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異世界でスキル王になるっ!  作者: 黒色鮎
第2章 12星魔獣編

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第29話 祥介side 中編

遅くなって本当すいません!!

 一斉に放たれた猛毒玉。

 それを見た祥介は《空間拡張Lv6》でしまっておいた予備の刀を2本取り出した。

 一気に鞘から引き抜き左右の手でそれぞれ構える。


「おいおい、テメェは馬鹿なのか!? さっき見ただろ! テメェの持つ刀じゃ俺の《蠱毒(シノドク)》は防げねぇんだよ!」


 んな事は分かってる。

 心の中で祥介はそう答える。

 だが、構えは解かない。

 刀を握る手が震える。

 もし今やろうとしている事が通じなかったら僕は死ぬ。


「……よしっ!」


 気合一声、祥介は覚悟を決めた。


「エンチャント〈災火〉!」


 まず左の刀でスコーピオン戦でも使った〈災火〉を。


「エンチャント〈滅炎〉」


 右手で〈災火〉よりもレベルが上の、祥介が持つ絶対の力(アブソリュートスキル)ーー《魔術の極(グリモワール)[火]》で出せる最強の技を右手の刀に纏わせる。


「ちっ……やっぱり長くは持たなそうだな」


 祥介の持つ右手の刀はすでに溶け始めていた。

 この刀も先の友人が作った物で、最初に祥介が持っていた刀よりは少し劣るがかなりの逸品だ。

 その刀が徐々に溶け始めている。

 祥介が『火』を扱うと分かっていたので同グループの最強の付与術師が自身に出来る最大のエンチャントを、火炎耐性極大を付けたのに、だ。

 逆に言えば祥介の火が化け物という事だ。

 更に逆を言えばそれ程の焔の前で溶け出すスピードを『徐々に』で抑えている友人達の刀も凄いのだ。

 恐らく今世に出回っている刀じゃ1秒も持たず溶けきるだろう。


「これが僕の最強技。通じなかったら僕は終わり……か」


 額から汗が滴り落ちる。

 その時は刻一刻と近づいてきている。


 そしてついに。

 猛毒の玉達が祥介の間合いに入った。


「……せいやぁぁぁ!!」


 祥介にしては珍しく声を荒げた。

 それほど彼は焦っているのだ。


 まずは一つ!

 〈滅炎〉を纏わせた方の刀に玉が接触した。


「……何っ!?」


 今度声を荒げたのはリーゼントの方だった。


 祥介の刀と自らの最強で最恐の玉が接触した瞬間。

 負けたのは自らの出した玉だったからだ。


 ジュワァァッ!


 触れた瞬間、すぐに気化して玉は形を失わせていく。

 いや、それは違う。

 触れる寸前に(・・・・・・)だ。

 それは即ち。

 祥介の強さの証明でもあった。


「っ!……だが、玉は一つじゃ無い! どうせ一個が限度何だろう!? 今度は一斉に数十個だ! 凌げるもんなら凌いでみな!!」


 苦し紛れにリーゼントが祥介に向かって叫ぶ。

 だが、彼の言うことにも一理ある。


 確かに祥介は玉を焼き尽くす事が出来た。

 だが玉を唯一燃やせた力、〈滅炎〉はタイムリミットがある。

 それは媒体である刀が溶けるまでーーだ。

 〈滅炎〉は何かしらの媒体が無ければ発動が出来ない必殺の奥義だ。

 媒体が超一流の、神器級の武器で無い限り、発動時間は3分といったところ。

 仮に、もし神器級の武器があったとしても祥介側の力の限界で6分しか持たない。

 それほどまでに多大なコストを支払っているのだ。

 更に。

 〈滅炎〉には今回のようなケースでは対処しずらい決定的な弱点がある。


 それは、”対個人” 用の技である事だ。


 リーゼントの出した玉一つを一個人とすると今現在、祥介に向かってきているのは目算20個人。

 これを全て一気に焼き切るのは不可能だ。

 しかもこの技はスタミナもかなり食う。

 そう半端なく疲れるのだ。

 例えるならば〈滅炎〉使用中は持久走でかなりの高ペースで延々と走っている感じだ。

 後半になってもそのペースのままずっと走り続ける。

 屋外部だった人はその辛さが分かるだろう。


 しかし。


「……ふっ! せいっ! はあっ!!」


 祥介はその状態で剣を縦横無尽に振るった。

 完璧に玉の位置に当たるように。


 左! 右! 右下! 右上! 背後!

