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異世界でスキル王になるっ!  作者: 黒色鮎
第2章 12星魔獣編

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第27話 憤怒の罪

 シャーラは咄嗟に身体を捻り俺の拳から逃れようとする。

 だが、避けきれず左手に拳を受けた。


「ーーっ!?」


 そのまま後ろに吹き飛ぶシャーラいや、偽シャーラ(・・・・・)


「大丈夫か偽者。お前にはもっと俺の怒りを受けてもらわないといけないから倒れるなよ?」

「……」


 シャーラの姿が歪む。

 そして、シャーラの中から一人の少女が歩み出てくる。

 左手を押さえているところを見ると折れているようだ。


「……後学のためによろしいですか? どうして分かりましたの? 自分で言うのもなんですが、完璧だったでしょうに」

「……恐怖だ」

「はい?」

「スコーピオンを恐怖の象徴だって? 笑わせんな。あいつはスコーピオンを見たときですら怖気付いてなかったんだぞ? そこのどこが恐怖なんだよ」

「……心の中では恐怖だとーー」

「思ってないよ。スコーピオンはあいつの親の仇だ。憎くこそ思っていても恐怖とは思っていなかっただろうよ」

「っ!……親の仇とは失敗しましたわ」


 悔しげに唇を噛む少女。

 そんな事はどうでもいい。

 奴が勝手にシャーラの内情を想像し、あまつさえ大体の事情を知っている俺にそれを話すだと?

 完全な侮辱だ。

 俺にとっても。シャーラにとっても。


「俺はまだシャーラの事をあまり知っていない。出会って1日だからな。

 それでも、だ。お前よりは俺の方がシャーラの事を知っているはずだ。だから……」


怒りで段々ヒートアップしてくる。


「それを、出会ってたった数分のテメエが! シャーラの事を勝手に考えた安い想像で語ってんじゃねえよ!

 あいつの過去を知りもしない癖にお前が! 何を偉そうに演技してくれてんだよ!!」


 自分でも分からない怒りがこみ上げてくる。

 俺は多分前世で地球でこういう事があったのだろう。

 あまり覚えてはいないが。


『条件を満たしました。スキル《憤怒の罪(ラース)》を入手しました』

『称号、”憤怒の主” を入手しました』


 怒りすぎたお陰か新しいスキルを入手した。

 7つの大罪の1つ、憤怒の名を冠するスキルだ。

 俺はそのスキルを使用した。

 使い方は入手した瞬間に何故か理解出来た。

 それによると今の俺が使える技はただ一つ。


「ーー”憤撃”」


 俺の周りの地面が陥没する。

 俺から溢れ出した圧倒的な力に押し潰されたのだ。

 一歩を踏み出す。

 すると、踏み出した先の地面が陥没する。

 俺は朱く輝く(・・・・)双眼でショートカットの女を睨む。

 今の俺には女だろうが関係ない。

 俺を怒らせた奴は絶対に殺す。

 シャーラの覚悟を踏みにじった奴は殺す。

 絶対に殺す。


 殺す殺す殺す殺す

 殺す殺すコロすコロス

 ーーコロス、スベテヲコロス。


 ?

 あ、れ……俺は目の前の奴だけで十分なの、に。

 全て、なんて、思って……無い、の、に……。


「こ、こ、コロ、コロス。ーーナニモカモキエテナクナレ!」


 身体が勝手に動く。

 何故だ?

 俺は動こうとして無いのに!


「っ!?……これは不味いですわ!」


 奴が逃げようとしている。

 逃がすはずがない。

 今、俺の内部でおかしいことが起こっているが、この際どうでもいい。

 俺の肩から翼が生えてきた。

 真っ黒い暗黒の翼。

 それはあたかも俺の内心を表しているようでーー。


 俺は飛んだ(・・・)

 奴は自分の周りにシャボン玉の泡みたいなのを浮かべている所だった。

 おそらくそれを使って空から逃げるつもりだったのだろう。

 ……誰が逃がすか。

 未だに身体の主導権は俺に無い。

 スキルに握られているようだ。

 こんな事例初めてだ。

 だが、今回はスキルも俺と同じ判断だったようだ。

 黒い翼を自在に操り、高速で奴に追突する。


「なっ!? 貴方本当に人何ですの!?」


 俺はそんな事をほざいていた奴を右手の漆黒の爪(・・・・・・・)で突き刺す。

 ……爪?

 不審に思い俺は右手を見る。

 見る、といっても視界にたまたま入った右手の情報をすくい上げただけだ。


 !?

 俺の右手は真っ黒い靄のような物で覆われて見えなくなっていた。

 その靄が途中から爪の形になっているのだ。

 俺が内心で本当に人かどうかビクついていると俺は突然叫び声を上げた。


「ガアァァァッ!!」


 これにも相当びっくりした。

 人の声では無い。

 これは獣の声だ。

 ……つまり、俺は人じゃない?


「カアーッ!?」

「……?」


 先ほどの叫び声の意味が分かった。

 それは多分ーー。


「「ッ!?」」


 予想通りだ。

 俺は、使い魔と俺の分身を解除したのだ。

 断末魔の叫び声を上げて消えていく二体。

 そして、その二つのスキルで消費し続けていたSPの消費が収まる。

 その分だけ爪の禍々しさが増す。

 もう一度奴をその眼で捉える。

 おそらく危機感を抱いたのだろう。

 さっきのスキルを急ピッチで作りあげる。

 そして、出来たや否やすぐに飛ぶ。


「ガアァ!!」

「キャアアアア!!」


 が、それを爪で叩き落とす。

 今の俺には一切の慈悲が無いようだ。

 まあもとから逃がすつもりも無かったが。

 俺は右手を宙に突き上げた。

 ズズズ、と靄が集まってくる。

 そして、大剣の姿をとる。

 ズシリとした重みが伝わってくる大きく長い大剣。


「っ! ならば!」


 奴はまた無駄な足掻きをしたようだ。

 シャーラに化けたあのスキルを使って今度は祥介の姿をとった。


「……兄さん。僕だよ! 祥介だよ! ねえ、殺さないでよ! 僕たちは兄弟でしょ!」


 動きが停止した。

 それは俺も同じだ。

 俺たちの共通の思いは唯一つ。

 即ちーー。


「「……フザケルナ(ふざけんな)!!」」


 更に大きくなる大剣。

 と、同時に俺から出てくる暗黒の靄が奴の周りを取り囲む。

 それはすぐに球体の形になる。


「こんなもの!!」


 馬鹿女の無駄な足掻きの音が聞こえる。

 拳銃でも使ったか?

 発砲音が聞こえる。

 あと、少しの光も漏れてくる。

 だが、その光も銃弾も全て俺の暗黒が飲み込む。


「そんなっ!? 私の ”破邪の弾丸” も駄目ですの!?」


 俺は右手を振り下ろした。

 一度だけでは無い。

 二度三度、何度でも。

 全てを叩き斬る勢いで、実際その通りに大剣を振り下ろす。


 砂塵が止んだ。

 ついつい斬り過ぎたようだ。

 まあ、俺は操られてたようなもんだから良いか。


 ん?

 ……不味い! まだ主導権がスキル側にある!


 俺はさらなる獲物を求めて歩き出す。


 そして、見つけた。

 見つけてしまった。

 獲物ーー本物のシャーラを。


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