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異世界でスキル王になるっ!  作者: 黒色鮎
第2章 12星魔獣編

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第31話 赤嶺side 前編

真はもう少し待って下さい。

「……?」


 ここは何処だ?

 見渡す限り何もないただただ黒い世界。

 僕が女神様と出会ったあの場所の真っ黒バージョンってところだ。


「僕はあいつと戦っていたはずじゃ……?」


 一見すると好青年のような男。

 連続殺人犯、廟堂 善作。

 そんな相手と僕は先ほどのまで死闘を繰り広げていたはずだ。

 それが何故こんな所にいる?

 それも一人で?

 おかしい。

 何かのスキルに囚われたか?

 ……可能性は高い。

 もし僕が奴に負けて死亡したのだとしたら恐らくだが、またあの白い世界に行くはずだ。

 だが、ここは黒い。

 しかも僕以外に誰も居ないし、何も無い。

 いかにもな所だ。


「……てことは僕は奴に敗北したのか……?」


 必然的にそうなる。

 いや、まだ負けていないのだとしても僕は今現在囚われているので結果論では負けだ。


「くそっ! 他の奴等は負けてないと良いが」


 そして、僕は僕を倒したあの恐るべき人間の事を思い出す……。





 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





「……少年」

「っ!?」


 話しかけられたのは突然だった。

 あの強烈な威圧感に一先ずバラけた僕は再び皆んなと合流すべく皆んなの事を探していた。

 感覚は最大限研ぎ澄ましていたはずだ。

 どんな小さな音でも聞き逃さないと意気込み、スコーピオン戦の後に覚えたスキル《感覚鋭敏Lv2》を発動していた。

 範囲は7mほどと中々の広さだ。

 だが、奴は気配を微塵も感じさせず僕の真後ろの茂みから現れた。

 もし、奴が声を掛けていなかったら……。

 振り向く間も無く僕は死んでいただろう。


 警戒して最大限飛びずさる。

 と、同時に僕の右手に【アセンション】が出現する。

 すぐに第二形態 ”カバーシールド” に成れるように準備しておく。


「……その武器で攻撃されたらひとたまりも無い。……見た所神器のようだな」

「……貴方は敵か?」


 確信を持ちつつ問いかける。

 案の定、


「……ああ」


 と言いながら、先ほどの威圧を振りかけてきた。


「っ!」


 思わず身を固くしてしまう僕を横目に奴は着ていた黒いコートの内ポケットに手を入れた。

 中から現れたのは一冊の黒い手帳。

 僕が知っているような手帳よりも大きめな手帳だった。

 すると、徐に手帳を開いた。

 そして考える素振りを見せた後、右手の親指を手帳に押し付けた。

 いったい何をしているんだ?

 それはすぐに判明する事となる。


 親指を手帳から離す。


「……穿て」


 奴は左手で手帳を持ちながら右手を天へと上げた。

 何の真似だ?


 ヒュンヒュン!

 ……ん?

 空耳か?

 今上空から何かが落ちてくるような音をきいたんだが……?

 本能が警鐘を鳴らす中、僕は頭を上へ向ける。


「……は?」


 思わず間抜けな声が漏れた。

 いや、だって……。

 空から槍の大群が僕に向かって降ってきてるんだもん。


「不味い!」


 僕は慌ててアセンションを第二形態の ”カバーシールド” 状態にして頭上に掲げる。

 直後、槍の雨が降ってきた。


「っ!」


 幸いスコーピオン戦の時のように僕の盾が破られる事は無かった。

 キィン!と金属同士が弾かれ合う音を聞きながら今後の方針を立てる。


 さて、どうする?

 ここで奴と戦うかそれともシカトするか。

 現状、武器は恐らく通用する。

 スキルも絶対の力(アブソリュートスキル)なら100%通じるだろう。

 奴の武器は何なんだ?

普通に考えたら槍ということになるだろう。

だがそれはあまりにも短絡過ぎる。

 槍を操る?

 それとも全ての武器を?

 いや、そもそも無から槍を生み出せる?

 ……駄目だ、分からない。

 奴の武器は不明、危険度はかなり高いってところか。

 それに奴のスキルも分からない。

 あの威圧感は奴のスキルで?

