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異世界でスキル王になるっ!  作者: 黒色鮎
第2章 12星魔獣編

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第22話 VSスコーピオン(3)

遅くなりました。

すいません!

 はあああ!?

 土壇場でしてくる事かよ!

 くそっ、もう少しで両手破壊出来たのに!


 スコーピオンは一歩後ろに下がり俺たちより距離を取った。

 右手は守られたが左手の鋏は壊した。

 その回復に努めるのだろう。


「不味いな……もうSPが無い」


 誰もがそう思ってるはずだ。

 俺のSPは勿論、シャーラのSPも技が使えない程にまで下がっている。

 赤嶺はまだSPがあるようだが、見た限りだと大技を1発しか撃てないだろう。

 まあ、その大技もほぼノーダメージなんだけどね。


 状況は最悪だ。

 それもそのはず、俺は先の1発で鋏を破壊した後は持ち武器でごり押しする予定だったからだ。

 尾の猛毒に注意しながら俺の腕力で甲殻をぶち破りシャーラと赤嶺でそこを集中攻撃。

 その間尾は俺がさばく。


 これぞ完璧。

 多少の荒さに目を瞑ればかなり良い作戦だったはずなのだ。


 でもさ、作戦(そこ)まで行かないってどうなのさ。


 計画は頓挫。

 手持ちは赤嶺の頼りないSPのみ。

 あ、後俺の心強い人を超えた基礎能力。


 だが、相手はSPがかなり減ってはいるがまだ大技は出せるくらいのSPは残っている。

 更に物理的の攻撃なら俺たちを嬲れるくらいの力がある。

 つまり、相手はSPが切れたとしても自慢の甲殻でガチガチに身を守りながら右手の鋏で一方的に殴る事が出来るという事だ。


 コレ何て無理ゲー?

 HPや数で上回ってはいるが基礎攻撃・防御力、SPで圧倒的に負けてる。

 あのー、運営者さん、もう少しパワーバランスを考慮してくれません?



 まあ、文句言っても届かないなら意味無いな。

 良し、現実を見よう。


「赤嶺!SPが余ってるようだからさっきの技を奴に叩き込んでくれ!

 その隙に俺が斬りこむ!」

「了解!」


 赤嶺が先ほどの技、無数のホーミングクナイを放つ技を使う。


「キシャアア!!」


 苛立たしげな声をあげるスコーピオン。

 ダメージは無さそうだが、やはりそんなには動かないようだ。

 副次効果として奴の回復も邪魔している。


「良し!俺も!」

「待って!私は?」


 え?

 いや、シャーラはSPなきゃ俺はおろか、赤嶺より下じゃん。


「えっとー、シャーラは取り敢えず待機で!」

「待てる訳無いじゃ無い!、私も行くわ!」

「あ、ちょっと待てよ!」


 心配ご無用。心の中ではちゃんと「ちょ、待てよ」って言ってるよ!

 まあ、俺の持ちネタだから言っちゃうのは見逃して下さい!

 ……持ちネタ?

 俺の地球での持ちネタはコレ……?


 俺の脳裏にフラッシュバックする映像。

 それは、俺が2人の少年と肩を組みながら笑い合っている姿だった。


「何だ、コレ……。俺には2人の親友が居た……?、駄目だ。思い出せない!?」


『熟練度が一定に達しました。スキル《記憶》がLV3になりました』


 っ!?

 頭に情報が流れ込んでくる。

 先ほどの2人の情報もある。


 だが、こんな事言ってる場合じゃ無い!

 取り敢えず今はシャーラ優先だ!

 シャーラが俺の制止の声も聞かず飛び出して行ってしまっている。

 慌てて俺も後を追う。


 赤嶺がわざと開けておいたクナイが当たらないスペースに飛び込むシャーラ。


「せああああ!!」


 裂帛の気合いを見せながら剣を水平に叩き込む。


 カァン!


