エピローグ ある貴族の物語
少し短めです。
やあ、諸君
私の名前はゲラド・ベルヤード。
ランクBのトップランカーだ。
最近までランクB以下などただの凡人だと思っていた。
そう、最近までは......
気がつくともう「彼」は居なかった。
私を、《防御強化》Lv3を持っていた私を2発で沈めた男。
後でギルドで聞くと彼はランクEらしい。
いや!あり得るか‼︎
これが私の本心である。
ランクBの私を余裕で倒すランクE。
そんなものは100%この世に居てはならないと思う。
恐らくだが、彼は4、5日でランクをB以上に伸ばす。
私より圧倒的に強いのだ、それくらいはするだろう。
思えば私も最初は今ほど落ちぶれてはいなかった。
否、まだ落ちぶれて居なかったと言うべきか。
私が10才の頃
私はここら一帯の子供より強かった。
圧倒的と言えるほどに。
それで自惚れていたのだろう。
何を考えたかその時の私は当時ランクCだった大人の冒険者に勝負を挑んだ。
結果は惨敗。
私が貴族と知っていたのであろう。
私を傷つけないようにと峰打で一本取られた。
悔しかった
当時誰にも負けてなかったから余計に悔しかった。
この頃から私は少しずつ腐ってきていた。
勝負が終わって次の朝。
私はもう一度男に勝負を挑んだ。
真面目にやれば勝ち目は無い。そう踏んで周りに私の従者たちを仕掛けておいた。
....私が負けそうになったらバレない様に男を動かなくする様に。
当然私は勝った。
昨日のように峰打をされる直前に私の従者たちが放った特殊針によって。
この特殊針には麻痺毒が仕込んであった。《毒耐性》でも無ければレジストは不可能。
効果はてきめん。
男はそれを受けた瞬間倒れた。
そして、ここからは私が蹂躙した。
何度も何度も刃が潰れた剣で殴った。
そうする事で先日の口惜しさが恨みが消えていったから。
麻痺毒とはいえ口や目は動く。
攻撃を止めさせたければ無様に「参りました」と言えばいい。
そう思っていたからどんどん剣を振るった。
だが、男は屈指無かった。
殴られても殴られてもその目の光が消える事は無かった。
私はそれを見て何故だか更に腹が立った。
ムカついて目が真っ赤に染まった。
そして私は......
そこから先は覚えていない。
ただ色んな人に羽交締めにされていたのは覚えている。
そこでわたしは
『条件を満たしました。スキル《憧憬》を入手しました。』
このスキル《憧憬》を手に入れた。
《憧憬》は相手の持つスキル1つを一定時間使用不可能にするもの。
そう、この力で完全に腐ってしまった。
先ずこのスキルを使うために《鑑定》を入手した。
スキル《鑑定》の入手方法は鑑定持ちに教えて貰うこと。
自力で入手出来る奴も居るようだが私には無理だった。
幸い使用人の中に《鑑定》を使える奴がいたのでそいつに師事した。
こうして、《鑑定》を手に入れた私は満を持してギルドへと入った。
2週間でランクをBまで上げ、その後新たなスキルを身につける為に修行をしていた。
斬る、斬る、斬る。
それだけを繰り返す日々。
楽しくはなかった。
だが、これも強くなるためと楽しさを捨てた。
そして、出会った。
私を超える実力者に
以前の私なら仇なそうと勢い込んでいただろうがそんな気分にはなれない。
あれだけの実力差だ。たとえ何人で行っても負けるだろう。
いまや私より強い者は従者たちには居ない。
だが、不思議だ。
負けたというのにそれを受け入れてしまっている。
「あいつ」のように強くなりたい!
「あいつ」のようにかつての自分のようにあの目の輝きを取り戻したい!
毎日子供達相手に愚直に剣を振るっていた、剣の楽しさをまだ忘れて居なかったあの頃に!!
そう考えると思考がクリアになってくる。
「受付嬢、あいつは何の依頼を受けた?
心配せんでも攻撃はせんよ。....ただ礼が言いたいだけだ」
こうして、受付嬢から彼の向かう場所を聞くとそこへすぐに向かう。
貴族、いや、「冒険者」ゲラド・ベルヤードの旅は始まったばかりだ!




