AIice 10.後悔し始める十分
チシャの言葉が気になりつつも、俺は物語を進め始める……事になるのか?
「チシャお腹空いた」
ミツキさんから貰ったサンドイッチを狙っているチシャは、俺の後ろを歩いていた。ミツキさん達と別れて10分しか経ってないのに。
「さっき朝飯食べたばっかだろ…」
「食べきれないくらいあるのに」
「これは頼まれたヤツだから、駄目」
チシャが狙っているのは、大きなバケットに詰められたサンドイッチで、10人分くらいはありそうだ。通り道にある場所に届けて欲しいとミツキさんに頼まれたのだ。
因みに俺のはハトリから借りたリュックに目覚まし時計と一緒に詰め込まれている。チシャはさっき食べていたのでもうない。
「アリス、真面目だよね」
「当たり前だろ。で、ミツキさんの言ってた家って何処だ?」
近いらしいが、見当たらない。
「通り過ぎたよ」
「は?!言えよ、それ!」
「だってチシャ、サンドイッチ食べてたし。口に物入れて喋ったら行儀悪いよ?」
食べ歩きはいいのか?いや、それより見逃したのか。気をつけて歩いていた筈なんだけどな。家一軒というか木しかない。
「隠れ家だからね」
「隠れ家?」
「チシャ的には秘密基地かな」「…で、その秘密基地っていうのは具体的に何処にあるんだ?」
チシャは答えず、ただ上を向いた。上に何があるん………………あった。
細目でみると木々の間にロープが張り巡らされている。よくよく見ると下にもあり、チシャは景気よくそれを踏みつけた。
カランカラン
とあちこちで音がする。なんだか時代劇とかで罠にかかったのを知らせるような……そんな音だ。
「居たー、お兄ちゃん、お客さん三番だよ」
通ってきた道の横から首だけ覗かせた子供が誰かにそう伝えた。
「あそこ」
彼処まで戻るのか。子供だっていうのは声で分かったが…視覚的には豆粒程しか見えないが、仕方ないよな…。
チシャに少し怒りを覚えつつも俺はその場所まで戻る事にした。緩い下り坂だが、戻るとなれば上り坂に変わる……登るのか。
「ああ、チシャか」
「ああ、チシャだよ」
荷物を持たないチシャは軽々と登っていき、出てきた奴と話していた。
「そっちは新顔だな?お疲れ!」
「ミツキさん?」
ようやくたどり着くと気さくそうなミツキさんが見える。幻覚なのか?!
「なんだ、姉貴に会ったことあ…チシャと一緒って事はアンタ、アリスか」
「一応。姉貴って事はミツキさんの弟?」
「そ。二卵性でここまで似てると驚くだろ」
「驚いたよ」
だろ。と笑い、なんだかつられて笑ってしまった。
「俺はサツキな。俺にはさん付けなしな。なんか姉貴にはさん付けしたくなる奴が多くてさ。俺もついでに〜ってらしいけど、どうも歯痒くってさ」
「わかった」
「ま、本当はそんな区分より本名知りたいんだが、仕方ないよな〜。あ、それ姉貴からだろ」
サツキは、バケットを指差した。俺は頷き、バケットを渡す。
「せっかくだし、寄ってけよ。チビもアリスなんて珍しいだろうし」
「悪いけど」
チシャとハートの城に行かないと行けないし、10分で寄り道してると着かなく…
「チシャもサンドイッチ食べる」
「ん、ああ。二個な」
「だって。アリス、寄っていこう」
「お前な…」
「気にするなよ、アリス。チシャは何か食わせとかないと危ないぞ」
「え…」
「チシャ、肉食だからね」
スプラッタ?!
「チシャは食わせとけば安全だよ。菓子はあるから、持っていけばいい」
「…寄らせてくれ」
「「2名様ご案内〜」」
サツキと子供は喫茶店のように出迎えてくれた。