第34話 シャーラside
大分遅くなりました!
本当すいません!
シャーラサイドです。マコトもそろそろ出てきます。
「ちょっと! どこ行ったのよ!」
私は何度目かも分からない声を薄暗い森へと向けて上げた。
これに対する返答は……無し。
風で揺れる木々や偶に鳴く虫たちの声しか聞こえない。
「全く……大丈夫かしら? マコトとその弟はともかくアカミ? とかいうのが心配ね」
それに私も。
あの絶大な力。
あんな力を持つ者が私のまえに現れたら終わりだ。
いくら王の力を持っていたのとしても私の《慈悲の王》は一回きりの完全復活。
一応攻撃手段もあることにはあるけど……あの威圧感の前では全く役に立ちそうも無いわね。
「……!」
これは……魔物の気配!
数は……6ってとこかしら。
「「「ヴォウヴォウ!」」」
「紫色の狼……『パープルウルフ』ね!」
パープルウルフーーお爺ちゃんの話では確か毒を持つ肉食の狼だったはず。
大きさは1.5mほどで私と同じくらい。
毒があるのは牙……だと思う。
だから牙と鋼鉄も斬り裂けそうな硬い尻尾は要注意っと。
「はああ!」
私に飛びかかってきた狼の首元を持っていた剣で貫く。
すぐに剣を抜くとそのまま真横に薙ぐ。
それで2匹が胴体の頭を別れさせ吹き飛んでいく。
剣を手元に引き寄せ後ろに下がる。
ブン!!
先ほどまで私が居た所を狼の爪が襲う。
そして、必殺の一撃を躱され混乱している狼に向けて剣を振り抜く。
断末魔を上げながら地面に崩れ落ちる狼。
「あと2匹!」
私は既に逃げ腰の2匹に向けて《慈悲の王》の "豊穣" を使う。
「ギャンッ!」
自分の下の地面から突然出現した土の槍に貫かれて生き絶える2匹。
「ふう。これで終わりね」
でも一応確認しましょうか。
《立体起動Lv7》で木々の間を飛び回る。
一際高い木の上からジャンプする。
そこで《飛行術Lv4》。
空から下の様子を眺める。
「ここから少しのところに殺人花が1体居るわね……。一応Bランクの魔物だし狩っておいた方が良いかも」
そのまま少し離れた開けた場所まで飛行する。
途中で鼻につく匂いに顔を顰めながらそこまで降りていく。
こちらに気付いたラフレシアが何処からか取り出した草の鞭で攻撃してくる。
無駄だけどね。
全てを剣で切り裂く。
私の《剣技》は《王の権限》によりレベル補正がかかり、LvMAX。
進化して欲しいんだけどまだ進化はしなさそう。
でも、アカミは《剣技》の最上位のスキル持ってたわよね……。
何か腹立つから進化まではさせたいと思った。
無駄な思考をしつつも身体はキチンと動いてくれた。
右手に持った剣で『剣撃波』を放つ。
Lv9で使えるようになるこの技は剣を素早く振ることによって剣先から衝撃波を撃つ技だ。
かなりの高威力を持つ。
それをラフレシアは更に増やした草の鞭を空で盾のように重ねて自らの身体を守る。
『剣撃波』はいくつかの草の鞭を斬ったものの本体に届かず途中で虚空に消える。
中々頭良いのね。
地面に着地する。
と、同時に "豊穣" で細長い棘をラフレシアに向けて一気に展開する。
「……!?」
ゴリっと削れるSPに歯嚙みしつつも剣を構える。
ラフレシアは自身を貫く、地面から突然生えてきた棘に目を丸くしている(目は無いけどね)。
「これで、終わりよ!」
ラフレシアは動けない。
今が完璧なタイミングだ。
《破壊》Lv4を《剣技》と合わせて上段から斬り下ろす。
ズシャッ
手応え有り。
ラフレシアはその身を粉にして宙へと消えていった。
……やっぱ私強くなってるなぁ。
しかもモンスターを相手にあんまり恐れなくなってる。
これはあの威圧感の人とスコーピオンに感謝かしら。
「……ん?」
ラフレシアが居た場所に何か落ちている。
落し物?
拾ってみると片目用の双眼鏡みたいなものだった。
後々知ることになるのだが、これは『スコープ』という "スナイパーライフル" に付けるものらしい。
今の私はそんなこと知らないから、ただマジックポーチにそれを入れる。
「……なんだかよく分からないけどマコトならしってそうね」
私は口元に笑みを浮かべる。
『ぼっち仲間』だからかな?
マコトの事を考えちゃう時が偶にあるのよね。
何もやる事が無い時とか。
今みたいな時とか。
だから反応が遅れてしまった。
「――ッ!?」
右腕に激痛が走る。
視界に赤い斑点が幾数も映る。
地面に倒れこむ。
そして気付いた。
「腕が、無い!」
私の腕が本来あるべき場所には存在していなかった。
ていうか右腕が何処にも無い。
粉々にさせられたの!?
そんな!? 一撃では無理でしょう!
私は咄嗟に《慈悲の王》で腕を再生させる。
否、させようとする。
「か、回復しないッ?」
幾らSPを注ぎ込んでも腕がはえてこない。
《慈悲の王》はちゃんと機能している。
でも腕が生えてこない。
傷口を塞ぐことくらいしか出来なかった。
「私は今何をされたのッ!?」
……!?
何か今音が聞こえ……
ドンッ
私が伏せている目の前の地面に穴が空いた。
そこまで大きな穴じゃないけどかなり深くまで到達している。
どれだけの威力で……。
もし。
仮に私がアレで頭部を攻撃されていたら……。
寒気がする。
だからなのか分からないけど咄嗟に叫ぶ。
「マコトッ!」
先ほど聞こえてきたプシュという気の抜けるような音とともに再び遠距離攻撃が襲ってくる。
魔法、なの?
そういえば、光魔法で『太陽圧縮光』ていう技があったはず。
これはその攻撃なの?
どんな攻撃だったとしても今の私に出来ることは無い。
防ぐことも、反撃することもできない。
ただ伏せて躱すことくらいしか。
それもいつまでもつか。
だから……。
「マコト、早く……!」
4撃目が私の左肩を貫いた。
次回は9月中には投稿します。