第12話 デルタ密林(6) 〜〜別れ〜〜
さて、俺の新たな武器も入手出来たし速くこの密林から脱出しよう。
もう、とうに日は暮れている。
でも、あんな危険な奴が居るところになんて全く居たくない。
「おーい、ゲラド、早よ帰るぞ」
「日は暮れているが......まあ、あんな危険な奴も居るのだしな、帰るとするか」
俺達は街の方へと足を向ける。
その時だった
ウアアアア!!
!、何だ!?
音がする所を見る。
そこには、先程倒したはずのスケルトンが立っていた。
骨の身体はゲラドの一撃で真っ二つに斬られたはずなのに再生している。
武器も無かったのに手が赤く光るとその赤い光が、みるみる槍の形をとってきた。
だが、何より肉が付いてきている。
徐々に手、足、胴体、そして頭。
そこに居たのは紅目の爺さんだった。
かなり髭があり、口が見えない。
髪の毛もかなり生えていて背中部分まである長髪だ。
着ている服は相変わらず紅ローブ。
後、凄いキラキラしてる紅いオーラがもう、可視化出来てるんですけど!
「......儂の研究室から盗みを働いたのは貴様らじゃな?......その罪、儂が制裁してくれる!」
しゃ、喋った!
骸骨だと、発生器官無かったけど人に戻った事で発生器官が付いたのか!
驚きだぜ。
爺さんはそれだけ言うととんでもないスピードでこっちに来た。
俺は右にゲラドは左に跳ぶ。
ーー刹那
俺達の居た地面が裂けた。
原因は勿論あの「紅の爺さん」。
上からあの俺が持っている槍より少し細い槍を振るったのだろう。
あれは、あきまへんわ
地面裂くってどんだけ威力高いんだよ!
しかも、あの爺さん俺に向かって来るし!
槍をアイテムボックスにしまい、刀【村正】を取り出す。
言って無かったが、アイテムボックスは俺の腰に付いてるポーチの事でどんなにデカイものでも指定された個数までは入れることが出来る、それこそ、槍でも入ってしまう様な超便利アイテムだ。
さっき打ち合った時にかなり力入れてても弾かれる事が分かったので、逸らすことメインで迎え撃つ。
キィン!
ギャリギャリギャリ!!
くっ!
何とか逸らす事には成功したが、腕にかなりの圧力が掛かってしまい剣を振るうのが難しくなってしまった。
間髪入れずに向かってくる爺さん。
ならば!
「物質錬成!!」
両手を空に向ける。
俺がまだ試していなかった技。
空気の錬成だ。
空気を地面にくっ付ける様に錬成する。
や...ば、い。かなり難い。
でも成功させないと俺は死ぬ!
絶対に成功させる!!
すでに俺は奴の槍の間合いに入っている。
爺さんが、槍を突き出そうとするのがスローモーションに見える、、
ズドンっ!
後少しで俺の首に刺さる所だった。
だが、俺は成功させた。
空気の重みに耐えられず地面に落下する爺さん。
『経験値が一定に達しました。スキル《物質錬成》レベルが6になりました。』
一気にレベルが2つも上がった。
これは嬉しい誤算だ。
もう、《物質錬成》の効果は切れてしまっている。
奴が立ち上がる前に剣を振るう。
勿論《瞬歩》、《破壊》も乗せている。
「喰らえっ!!」
確かな手応え。
左腕を根本から断ち切る。
「むう!?」
堪らず苦悶の声を上げる爺さん。
骨だった頃は痛みなんて忘れていただろうからさぞかし効くだろう。
追撃はせず距離を取る。
同時にゲラドとも合流する。
「大丈夫であったか?」
「まだ、大丈夫だな。お前は?」
「傷は回復薬でもう治してある」
「ok。......来るぞっ!」
ボガンっっ!!
何でダッシュだけであんな音鳴るのかな?
不思議で一杯だよ!?
俺はまたもや右に避ける。
だが、ゲラドは留まっていた。
「馬鹿っ、早く逃げろ!」
「心配するな。今度は私の番だ!」
あーもう、死んでも知らんぞ!
そう言いつつ俺もゲラドが止めた瞬間に飛び出せる様に戦闘態勢を維持する。
ギャイン!!!
