第33話 赤嶺side 後編
連続はちょっと無理かなぁ……。
「ヤバイ!」
咄嗟にカバーシールドで蒼炎を防ぐ。
ドンッッとまるでハンマーでぶん殴られたかのような衝撃が襲う。
「っ……!」
そして2撃目でカバーシールドは撃墜される。
僕は左肩の痛みを堪えつつ蒼炎を迎え撃つ。
「はああ!」
第1形態に戻ったアセンションを握りしめスキル《剣の達人》を発動させる。
そして向かってきた蒼炎に剣を振り下ろす。
「っうぐう!」
案の定、蒼炎は斬れなかった。
多少の炎を撒き散らしただけで蒼炎本体には何の害も無い。
寧ろ炎が僕に向かってきたところを見ると僕の方が損している。
が、僕はこの蒼炎を叩き斬った。
「……!」
廟堂も驚いているらしい。
蒼炎の勢いが少し弱まった。
しかし脅威である事に変わりは無い。
「ふう〜…………良し!」
《瞬歩》発動!
騎士達の乱戦で鍛えたこの目で蒼炎の場所を一つ一つ補足していけば!
「はっ、ほっ、せい!」
当然躱す事ができる。
最後の蒼炎を躱した所で僕はアセンションを空中に投げる。
「第9形態『インクリースソード』!」
剣が光り無数の苦無になって廟堂に襲いかかる。
奇しくもそれは先ほどとは逆の立場だった。
「水魔法LV3『水刃』」
スコーピオン戦でレベルアップした《水魔法》のうち今最も使える技を出す。
右手の人差し指と中指をくっ付ける。
すると、そこに鋭く細い水の膜のようなものが出現する。
それは大体全長15cmくらいのその名の通り "水の刃" だった。
これも一応は【剣】なので《剣の達人》を発動させる事が可能だ。
勿論使用し、今も苦無に群がられている廟堂の元へ駆ける。
廟堂は右手に持ったナイフで苦無の猛攻を耐えしのいでいる。
そこへ僕は突っ込んでいった。
「うおおおお!」
「……っ!」
ちっ!
首は狙いすぎか。
僕の水刃は廟堂のナイフで弾かれる。
が、そこで出来た隙へ苦無達が一斉に攻撃する。
「……うるさい!」
全身に傷をつけながら廟堂はイラついたのか声を張り上げる。
同時にナイフを一閃。
周りに纏わりつく苦無達を一掃する。
「もらった!」
瞬間、水刃を奴の首元に滑り込ませる。
しかしそれに気付いた廟堂が首を傾け僕の攻撃を回避する。
「甘い!」
そんなの僕でも読める。
首の動きだけで回避すると分かっていた僕は水刃を振り抜く途中であえてコントロールを外す。
するとどうなるか。
ブシュウ!と指から水飛沫が吹き上がる。
僕の管理から外れた水刃は振り抜かれる勢いそのまま廟堂の首に突撃する。
「……やられた」
そう言う廟堂の首元からは血が迸っていた。
服や地面を紅く染めていく。
追撃とばかりにもう一度水刃を発動させるが今度は暴発させても届かない位置まで余裕を持って回避される。
「ちっ!」
舌打ちし第1形態に戻ったアセンションを構える。
廟堂が盗賊手帳を開く。
咄嗟に《陽魔法》の『熱光線』を放つがあっさり避けられる。
「……まさかこれ程とはな。……お前は盗るに値する」
「何を言ってる?」
「……フフ。……まさかこれを使う時が来るとは。……しかもガキ相手にか」
廟堂は呟きながら右手を地面に付ける。
「……"月の使者"」
右手が付いた地面から黒いシミが湧き上がってきた。
そこからズズズ、と真っ黒な人形が姿を現す。
それも何体も。
「な……っ!」
黒いシミはどんどん広がりそれに連れどんどん人形も生まれてくる。
「……これで仕上げだ」
一際濃くなった部分のシミから人形が出現する。
だがそれは先に出てきた完全な人形という訳では無く何処と無く人間臭さを感じさせる何処か見た事がある人形で……。
「……僕?」
まるで僕だった。
全てが真っ黒く染まった影のような僕のような人形。
手に持つ槍からして完全に僕だった。
「……その通り。……それは君自身だ。…… "鏡姿影兵" 。……君は自分自身に勝てるのか?」
"鏡姿影兵" というらしいそいつは予想通り僕だったらしい。
アセンションを握る手に緊張が走る。
その隙を彼らは見逃さなかった。
"鏡姿影兵" を先頭に一斉に向かってくる黒人形達。
目算50は下らないであろう大群を前に僕は全速力で横に走った。
ドォォォン!!
先ほどまで僕が居た地面が陥没する。
凄まじい迫力と攻撃力だ。
「これは……逃げるしか、っ!?」
目の前が真っ暗に!?
か、身体が動かない!
それに息も!
一体何……が…………。
「……《暗黒の魔手》。……"絶対捕縛" 。」
そんな声を聞きながら僕は意識を失った。
次回は早めに投稿したいと思っています。