 それとも他に誰かが居て、そいつが?

 ……情報が少なすぎる。

 これで好戦出来るか?

 無理だ。

 勝機があまり無い。

 全力なら行けるかーー?

 ……いや、止めておこう。

 今全力を出すのは得策では無い。

 僕は一応 ”騎士長” だ。

 移動中に護衛などされては僕のメンツが無くなる。

 最悪、騎士団追放だ。

 そんなのはゴメンだ。


 方針が丁度決まった所で槍の雨が止んだ。


「いきなりだったな……なら今度はこっちの番だ!」


 第五形態 ”バインドウィップ”。

 僕の奥義その1だ。

 多分倒せないだろうけど目くらましにはなるはずだ。


 奴の周りの地面から至る所に棘が生えた茨が生えてくる。

 その棘の鞭は一斉に奴を攻撃し始めた。


 ズドドドド!


 砂煙りが激しくて中がどうなっているのかは分からない。

 だが、僕はアセンションに攻撃を続けさせたままこの場から逃げ出した。



「……ふう。ここまででいいか」


 今僕は、さっきの場所より3km離れた場所にいる。

 全力疾走してきたので少し息が上がっている。

 それにしても深い森だ。

 ここまで走ればせめて最初に居た道くらいは見つかるかな、とか考えてたけど見つからなかった。

 景色も何も変わってないから実は移動してなかったりしてーー。


「……ここでいいのか?」


 そんな時だった。後ろから声が聞こえたのは。


 一瞬でアセンションを呼び戻し、奴と距離を取る。

 奴は動かない。

 手には手帳が握られている。


「くっ! お前は一体何者なんだ!」

「……廟堂 善作」

「!……日本人か!」


 あまり出会った事の無かった日本人が敵である事に漠然とする。

 と、同時にその名前を思い出した。


「廟堂……! あの連続殺人犯か!」


 奴は無言で頷く。

 どこかで聞いた事のある名だと思ったらやっぱり……。


「……もう逃げられるのも御免だ。……ここで全て終わりにする」


 そう言うと、廟堂は開いていた手帳のページになはり右手の親指を押し付ける。

 薄く発光する。

 廟堂は手帳のそのページに栞を挟むと自身の黒いコートの内側に仕舞った。


 そして、僕に向かって跳躍してきた。


「……!?」


 咄嗟に右方向にジャンプする。

 廟堂は僕がさっきまで居た場所に右手の掌底を繰り出していた。

 ?、廟堂の手のひらに何かある……?


「……《炎の紋章(レッドスタンプ)》」


 廟堂がもう一度僕に向かって跳んでくる。

 だろうと思った!

 僕は余裕を持ってバックステップで後ろに下がる。

 廟堂の掌底が僕をすかして、地面に触れる。

 すると、地面に燃え盛っている炎の印のような物が残った。

 不思議に思い、追撃を避けつつもそこに近づいてしまう。

 勿論、注意しながらだが。

 背後から放たれた廟堂の掌底打ちを首の動きだけで躱す。

 更に注意しながらより近くまで近づく。

 そうすると、廟堂の右手の甲に書かれていた似たような火の紋章が赤く輝き、蠢き出した。

 嫌な気を地面の紋章から感じ、すぐさま距離を取る。


 ズドンッッ!


 地面が爆発した。

 いや、正確にはあの紋章が、だ。

 離れて正解だった……。もし近くにいたらと思うとゾッとする。


 ここで僕は一つ気付いた事がある。

 それは、


「お前のその力の起点。それはその本だな?」


 廟堂の言い方からして絶対の力(アブソリュートスキル)を使っていたと思う。

 僕がもしこんなスキルを持っていたら速攻で使って一撃で仕留めている。

 なのに、使わなかった。

 それは何故か。

 その答えが多分奴の本に隠されている。


「……ほう」


 廟堂が小さく感嘆だと思われるため息を吐く。


「……正解だ少年よ」

「僕は『少年』じゃない! 赤嶺 一登だ!」

「……そうか赤嶺。……では褒美としてこの本を説明してやる」


 そう言って一度言葉を切る。

 続けて出された言葉は大いに僕を驚かせるものだった。


「……この本は神器だ」


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