ゲラドの剣と爺さんの槍が交わる。
そのまま力勝負には移行せず、俺がした様に槍を逸らすゲラド。
幼少時から剣を使っていただけあってかなり上手い。
俺より腕へのダメージは少なそうだ。
逸らす事に成功したゲラドは、アイテムポーチに手を突っ込む。
アイテムポーチはアイテムボックスよりも、入る量が違う物で大きい物も入らない。
ちょっと前に鑑定したら分かった。
ゲラドが取り出したのは緑色の石数個。
鑑定すると、
『緑閃石 : 衝撃を与えると閃光石よりも多大な光を出す石。
レアリティは10段階の4』
と、出た。
ゲラドは『光属性魔法』Lv4を使えるからそれ以上の光を出すのが『緑閃石』なのだろう。
ゲラドの行動を理解した俺は目を閉じた。
ピカッッ!
目を閉じていても分かるとんでもない量の光が暗闇をまっ白く染めあげた。
「うぬ!?」
堪らず目を押さえる爺さん。
そこに襲い掛かる俺とゲラド。
ーー決まった!!
その時、
チュドンッッ!!
ミサイルが墜落した。
落ちたのは俺とゲラドの間ら辺。
かなり威力が高く小規模なクレーターが出来ていた。
吹き飛ばされる俺とゲラド。
「くそっ!、、大丈夫かゲラド!!」
俺がゲラドに安否を問い掛けている時に『奴』は動き始めた。
漆黒の身体に大きな尾。
顔には巨大な牙。
背中には翼、身体はゆうに10mは有るだろう。
漫画やアニメで見た事がある、『龍』が俺を見ていた。
怖い怖い怖い怖い怖い
恐怖で身体が動かなくなる。
「遅いぞ、グルー。後少しで殺られる所じゃったわい」
“済まんな、お前が何処に居るか分からなかった。......こいつらか?獲物というのは?”
爺さんと龍の会話が何処か遠くに聞こえる。
俺が考えているのは
(逃げなきゃ、早く逃げなきゃ)
だけである。
龍が放つ圧倒的なプレッシャー。
額から汗が止まらない。
”では、さっさと片付けるとするか”
「そうじゃのう」
一人と一匹がこちらを向く。
不味い!早く逃げなければ!!
ようやく足の縛りが解ける。
解けた瞬間から足を全力で動かす。
ーー1分1秒でも早くあいつの居ない所へ
だが、それは叶わなかった。
ズドンっ!!
先程のよりは少し小さいミサイルが放たれたからだ。
「ガハッ!!」
痛い痛い痛い!
『経験値が一定に達しました。痛み耐性がレベル4になりました。』
そんな事どうでもいい!
この痛みはそんなんじゃ効かない!
”ほお、まだ生きてるか。......ならば我の最強の技で葬ってやろう”
龍の言う通り俺はまだ生きている。
だが、虫の息だ。
辛うじて五体満足だが、脇腹には穴が開いているし、臓器も何個かやられた。左腕も後少しで取れてしまいそうだ。
”はあああ!!”
力を溜め始めた龍。
今でもとんでもない力を持っているのに更に溜めるという事は......
重傷の身体にムチ打って這いながらここを脱出しようとする。
ズキンッ、ズキンッ
身体はとうに限界を超えている。
でも、足は止めない。
奴から逃げてギルドにその危険性を伝えるため。
動け!
止まるな!こいつの存在をこの世の人々に伝えるために!
動け!
ジン君の無念を果たす為に今ここで死ぬ訳にはいかない!
動け、動け、動け!!!
だが、その時はやって来た。
”この技の贄となる事を誇りに思うが良い!
穿て!覇龍震滅破!!”
その巨体を弓のように後ろに曲げる。
肺が有るだろう部分が段々盛り上がってくる。
弓が矢を放つように頭が戻ってくる。
そのまま巨大な顎を開ける。
次の瞬間には一条の閃光が俺に向かって放たれる。
突然、周囲の動きがスローモーションになる。
ああ、これは”死ぬ前の周りが遅く見える”ってやつなんだな、、
俺は死ぬのか。
迫り来る巨大な光をみながらそう思う。
この世界は結構楽しかったな。
色んな人がいたしその人達が全員面白かった。
頼むから俺が居なくなった後も滅びないでくれよ、、、
俺に閃光が当たる直前、俺は何かに弾き飛ばされた。
「え?」
俺を弾き飛ばした何か.........いや、ゲラド・ベルヤードは俺に向かって尊大な表情をした顔を向ける。
ゲラドが俺を弾き飛ばす瞬間、俺は確かに聞いた。
ーーまた、何処かで会おう!
と。
そのままゲラド・ベルヤードは光の束に身体を飲み込まれた。