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企画参加作品(ホラー抜き)

あいびき

作者: keikato

 その牛は豚を愛していました。

 豚も、その牛を愛していました。

 二頭は道ならぬ恋に落ちていたのです。

 けれども……。

 牛小屋に豚小屋と、二頭は別々な場所で暮らしていました。ですから顔を合わせられるのは、外に出るわずかな時間。

 それも境には高い柵がありました。

 二頭の間には、さらに高い塀がありました。

 それは二頭が、牛と豚という種を越えた関係だということです。さらには二頭の仲を疑う、それぞれの仲間の目もありました。

 暗くなるのを待って……。

 二頭はこっそり小屋を抜け出し、あいびきを繰り返しました。柵を越して見つめ合い、夜どおし愛を語り合ったのです。


 そんなある日。

 愛し合うこの二頭に、悲しい別れのときがやってきました。

 飼い主が豚を小屋から引き出して、町の市場に連れていったのです。

 牛は悲しみにくれました。

――豚さん、もう帰ってこないんだわ。

 そう、豚は売られてしまったのです。二度と帰ってくることはないのです。

 それから数日後。

 今度は牛がトラックに乗せられ、やはり町の市場へと連れていかれました。

 さて市場。

――豚さんに会えるかしら。

 牛は必死に愛する豚を探しました。

 けれど、愛する豚の姿はありません。このときすでに、ある商人の手に渡っていたのです。

 やがて牛も、市場から売られていきました。


 この日。

 愛し合う二頭に奇跡が起こりました。

 商人の家で、二頭は再会を果たしたのです。牛を買った商人があの豚も買っていたのです。

 商人の家には柵はありません。

 仲間の疑いの目もありません。

「いつも一緒にいられるなんて」

「あたしたち、なんて幸せなんでしょう」

 二頭は種を越え、強く強く抱き合いました。それぞれの細胞のひとつひとつがくっつくほどに。

 それはひさしぶりのあいびきでした。

 その夜。

 タマネギと卵とパン粉のとりもちにより……。

 二頭はハンバーグになりました。


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― 新着の感想 ―
 過去作ですが、お邪魔します。  この作品の上手さが美味そうで、やられました。言葉遊びと、タイトルと内容の納得感がたまらなく好きです。
[良い点] 拝読しました。 ショートショートですね。面白かったです。 ラストまで読んだら、題名に戻る。短い字数の中に、詰め込まれたこの世界観よ。(o^^o) keikatoさんの作品はどれも完成度が…
[一言] いやまさかのあいびきよ!!(゜Д゜;) 一本取られました!! 面白い話をありがとうございます!!
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