島探索で修行の前に
12/28 内容変更しました
朝それぞれ起きるのがバラバラだったが、朝食は一緒に食べて一度全員で談話室に集合する。
「みんな集まってるわね!今日から島探検しながら修行よ!アタシ達はまだこの世界に来たばかりだし、戦いに慣れてない、だから今のうちに慣れておかないとね!で、アリス、精霊が案内してくれるのよね?」
「うん!案内は任せてって言ってるよ。」
「それは任せるけど、みんなに姿見えるように出来ないかしら?」
「ん~?ちょっと聞いてみる」
そう言うとアリスは目の前にいるのであろう精霊と会話を始める。
時折聞こえる言葉から出来るような感じではあるのだが、アリスは何かに戸惑っているようだった。
「どう?出来そうなの?アリス」
「う~ん・・・出来るんだけどね・・・」
「なによ?言えないようなことなの?」
姫菜の問いかけには答えずに精霊がいるであろう方向をじっと見つめるアリス。
はぁーっとため息を一つつくとみんなに目を閉じるように言う。
アリスは4人が目を閉じたのを確認して、まずは姫菜に近寄り額にキスをする。
姫菜は額に感じた感触に驚いて目を開けるが、アリスは総司に近寄り姫菜と同じことを繰り返す。
水都にも同じことをして最後の久遠のそばに近寄ろうとしたが、額にキスされた事に驚いて動いた水都の足につまづいてよろけた勢いで久遠の唇にアリスの唇があたってしまった。
驚きすぎて固まる5人だったが、ハッと気づいたアリスが久遠からすぐに離れ顔を真っ赤にして談話室から出て行ってしまった。
残された4人はボーゼンとアリスを見送ってしまったが、そんな4人に声を掛けるものがいた。
「みなさ~ん!聞こえてますか~?私が見えますか~?」
柔らかな耳に心地良い女性のような声が聞こえてくる。
と同時に4人の目の前をふわりとかすめるように飛ぶ何かが見える。
中性的な容姿に長くたなびく髪、ローブのような物をまとった人の姿に近い透き通ったものが4人の前を飛び回っている。
いち早く我に返った久遠が飛んでるものに声を掛ける。
「聞こえてるし、見えているが、貴方は?」
「ああよかった。成功ですね。私は島の管理をしている精霊です。」
「成功というのは?それに島を管理している精霊?」
「成功っていうのは私の姿が見えるようにアリス様がおこなった儀式です。アリス様は恥ずかしがって貴方以外の方には額に口づけしてましたが、本当は唇に口づけする方が精霊の加護を受けやすく私や他の精霊をちゃんと認識することが出来るんですけど、アリス様の力が強かったので額でも私を認識できてるみたいですが・・・」
そこまで喋ってから久遠以外の3人の前にゆっくり飛んで目を合わせて見えているのか確認する。
3人の目が自分を追って来るのを確認してまた久遠の前に戻る。
そこで我に返った姫菜が精霊に声を掛ける。
「ねぇ!精霊、アリスがどこへ行ったかわかるかしら?」
「多分ですが、ご自分のお部屋に向かわれたのだと思います。」
「ありがとう!アタシちょっとアリスのところに行ってくるわ!戻ってくるように説得しなくちゃ!そのあいだにみんなは精霊から話を聞いておいてちょうだい!」
そう言うと談話室から出ていく。
久遠はため息をつくと目の前の精霊を見る。
「あとは私が島を管理してる精霊っていう話ですよね。」
「ああ。こんなに広い島を貴方が?」
「はい。島の外側から入る者達を迷わせて元の位置戻すように他の精霊に指示をしたり、森にいる魔獣を増えすぎないように管理したり、鉱山なんかの資源を管理したりしてますよ~。」
物騒な事をニッコリと微笑みながら当然のことのように言う。
「俺達はいいのか?俺達だって向こう側の者達とそんなに違わないんじゃないのか?」
「貴方方は特別なのです。全ての精霊は貴方方に味方するでしょう。精霊に愛されし者ですから。」
「アリスがじゃないのか?」
「アリス様はその中でも特別です。無条件に全ての精霊がアリス様の力になり、願いを叶えようとするでしょう。そして敵対する者には厳しい制裁を加えるでしょう。もちろん私もです。」
「なるほど。で、もし俺達がアリスに危害を加えるような事があったらどうするんだ?」
久遠のその言葉に精霊は意味が分からないというような顔をする。
「ありえないことをおっしゃるんですね。」
「そうか?」
「はい。絶対にないと確信があるのですが、もしもそのような事があればアリス様の望む通りに致します。傷つけられて顔を見たくないと思われるのであればそのように致します。ですが机上の空論です。あのお方がそのように望むことはありえません。」
「では先程の俺への口づけは?あれはアリスが望んではいなかっただろう?」
「そうですね。ですがアリス様は恥ずかしがってはおられましたが嫌がってはおりませんでしたよ?時間が経てば落ち着かれるとそう私は認識しております。貴方に対して攻撃をするような事は望まれておりません。」
精霊の言葉に少しだけ安堵したような顔をする。
先程の口づけは久遠にも動揺を与えていたのだ。
これから現実世界に帰るまで仲間として一緒に付き合って行くのだ、久遠もアリスもしばらく落ち着かない気持ちでいることにはなるだろうが、良好な関係を築いていこうとしているのだ、ここで険悪な雰囲気にはなりたくない。
