第四章 「音楽に潜む闇」
<音楽に潜む闇の心>
私は、音楽が好き。小さい頃から音楽に触れてる私は、ピアノを習っているの。
でも、両親も音楽家で段々練習が厳しくなって私は、もう・・・・音楽を好きではなくなった。
♪~~~。よく晴れた日の朝、部屋中にピアノの音が響き渡る。
私は、音楽が好き。
小さい頃から音楽に触れているの。
今は、ピアノを習ってこの前も先生に褒められた。それが、なによりの楽しみだった。
ピアノの音色は、人の心を掴む。
掴んだ後の拍手はなんて良いものだろう!
私は、そうやって生きている。音楽無しでは生きてはいけない。
この体は、音楽を受け止める為にあるんだ。
私は、ずっとそう思ってた。あの日が来るまでは・・・・・・。
「もっとうまく弾けないの」
「音程がずれてるぞ!」
「指使いが違うでしょ!何度言ったら分かるの?」
そんな言葉1つ1つがある日突然私の心に浴びせられることになった。
それは、私が音楽を嫌いになった原因にもなった。
その日は、いつものように朝の練習をしていた時のこと。
いつもと変わらない音色で完璧な指使いだった。
でも、両親にとっては私が弾いている曲はゴミでしかなかった。
私は、サビの部分を弾くのが好きでそこは一気に盛り上げる。
そうするとすっきりした気持ちで、弾き終わることができた。
しばらくして、母が私の部屋に入って来た。
朝食を持ってきてくれたようだ。
「ありがとう」私は母にそう言った。
「どういたしまして」と母も言葉を返した。
そんなやりとりでも私にとっては大事な時間なのだ。
明日から私は、違う場所で生活するようになる。
親が音楽家でもあるため仕事をする場所が変わったのだ。
私は、少し不安を抱いていたが両親の都合でそれもしかたのないことだ。
でも、本当のところ引っ越すことには反対だった。
この町は、環境が十分に整っていて何より田舎というところが良かった。
なのに、いきなり都会に引越しなんて考えたものだとつくづく思う。
大人とは、なぜこんなにも勝手なのだ!
私は、朝食を済ませると続けてピアノの練習を始めた。
学校には通っていない。
これは、両親の決定でこうなった。
「音楽の道だけを歩んでほしい」ということらしい。
なぜかは分からない。
でも、なにかしら私に隠し事をしていることは直感的に分かる。
それがなんであるかまでは、分からないが。
いつか、分かるだろう。
その、「いつか」が「今日」になるとは思わなかった。
練習を始めてもう、3時間は経った。
いつも通り、両親と先生が私のピアノの指導に来る時間になっていた。
「今日も褒められたら良いなー!」と私はそう思っていた。
そして、両親が先に部屋に入って来た。
その後に先生が入って来た。
私は、自信満々だった。毎日、6時間も練習をしていたのだから。
「それでは、昨日の続きを弾いてください」と先生が私に言った。
私は、「はい」と答え、席に着きピアノを弾いた。
練習の時とまったく変わらず弾けた。
音程も完璧。指使いもバッチリ。何もかもが完璧に終わったはずだった。
しかし、先生と両親から告げられた言葉は私にとって残酷なものだった。
口を揃えて、先生と両親は言った。
「全然ダメだ!」と。
私は、保っていた笑顔を崩し驚きの顔に変化した。
心臓も今まで味わったことのないくらい高鳴っていた。
なぜ?なぜ、全然ダメなのか?私には、全く分からなかった。
「どうしてですか?完璧に弾けました。指使いも音程もとれていたは・・・」
「お黙りなさい!!」
言い終わらないうちに先生から厳しい言葉が飛んできた。
いままで、これほど怖い思いをしたことがあっただろうか?
いや、なかった。私は、優しくそして愛情をもって育ててもらったはず。
それなのに、なぜここまで怖い思いをしなくてはいけないのか?
「まだまだ、練習が足りないわ今度からもっと厳しい練習をしなくては、プロのピアニストには
なれませんよ!」
プロのピアニスト?何を言っているの?私は、単なる趣味で始めたピアノ。
なぜ、プロのピアニストにならなくてはいけないの?お
私はそんなこと望んでいない!
「何を言っているの?私は、ピアニストになるつもりなんてありません。
何かの間違いでは?」
私は、焦りながら聞き返した。
頭の中で「なぜ?なぜ?なぜ?・・・・・」が繰り返されていた。
自分の運命を他人に決められているなんて、そんなの許さない!!
そんな復讐心が込み上げたときふと、母が口を開いた。
「あなたは、私達と同じ音楽家になるのよ。音楽家として成功すれば、お金もたくさん手に入るの
あなたにも分かるでしょ?全てはお金で動いているのよ。」
お金。その言葉は、いつも聞いているような言葉だった。
母がいつも言っていたような気がする。
テレビでも、経済がどうたらと言っていた。
そんなにも、お金という物は大切なのだろうか?