 その全てを、〈滅炎〉で焼き切り、〈災火〉で逸らしていく。

 〈災火〉をきらないのは、普通の刀だと先ほどのように溶けてしまうからである。

 因みに〈災火〉の方も火力をかなり上げてある。

 それを侵食している敵の腕前はかなりのものだ。


「……んでだよ」


 リーゼントが小さく呟く。

 それに祥介は剣を振るいながら反応する。


「……何を言ってーー」

「何でなんだよぉぉぉ!!」


 地面に膝をつき彼は慟哭した。

 何が悲しいのか目からは涙を流している。


「何でっ! この世界でも努力を止めない人間がいる! そして、何でその努力が報われようとしているっ!! 何故だ、何故なんだ!!」


 最後の玉を斬り捨てる。

 と、同時に〈災火〉を解いた。

 完全に〈滅炎〉に力を注ぎこむ為に。

 刀を《空間拡張Lv6》の中に仕舞い込む。

 そして、残った〈滅炎〉を纏っている方の刀を中腰に構える。

 切っ先はリーゼントに向けて固定した。


「何で何だよ神っ! どうしてあいつやこいつだけ何だよ! どうして俺には何もしてくれなかったんだよっ!!」


 奴の言葉を淡々と聞き流していく。

 荒かった呼吸が段々静まってくる。

 〈滅炎〉を使用中なので体力は立っているだけでも成人男性が疲労で動けなくなるくらいの勢いで減っていく。


「何故だ……俺があんな事をしたからか? だがあれは仕方がなかっただろう! 俺ーー無動(むどう) 利正(としまさ)から全てを奪った男を殺しただけだろうッ!?」

「……!」


 祥介は冷静な顔を崩さない。

 あくまで表面上は。

 心の中では激しく動揺していた。


 全てを奪った男を殺した、だと!

 つまり相手は、無動は殺人者じゃないか!

 つまり僕が拒否感をそれも強い拒否感を持っている殺人を奴は躊躇わずに実行出来るということだろうッ!

 不味い、不味すぎる!

 人を殺す事が出来ない僕と人を余裕で殺せるあいつじゃ相性が悪いッ!

 どうにか奴を昏倒させなければ……ッ!


 奴は今も隙が無い。

 一見すると地面に膝をついて手は無造作に投げ出されているので襲えば勝てそうであるが、奴はずっと僕の方を見てくる。

 油断しているようで全く油断していないのだ。


 と、これらを瞬時に心の中で導き出すとどう隙を生み出すかを考え始める祥介。

 そんな一瞬身体の動きが止まった祥介を無動は逃さなかった。

 《瞬歩(ハイスピード)》で高速で肉薄する。

 考え込んでいた祥介はそれに反応出来ない。


「……なら俺がその努力を消し去ってやるよッ!!」


 無動は右手を《蠱毒(シノドク)》の猛毒の塊で覆うと掌底で祥介の左目を打ち抜いた。


「ッぐうあっっ!?」


 激痛が左目に走る。

 同時に左側の視界が消える。

 目まぐるしい変化に残っている右目を白黒させながら祥介は左手で左の眼窩を触った。


「ーーッ!!」


 グニャリとした変な感触が手のひらを押し返してきた。

 それはまるで、溶けてブニャブニャになった眼を触っているような……。

 触っていると更に激しい痛みが走る。

 感覚は死んでいないようだ。


 手のひらを下にスライドさせる。

 触った感じだと大やけどした時のようだ。

 実際その通りで、酷い水膨れと裂傷が出来ている。


「……はあっ!」


 だが気にせず祥介は目の前にいるターゲットに向けて思いっきり刀を上から下に振るった。

 いや、「気にせず」は嘘だ。

 正直とても気になっている。

 だが、戦闘中だから自粛しているだけだ。


 左の肩口から侵入した刀身はそのまま左腕の付け根を豪快に断ち切って脇の辺りで無動の身体から抜ける。


「あああぁぁぁッ!! 痛い痛い痛い!!」

「るっせえッ!! こっちだって痛いの我慢してんだ! 少しは耐えやがれ!!」


 ついに祥介が切れた。

 普段の大人しい性格はどこにいったのか滅多に使わない凶暴な口調で未だに左肩を押さえて悶えている無動に〈滅炎〉を宿した刀を心臓目掛けて突き刺した。


「ーー!!」


 咄嗟に身体を捻られ心臓には直撃しなかったが、脇腹の辺りに突き刺さった。


 ブッシャァァッ!


 無動から血が迸る。

 その血で顔を濡らした祥介は刺さったままの刀を無動の脇腹から引き抜いた。

 刺した時と同じかそれ以上の血を噴きださせる無動。

 心なしかさっきより顔が青い。


「カハッッ!!」


 思いっきり吐血した。

 祥介は返り血を嫌ったのか吐く素振りを見せた途端、後ろに飛びずさった。


「……何、か……した、のか、、?」

「……さあ? 答えてやる義理は無い!」


 祥介はそのまま〈滅炎〉を解いた。

 一気に疲れが戻っていく。

 普段の5分の1ほどしか回復していないが、彼はすぐに自身のやるべきことのために動き始めた。


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