼処だよ」
くいっと一隻の船を指した。
「……船だよな」
「あれが船じゃないとか言ったら怒られるぜ。あれは船だけど、アリスが目指すハートの城だよ」
誰だよ、名付けた奴!