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異世界でスキル王になるっ!  作者: 黒色鮎
第2章 12星魔獣編
40/51

幕問 堕ちた巨鷲(後編その①)

今回短めです。


 男がナイフを無造作に横薙ぎに放つ。

 今までとは次元が違うそのスピードと威力に少年はあえなく散った。


 ブシュッ


 血の華が咲く。

 血肉に彩られし真っ赤な花弁が辺りに散らばる。

 同時に男へ全力で向かっていた男の目の前にも何かが落ちてくる。

 ゴンッ、と鈍い音を立て床に激突したそれは–––––––。


「……貴様ァァァ!!」


 少年の頭部だった。


 幾年かぶりに感じる強烈な怒りに青年は身を任せる。

 男の数歩前で急停止し、その位置ならでは絶対に届かないであろう貫手を放つ。


「……!?」


 何かが来る!?

 男は本能のままに右横に転がる。

 体制を立て直した男が見たのは轟音を立てて崩れる、先ほどまで自らが立っていた床の破片だった。


 スキル《格闘術》。

 その上位スキル《武闘家》Lv3で使えるようになる "空当(からあて)" だ。

 拳で戦う格闘系スキルにおいて唯一の遠距離用攻撃だ。

 超高速の殴打を途中で、ピタッと急停止させる事で勢いはそのままに硬化した高密度の空気を飛ばす技である。

 それを青年は至近距離といっても良いほどの場所から放った。

 つまり……。


「……壁まで破壊しただと!? どれほどの力が込められて……!」


 その被害は床に留まらず壁、地面、木々など屋外に出ても止まる所を知らない。

 今も地面をめくり上げている。

 それを唖然とした表情で見ていた男は不意に恐怖を感じて青年の方を向く。


 青年は何もしていなかった。

 ただ無造作に立っているだけだった。

 だが、男は背筋に流れる冷や汗を止めることができない。

 青年が纏っている圧がより上位のものへと進化していたのだ。


 唯一の力(ユニークスキル)《邪気》。


 後に真達にも使用された途轍も無い威圧を身体中から発散させるスキル。

 青年専用スキルだ。

 このスキルにより動きが若干鈍った男を拳の猛攻(ラッシュ)で吹き飛ばす。

 追撃、と直ぐさま男の頭部に足の裏を放つがそれは大勢を整えた男に躱されてしまった。


「……くっくっく。これだから闘いは止められねぇ。今から本気で行くぞ糞餓鬼ィ!」


 男の身体がブレた。

 次の瞬間には青年は壁に叩きつけられていた。


「ガッハッ!」


 口から血が噴き出す。

 だが悠長に待っている訳にはいかない。

 何故なら男が目の前に居るから。

 右手を地面について片手の力だけで男の真横に移動する。

 そして左手を男の顔面に放つ。


「………?」


 が、左手に違和感。

 何事だ?、と自らの左腕を見下ろすと……。


「……ッ!?」


 手首から先が存在しなかった。

 血が滝のように地面に滴り落ちている。

 青年がそこで狼狽してしまったのは男にとってチャンスに他ならない。


「ハッ、何固まってんだァ!」


 黒の閃きが青年を襲う。

 左脇から侵入した黒い刀身は斜めに青年の身体を蹂躙する。

 咄嗟に身体を下げたのが功を奏し、左脇腹以外は浅く斬りつけられるだけで済んだ。


「傷ついたな?」


 男からの問いに見れば分かるだろう?、と訝しげな声を上げる青年。

 が、何故男が青年にそれを問いかけたのかはすぐに分かることになる。


「……ッ! ぐああああ!!」


 突如として襲い来る猛烈な痛み。

 一際痛い脇腹を見ると、そこは真っ黒に染まっていた。

 奴の持っているナイフのように。

 それが青年を苦しめる。

 黒い痣のようなものが左脇から太腿にゆっくりと移る。


「ッ、ぐうッ!」


 激痛。

 痣が移動した部分は綺麗に深い切り傷が入っていた。

 もう左足は動かせないだろう。


「ヒャッハーッ!!」


 男はナイフを青年の右足の甲に突き立てる。

 ぐりぐりと抉るように押し込みながら何かを思いついたような邪悪な顔を青年に向ける。


「あんたって道場主だろ?……なら門下生達が激痛に苦しむ様をどれだけ我慢出来るかな? 自らが手塩に掛けて育てた弟子達が一人一人壊されていくのを見てどれだけ耐えられるかなァ?」

「……貴様!」


 殴りかかろうと腕を引き絞るが足に力が入らずあえなく倒れこむ。

 それを見てケタケタ笑った男は青年の髪を引っ張り無理矢理顔を上げさせると何かのスキルで青年をそのまま固定する。

 ピクリとも動かない身体。

 男は憎悪に目を光らせる青年にもう一度嗤うと殺戮を開始する。


「うわあああああ!!」

「た、頼む! 来ないでくれぇ!」

「くそおおおお……!」


 四肢が転がり頭が飛ぶ。

 真っ赤な絨毯の上で血塗られたショウが幕を開けた。

次回で幕問は終わる予定です。

青年覚醒の時……!

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