とりあえず今は険悪な雰囲気にならずにすみそうで久遠はホッとした。
ここにいる水都と総司にもなんとなく伝わったようだ。
あとは姫菜がアリスを連れて戻ればなんとかなりそうな感じである。
しばらく待っていると姫菜が戻ってきた。
「あれ?姫菜だけか?アリスはどうしたんだ?」
「なによ!総司はアタシだけ戻ってきてなんか文句でもあるわけ?」
「いやそうじゃねーよ。説得しに行くって言うから連れてくるんだと思っただけだよ。」
「そう、アリスならお昼のお弁当を用意するって厨房の方に行ったわよ。今からだとお昼に戻ってこれないだろうからって、そんなに時間かからずに戻ってくるって言ってたわよ?メイド達も手伝ってくれるからって、アリスは心の整理にもうちょっと時間置きたいんでしょ。」
「そうか。なら待つか。」
そう言っていつの間にかメイドに用意されていた飲み物に口をつける。
「そういえばいつの間に飲み物用意されてたんだろう?」
ポツリと水都が疑問を口にする。
が3人から変な顔をされた。
「水都、お前気づいてなかったのか?」
「え?何?」
「アタシが来た時に一緒に来たわよ?」
「えっ!まじで?」
「まじで気づいてないのかよ?天然はいってんじゃねー?」
久遠、姫菜、総司に憐れむような目で見られながら言われる水都。
姫菜の後からついてきて素早く飲み物を用意していったメイドも凄腕だが、まったく気付かなかったのは水都だけだった。
「僕は別に天然じゃないからね!単純に気付かなかっただけだから!」
「気づかない方がすげーよ。」
「ああ、全くだな。」
更に追い打ちでがっくりとうなだれる水都。
そんな微妙な空気の中、大きめのバスケットを持ったアリスが現れた。
変な空気に首をかしげながら談話室の中に入ってくる。
すぐさま精霊がアリスに近づく。
それを見て嬉しそうに微笑む。
姫菜に近寄りどうしたのかと聞く。
「ああ、なんでもないのよ。ちょっと水都の天然ボケが出ただけだから。」
「だから~!僕は天然じゃないって!」
「はいはい。わかったわよ。っていうかアリスにこんな重そうなの持たしておくつもり?」
水都の言い分をあっさりと捨てて男子に睨みをきかせる。
すぐ総司が動いてアリスからバスケットを受け取る。
「結構重いな。よく持ってこれたな。」
「そんなに長い距離持ってないから大丈夫だよ。精霊が手伝ってくれたし。」
バスケットの重さに驚く総司ににっこり笑ってバスケットの周りにいる小さい精霊達を紹介するが、総司には見えていないらしい。
「そうなの?いるの?」
「え~?姫菜見えない?」
「僕も見えないけど・・・。久遠はどう?」
「俺は見えてるな。ちなみにアリスの周りに小さい精霊が結構いるぞ?」
姫菜と水都にも小さい精霊は見えてないが、久遠には見えているらしい。
「おそらく、精霊の加護の儀式の違いが出ているのでしょう。」
迷いの森の精霊がそう話した。
額にするのと唇にするので違いが大きく出たらしい。
アリスのことを思って口には出さなかったがアリス以外の4人は同じことを思った。
アリスの方はあまり深く考えないようにしたらしい。
「そうなんだ~。島の精霊は力も強くて他の精霊より大きいから見えてるのかもね~。そうだ!名前はあるの?」
迷いの森の精霊の力が強いというところでアリスは話を落ち着かせたいらしいのが見え見えなのだが、突っ込んでもかわいそうな感じが見えて他の4人もその話に乗る雰囲気を見せている。
これから案内を頼むのに『迷いの森の精霊』では呼びづらいとアリスは名前を聞いたが・・・
「私には名前がありませんので、アリス様つけて頂けますか?」
「私がつけていいの?」
「はい是非!つけて頂けますか。」
「うーん・・・。フィードってどうかな?」
「フィードが私の名前ですか?」
「そうだよ。」
「はい!とても素敵な名前です!ありがとうございます。フィード、これからはそう名乗ります。」
アリスのつけた名前にすごく嬉しそうにしてクルクルと小踊りしている。
「じゃあ!早速行くわよ!迷いの森に!フィード案内をお願いね。」
「はいかしこまりました。え~っと」
「ああ、自己紹介してないわね。姫菜よ!」
「オレは総司だ。」
「僕、水都だよ。よろしくねフィード。」
「俺は久遠。案内よろしく頼むなフィード。」
「姫菜様、総司様、水都様、久遠様ですね。」
「フィード!様はつけなくていいわよ。仲良くしましょう。」
姫菜に言われても、様を付けないことに嫌がる素振りをしているフィードだったが、アリスにつけて欲しくないと言われて、渋々引き下がったフィードだった。
しかし、アリスが男性陣に君をつけて呼ぶとフィードがそれを指摘して様付をしようと言い出して姫菜がアリスに呼び捨てにするんでしょと、アリスとフィードが仲良く怒られるなんて一幕もあったが、なんとか島の探索と修行に出発するのだった。
次の更新は今の所未定です。
早めに上げるつもりです。
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