第八章 「仲間」
〈仲間〉
俺は、気が狂ってしまったのか?
あの、体育館の裏で何があったのか覚えていない!
何でだ?あそこまで行ったことは、覚えてるのに。
その後、何があった?
教室でそんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。
かなり、しんこくそうな顔をして。
そして、教卓に着くとゆっくり話し始めた。
「えぇー、昨日の放課後、体育館の裏で女子生徒の遺体が見つかりました。
原因は、刺殺と思われます。この、事件に関して知っているものは
後で職員室まで来るように。それと、今日からしばらくは、学校を休校とします。
速やかに下校してください」
そこまで言うと、先生は教室を出た。
女子生徒の遺体。
どこかで、そんなことがあったような?
どこかで・・・・・思い出せない。
仕方なく、俺は教室を出た。
迎えに来てもらおうと家に電話を掛けたが、誰も出なかった。
「しょうがないか」
俺は、そう思いながら歩いて帰ることにした。
ここから、俺の家まではそう遠く無い。
歩いて、30分ぐらいの道のりなのでたいしたことは無い。
しかし、この後俺の身におきることをまだ知らないでいた。
俺は、商店街の裏の通りまで差し掛かった。
懐かしい風景だった。
子供のとき以来来ていない。泰介と一緒に過ごした、思い出の場所だった。
「変わってないな、何1つ」
そんなことを呟きながら歩いていると、怪しい人影がこちらに向かっているのが見えた。
気にはしていなかったが、異様なオーラを放っていことだけは分かった。
そして、すれ違うと同時にその人物が呟いた。
「見つけましたよ。霧崎風真君」
俺は、驚きを隠せなかった。
誘拐犯か?それとも、殺人犯?俺の頭の中は、パニック状態に陥った。
そんな、状態に陥っている隙に俺は抱きかかえられ、とあるアジトに連れてこられていた。
目を覚ますと、そこは別の空間だった。
くっきりと天井が目の前に広がっている。
体を起こすとそこは、フラスコやらビーカーやらが置いてある。
「何だここ?まるで、理科室みたいだな」
そう呟くと、遠くの方で声がした。
「えぇ、そうですよ。ここは、ちょっとした実験室でね。」
優しい口調のその人は、姿と年齢からして俺より年上という感じだったが、いかにも身長が低い。
まぁー、女の子だからそこは仕方が無いことだ。
「実験室って、まさか俺を解剖したりしませんよね?」
「そんなことはしませんよ。ただ、あなたに私たちの仲間になってもらいたいだけですよ。」
彼女は、俺に仲間になってほしいそう言ってきた。
どうなっているのやらさっぱり訳が分からなくなってきた。
「何で、仲間になってほしいんだ?」
「ある人物から、君の情報を聞いたからですよ、あぁあなたはもう彼女を知っているのでしたね」
「誰なんだよ」
「カタロスさんですよ。会ったでしょ、学校の体育館の裏で」
カタロス。確かに会ったことのある人物の名前だった。
確か、俺の記憶の一部を返してくれた奴・・・・だったはず。
部分部分しか覚えていない。不思議な感じだ、ここまで覚えてないとは。
このところ、不思議なことがたくさん起こってるような気がする。
これは、気のせいなのか?
「うん?」俺は、さっき彼女が言った言葉に疑問を覚えていた。
彼女は、カタロスのことを「彼女」と言った。
「あの、カタロスさんって、女性なんですか?」
「えぇ、そうですよ。なんだと思っていたんですか?」
「いやー、俺はテッキリ男性の方だと思ってしまって」
そうだ。俺が間違えるのも仕方ない。なぜなら、彼女は口調も格好も男性に近かったからだ。
口調は、「僕」。服装は、ジーンズに上には白いTシャツの上にパーカーを羽織っている。
頭には、帽子を被ってたし、間違えるのもしょうがない。
でも、なぜだ?普通は、女性が男性の格好をしていてもすぐに気がつく。
なぜなら、声が女性っぽい人は特に分かりやすい。
でも、カタロスは声も意外に低めでまるで少年の声だった。
これは、誰がどう見ても男性か少年にしか見えないだろう。
「まぁー、間違えるのも無理はないでしょうけどね。実は、私も最初は少年だと
ずっと思ってたんですよ。でも、途中から「僕、女だから」と言われてしまって
ビックリしましたよ。でも、彼女も苦労していたんですよ。私と同じように」
突然、彼女は語りだした。やっぱり、最初はカタロスのことを男性と思っていたようだ。
よかったー、俺だけじゃなくて。と安心してしまう。
俺は、ここに来た理由が今ひとつ掴めないでいた。
なぜ、ここにいるのか。俺になんの使命があるのか。
「あの、あなたの名前は?」
俺は、彼女の名前を聞くのをすっかり忘れていた。
「私の名前は、カーラスといいます。これから、よろしくお願いしますね」
カーラス。何かのアニメにでも出てきそうな名前だ。
多分、自分で決めたのだろう。
その後は、ライアとユキトとリーダーという人物にあった。
リーダーに名前が無いのが少し不思議だが、そこは触れないでおこう。
というわけで、俺は今日からこの「組織」に入った。
目的は、「世界を変える」という目的で統一されているらしい。
いかにも、信じがたいがここは黙って、付いて行こう。
それしかない。それに、カーラスさんは俺の力について何かしら知っているみたい
だからな。
「秒針は進む。誰がどうやろうと必ず進む。君のその能力が世界を一変させるよ」