私には、分からない。そんなこと考えたこともない。
裕福だったからかもしれない。生まれてこの歳まで、お金に困ったことは一切なかった。
家には、お手伝いさんがたまに来ていた。
引越しが決まってからというもの、家中の誰もが私に厳しくなった。
いままでに怒られたことはあまり無かった。
怒られて思ったこと、それは「怖い」ということだった。
私は、泣いていた。「怖さ」を知ったから。なぜ、怒られたのか分からなかったから。
ただ、ひたすら泣いた。
そして、こんな言葉を口にしていた。「ごめんなさい」
その後、私は都会の街中に引っ越した。
これまでとは、まったく違う風景。
畑も田んぼも無い。ただただ、人が溢れている。
春とは全然思えない光景。車の量はやたらと多いし、ビルが何処までも続いていて
息が詰まる。
外に出れば、人の波に飲まれ、歩きにくい。
クラクションが鳴り止まない日もある。
ここに来て、もう2週間が経った。
ピアノの練習は相変わらず厳しいものになった。
「まだ、全然音が取れていない」とか「指使いがなってない」とかいろいろ言われる日々。
こんな生活、もう嫌だ!
もっと、私に優しくしてよ。昔みたいに抱きしめてよ。
私の心は、何時しか「闇」という物に変わっていた。
私の心は黒く、残酷な物になった。
そして、私は家を飛び出した。
ついに私は、家出をした。
自由になったのだ。
厳しい練習もなければ、恐怖を味わうこともない。
なんて、良いものだろう!生まれて初めての自由。
こんなことがあっていいのだろうか?
でも、今はいいのだろう。神様は私に味方してくれた。
それだけで、嬉しかった。
そうだ、家を出て2日目に私は、不思議な人達に出会った。
世界を変えるだのどうだの言っていた。
リーダーである人に話しを聞くと、なんでも世界を変えて「化け物」と呼ばれない世界にするらしい。
なんだか信じられない話しだった。
世界が簡単に変われば、とっくにやっている。
「音楽のない世界」にしている。
「お前の望む世界は何だ?」ふと、リーダーがそんなことを聞いてきた。
私は、言うか言うまいか迷った。
仮に言ったとして、世界が一転するのか?
いや、ありえない。そんなことができるなら「凄い」としか言えない。
でも、一応言っておくのも良いか。
「音楽のない世界!」
私は、はっきりと聞こえるように言った。
すると、リーダーの後ろから拍手が聞こえた。
「すばらしい望みですね。音楽なんてこの世になくていい物です。」
拍手をしながら語るその人は、カーラスという少女だった。
彼女は、不思議な力を持っていそうな表情で私を見ていた。
まるで、超能力でも持っているかのような・・・・。
そこへ、リーダーが口を開いた。
「カーラス、そんなこと言うな。彼女は、悩んでいるんだぞ」
リーダーは、きつい口調で言った。
「おっと、ごめんなさい!リーダーの目付きは相変わらず怖いですね」
この人は、何をいっているんだ?
リーダーを怒らせてそんなに楽しいのか?
そう思っていると、「そ、そうか?余りきつい表情は、しないつもりだったんだが。すまない」
起こるどころか謝っている?なんか、変なグループだな。
「そんなことは、さて置き。あなたの名前を教えてくれませんか?」
そう聞かれて、名前を言ってなかったことに気づいた。
「ライア。ライア・メークです」
余り聞かない名前だろう。私の両親は、母親が日本人。父親がイギリス人の間で生まれた
いわゆる、ハーフ。
だから、目が青色で髪が茶髪。いかにも、外人という感じだ。
私も母と父に似たのだろう。
英語が出来ないのは、ちょっと残念だ。
「ライアさんですか。なんとも、可愛らしい名前ですね。羨ましいです」
そんなことを言われたのは、久しぶりだ。
「ありがとうございます。」
私は、そう言うしかなかった。
そんなことより、この人達が私に何の用だ?
いまさら気が付いた。「で、私に何のようでしょうか?」
気づいたことをそのまま言った。
「そうでした。すいません。あなたには、仲間に入ってもらいたいんですよ。
世界を変える者としてね。あなたには、「能力」を差し上げます。」
「能力」?そんなことが出来るのか?
「どういう能力なんですか?」
「そうですねー、あなたには「空間能力」を差し上げますよ。」
「なんですか?空間能力って」
「空間能力は、自分が好きな空間。つまり、楽しい空間や嫌な空間などがあります。
それに、音楽の空間もあるわけです。その空間を自分なりに切り取って
自分の空間にできるのです。逆を言えば、嫌いな空間は、消すこともできます!」
空間を分けることのできる能力。
案外良い能力かもしれない。
全ての音楽の空間を消してやろう!
私は、そんなことを決めていた。
そして、「私を仲間に入れてください!」私は、彼女たちの仲間になった。