EXTRA ① 迷宮区へ
これはゲラドサイドになります。
予めご容赦下さい。
・・・予定よりかなり早く書けたのはゲラドサイドだからです。
「ぉぃ、、おい!大丈夫か!?」
!?
私は生きてるのか・・・?
確か龍のブレスを喰らって・・・
でも、怪我が全て消えている。
まさか、先ほどのは夢?
そんな訳が無い。
全身の熱さ、痛みは今も覚えている。
私は確かにブレスを喰らって死を覚悟した。
だが、それにしても何処だ此処は?
「お?生きてるみてえだな。死にかけだったからもう駄目かと思ったんだがな」
どうやら私を手当てしてくれたのは彼らしい。
「すまない、世話になったな御仁」
「いや、良いって事よ」
「御仁、名前を聞いてもよろしいか?」
「ん?構わねえぜ。俺は久我山 健吾だ。呼ぶ時は『健吾』って呼んでくれ」
「私はゲラド・ベルヤードと言う。
健吾。此処は一体何処なのだ?」
「此処か?・・・此処はデルタ密林の迷宮区だぞ?」
「迷宮区?」
「ああ。デルタ密林の真の姿ってとこかな。
因みに此処は『24階』だぜ」
成る程、此処は迷宮区という所なのか。
ならば私はあのブレスを喰らって此処に落ちたといったところなのか。
「状況は把握した。・・・出口は何処にあるんだ?」
「あー、それがな・・・俺も迷ってんだわ」
え?
いやいや、自分の意思で此処まで来た人が迷う訳無いだろう。
さっきのは私の聞き間違いだな。
「いや、冗談で気を紛らわしてくれるのは有難いが今は早く出たいんだ」
「・・・冗談じゃないんだよなあ」
本当に迷ってた!
不味いな早く出てマコトの安否を確かめたいんだがな。
まあ、あいつの事だからしぶとく生き残っているだろうがな。
取り敢えず私は脱出する事だけを考えよう。
「此処は何階層まで有るのだ?」
「確か、100階だったな」
「というか、最下層まで行ったらどうやって帰ってくるんだ?」
「聞いたところによると最下層には転移魔法を応用した『ワープゲート』があるらしい」
「わ、ワープ?」
「おっと、しまった。こっちの世界では分からないのか。・・・えーっと、転移する魔法陣ってとこだ」
そうか、下まで行くと転移陣があるのか。
だが、早く出るには上から行く方が無難だな。
「すまない、ケンゴ。恩に着る」
そう言って、上り坂を登ろうとする。
「まあ、待てよ。何急いでんだ?何か心配な事でも有るのか?」
それを健吾が止めて問い掛けてきた。
ふむ、別に言っても大丈夫か。
いや、むしろ言った方が良いかもしれん。
「実はな・・・・・・」
マコトと出会ってからの事を全て話した。
健吾は
「マコト?・・・俺と同じ異世界人か。
そして、龍だと。天災級の化け物じゃないか」
と、言っていた。
『異世界人』は分からなかったがマコトとケンゴが同郷だということは分かった。
「だから、一刻も早く行かないといけないのだ」
「そうか・・・少し待っとけ」
そう言って徐に壁に手をやるケンゴ。
そのまま眼を閉じて集中し始めた。
何をするのだ?
「・・・マコトは無事みたいだ。というか、爺さんの死体とバラバラになった龍の死骸が有るんだが」
「むっ?マコトはあいつらを倒したのか・・・更に差を付けられてしまったな。
よし!では早くマコトと合流しないとな」
「そう、焦んなよ。・・・今のお前が行っても言い方悪いが足手まといにしかならないんじゃ無いか?」
自分が心の中で忌避していた事を指摘されて思わず立ち止まってしまう。
常々、私は足でまといなのでは無いかと考えていた。
それほどまでにマコトは強かったのだ。
それが、今あの二人を倒したらしいので更に強くなっているだろう。
もう、自分の居場所なんて有るのか?
迷っていると、ケンゴがこう言ってきた。
「だからゲラド。・・・俺と一緒に迷宮攻略しねえか?」
成る程。
理にかなっている。
迷宮は強い魔物が沢山出ると本で読んだ事があるので、そこを攻略出来れば実力は格段にアップするだろう。
今行っても私は足手まといだ。
だが、此処を攻略してから行けば私はマコトと同等程度の実力者になれるはずだ。
決定だな。
「分かった。このゲラド・ベルヤード。ケンゴと共にこの迷宮区を攻略しよう!」
「応よ!!」
その時
「ギュアアア!!」
魔物が大群で攻めてきた。
咄嗟にバックステップで抜刀と同時に回避するが肩を軽く抉られた。
「ちっ!」
貴族として相応しくない舌打ちが出るが気にしない。
もう一度攻めてきた蝙蝠に蟷螂がくっついたような魔物、『シャルガ』に剣を突き出す。
それをシャルガは空中で回避すると鎌でこちらに攻撃してきた。
首を屈めて回避する。
同時に左手に持っていたもう一本の剣で薙ぎ払う。
それが上手く敵の胴体部を深く切り裂いた。
一瞬で絶命するシャルガ。
攻めてきているのが一匹では無いと気づきすかさず敵の正面を向く。
そして、絶句した。
「魔物が全滅している?」
そう、見るからに魔物が全滅していたのだ。
周囲を探ってみるが魔物の気配は無い。
私はそれを成した張本人であるケンゴを見る。
両手に細長い筒?の塊をぶら下げているケンゴの姿があった。
その筒からは煙が出ていた。
「ケンゴ、それは何なのだ?」
「ん?ああ、これは『拳銃』って言うんだ。この筒の先から金属の塊を発射する道具だ。
まあ、先の方に刃を付けてるから『剣銃』って感じかな」
よく見ると筒の先にナイフの刃が付いている。
今の説明から元々の『拳銃』は遠距離専用武器なのだろう。
それに刃を付ける事で近距離戦も出来るようになったという訳か。
これは、かなり使える武器だな。
「もう、居ねえな。そろそろ行くか?」
「そうだな。先へ進もう」
全く頼もしい限りだな。
遅れは取らないつもりだが。
「そういえばどちらに進むのだ?」
「ん〜、彼方だな」
「了解した。・・・ん?どちらに進むのかわかるならば迷わないのでは無いか?」
「!!、おお!その手があったか!」
「ケンゴ、お前は・・・」
「何か妙に優しい目で見られているが、とにかく出発だ」
気を取り直して先へ進む為の道をみる。
薄暗くて奥に何があるか分からないが陽魔法を使えば大丈夫だろう。
「 ”松明” 」
初級の魔法を唱えて歩み出す。
こうして、私とケンゴの迷宮攻略が始まった。
今話で1章完結となります。
次回からは2章に入るので少し時間がかかるかと思います。
離れたりしないでね涙