 やはりシャーラの剣は弾かれる。


「言わんこっちゃ無い!」


 愚痴り走る。

 シャーラは諦めずに剣を振るっていた。

 だが、全て弾かれる。


「すまんっ!もう無理だ!」


 赤嶺が声を上げる。

 クナイの雨が止んだ。


「シャーラっ!引け!!」


 流石に援護なしで斬りつけるのは無茶だ。

 シャーラもそれは分かっていたのかすぐに剣を鞘に戻すと距離を取ろうとする。


 が、スコーピオンは逃さない。


 身体を反転させると爛々と輝く紅い目をシャーラに向けるスコーピオン。

 すると、シャーラがロボットをリモコンで電源を消した時のような動きで身体を停止させる。その動きが止まったシャーラに尾の毒針を放つ。


「シャーラ!」


 幻月 ”爆” を尾に向けて一直線に放つ。

 が、


「くそっ!、間に合わない!」


 シャーラに毒針が刺さる。

 ワンテンポ遅れて俺の槍が尾にぶつかる。


「シャーラ!?、おい!大丈夫か!?」


 横目で見た限りピクリとも動かないシャーラに心配の色を濃くする。


「赤嶺!」

「分かってる!長くは持たないからな!」


 流石騎士団を纏めてただけの事はある。

 こういう場面のサポートはバッチリだ。

 俺は地面に倒れて動かないシャーラの元へ向かう。


「おい!シャーラ!、返事してくれ!」


 やはりピクリとも動かない。

 俺は首筋に手をやる。

 良かった。

 まだ息はある。

 だが、息が荒い。

 可聴域が顔をギリギリまで近づけなければ聞こえないほど低い。

 これは、一刻を争うな。


 ならば、症状を知らなければ!

 俺はシャーラを《王の眼》で視てみる。


「『呪い』?『猛毒』は予想通りだが、呪いとは何だ?」


 二重鑑定。


『状態異常 ”呪い” : 最大HP・SP・スタミナ

 をダウンさせる。効果は術者が意図的に解除するか死ぬかしなければ解けない』


 最大HPダウン?

 今のシャーラには一番不味いやつじゃないのか!?

 解除方法が術者を斃す事のみって。

 ふざけてんのかよ!

 今の俺たちじゃあいつには敵わない。


「取り敢えず『猛毒』の処置だ!」


 腹部にある大きな穴に眼を向ける。

 俺は元から持っていた毒消しを取り出す。

 出発時、《猛毒耐性》が得られないなと思っていたので、村で購入しておいたのだ。

 一応薬師のおっちゃんに特別に調合してもらった物なので、猛毒にも効果はあるはずだ。


 手荒い処置だが、毒消しを腹にかける。

 本来は飲ませる物なのだが、今のシャーラでは息が乱れまくっていて飲む事が出来なさそうなので、しょうがなく少し効果が薄れる「振りかかる」方を取ったのだ。


 同時に快復薬も振りかける。

 シャーラの身体が淡く輝き呼吸が安定する。

 ほっとしたのもつかの間、


「うわああああ!?」


 赤嶺の悲鳴が聞こえる。


「赤嶺!」


 赤嶺を見ると、地に膝を着けていた。

 もう、あの緑の剣も地面に突き刺さって動かない。

 SP切れだ。

 よく見ると赤嶺の脇腹が真っ赤に染まっている。


 咄嗟に俺は赤嶺の元へ走った。

 スコーピオンが鋏を振り下ろそうとしている。

 俺と赤嶺の距離は20m程。

 全力で駆ける。

 だが、距離があり過ぎる。

 間に合わない!

 どうする!?

 どうすれば!

 俺はまた仲間を殺すのか!


 脳裏をよぎりのはかつての仲間。

 今はこの世に居ないある一人の貴族。

 ………いや、もう心に決めたんだ。


 俺は俺の目の前で人は殺させない、と!


「はあああああ!!」


 俺は途中で走るのを止めた。

 勿論諦めた訳では無い。

 俺は急停止した時の勢いも利用して右手に持っていた幻月 ”爆” をぶん投げた(・・・・・)


「届けええええ!!」


 俺の槍は赤嶺を切り裂こうとした凶刃に狙い違わず命中した。

 鈍い音を立てて弾かれる鋏。

 ここでも ”仙人” となった俺の腕力が役に立った。

 進化してよかった〜!


 おっと、安堵してる場合じゃ無いんだ。

 すぐに走る。

 そのまま赤嶺を回収する。

 そして、岩陰に隠す。

 当然、岩の後ろを何度か回ったので何処の岩の後ろに赤嶺が居るのかは分からないはずだ。


 キョロキョロ辺りを見回しているスコーピオン。

 そういえばシャーラを見つかる位置に置いたままだった!

 ……まあ、問題無いけど。


 俺はそんなスコーピオンの前に幻月 ”爆”を右手に、刀【村正】を左手に構える。


 俺が使えるスキルは《剣の秘術》LV3と《槍術》LV10のみ。

 《剣の秘術》は身体系のスキルなので消費SPを0にする事が出来るのだ。

 勿論、技は使えないけど。


 《槍術》は《王の権限》から引き出せる身体系の唯一では無いけど一番慣れているスキルだ。

 これ以外はいくらレベルマックスで使えるといっても使い物にならないだろう。



 スコーピオンはそんな俺が前に出てきたのを滑稽と思ったのか一声大きな声で鳴く。


「……本当に追い詰められてんのがどっちか今見せてやるよ」


 俺は最後の威勢を張る。

 さて、これからどうなるのか俺にも分からないぞ。


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