終章 「いつか未来で」
〈いつか未来で〉
爆発が起きた場所。
そこは、間違いなくアジトの場所。
アジトには、ユキトやライアがいる。
まさか、彼女は最初からこれが狙いで。
「カーラス!お前、こうなることを知っていたのか!」
私は、怒りのままにカーラスを問い詰める。
「いえ、こ、こんなことになるなんて。わ、私は、何も」
いつも冷静なカーラスが取り乱している。
カーラスも知らない。謎の計画。
「おや、カーラスが珍しく取り乱してるねー!僕は、君のそういう表情を見たくてうずうずしてたんだよ!
嬉しいなー」
カタロスは、この状況を心底楽しんでいるようだ。
私は、そんな彼女に腹が立った。
「お前!これはどういうことか説明しろ!」
私が怒鳴り散らすと、彼女はニヤッと笑った。
「やれやれ、そんなに知りたいの?知らなくてもいいんじゃなーい。この世界はもうすぐ終焉を迎える。
だから、最後に最高の舞台を用意してあげてるのに。
物語の中の登場人物は、誰かが死なないと面白くないじゃないか!それで、物語の主人は悲しみに
暮れる。実に面白いよ!この物語は」
彼女は、何の話をしている?
この世界が終焉を迎える?どういうことだ、世界が終わってしまうとでもいうのか?
「その証拠に、空を見てごらんよ。崩れかけている。それに、リーダーさん自分の身体をよく見たほうが
いいよ。」
そう言われて、見てみると。
驚くことが起きていた。私の足元が透けていたのだ。
なぜいままで気がつかなかったのか不思議だったが、間違いなく透けていた。
私の表情を見て、彼女はまたも笑みを零す。
「だから言ったでしょ。この世界は終焉を迎えるってね。実に面白かったよ、今回の物語は。」
崩れゆく世界の中で私たちはただ、彼女の話についていくしかなかった。
だがしばらくして、口を閉ざしていたカーラスが話し始めた。
「リーダー、彼女の話が本当のことならやるべきことは一つです。」
「何だ?それは」
「この物語をハッピーエンドで終わらせることですよ!私はこれから、彼女を倒します。
ユキトとライアのかたきを取ってきます。
勿論、風真にも手伝ってもらいます。その際にリーダーは、この世界を本当の終焉へ導いてください。
これは、あなたにしかできないことです。この物語を作ったあなたにしかできないことです。
いいですか?」
カーラスの覚悟は本物だった。
ユキトは自分の望みを叶えた。でも、ライアはまだ一つも叶えられていない。
「二人の分まで戦ってくれ。もう、止めたりしない」
「ありがとうございます。短い間でしたが、あなたたちに出会えたことを誇りに思います」
「私もだカーラス。私にこの世界を見せてくれてありがとう」
その言葉を交わした後は、はっきりと覚えていない。
ただ、カーラスは自分の意思を曲げずに戦ったことだけは覚えている。
そして、戦いの決着がついた。
勝ったのは、カーラスだった。
でも、カタロスはまだ意識があった。
「君たちにはやっぱり適わないよ。最後に君たちの記憶を返すよ」
そういうと眩しい光が立ち込めた。
光に包まれている間、私は全てを思い出した。
「そうか、だから私はここに」
カーラスも全て思い出したようで喜んでいた。
「リーダー、最後に私の本当の名前を教えますね。私の本当の名前は、紅葉。紅葉です」
「紅葉」と名乗ったカーラス。
なんて綺麗な名前なのだろうと私は、心の底から思った。
「私もお前に本当の名を教えよう。私の名前は、未来だ」
「未来ですか、とても素敵な名前ですね。」
「俺もそう思います。」
風真も聞いていた様で、褒めてくれた。
そして、世界は終わった。
私は、歪んだ世界にいた。
何もかもが歪んでいる世界に。
「未来さん!未来さん」
誰かが私を呼ぶ声がした。そっと目を開けると、そこには風真の姿があった。
なぜ風真がいるのか不思議だった。
言葉を交わした後、目の前が真っ白になって、紅葉たちともお別れをしてきた。
なのに風真だけ私と同じ世界にいるなんて。
「どうして、風真がここに?」
「俺の本当の姿まだ話してないでしょ。話に来たんですよ、母さん。」
「母さん?」
「あんたは、俺の母親だ。俺は、未来から来たらしい。俺の母さんは、いつも俺に自分で作った
話を聞かせてくれてたんだ。それが俺にとっての楽しみだった。でも、俺の世界は歪んでるんだ。
もう少しで終わってしまうかもしれない。それだけは、阻止したいんだ。
でも、まさか母さんの物語の中に自分が入れるなんて思わなかったよ。
やっぱり母さんは、物語を作る天才だな!」
風真の言っていることがなんとなく分かってきた。
要するに私は風真の母親なのだということになるらしい。
なんとも不思議な話だが。
「世界を守るために俺は生まれてくるんだ。だから、俺は未来で母さんを待ってる。
いつか、必ず未来で会おう!」
「あぁ、私もお前に会える日を楽しみにしておこう!」
それだけ言うと、風真は消えた。
そして私も意識を失った。
「・・・らい・・・未来!」
「先生!未来が、未来が意識を取り戻しました!」
目を覚ますと病院にいた。
私は、長いこと意識を失っていたようだ。
「未来、大丈夫か?お父さんたちの声が聞こえるか?」
私は小さく頷いた。
「良かったわ!本当に!心配したんだから」
「ああ、本当に良かった!」
病院の中で私の親が喜んでいる。
そうか、私は事故に巻き込まれて意識を失ったんだ。
「未来、眠っている間どんな夢を見てたんだ」
お父さんが笑顔で聞いてくる。
私も笑顔で答えた。
「未来の自分の夢だよ!お父さん」
見てくれた皆様ありがとうございました!
皆様のおかげで最終回を迎えることができました。
これからもどんどん作品を書いていきますので、よろしくお願いします!!




