決意の夜③
いくつもの決意が交差する夜に、もう一人、決意をした人物がいた。
「死んじゃった、死んじゃった。アイゼリカ姉さんが死んじゃった」
部屋には三つの人影。《白銀の影》の二人がアイゼリカの死を悼み、涙を流していた。
「アタシの責任だ」
フィオナは泣きじゃくる三人目に向けて、歯を食い縛って謝罪する。
「アタシが自分の正義に固執していたから、正義よりも大切な仲間を、アイゼリカを失う羽目になった。アタシは復讐のために、復讐よりも大切なものを犠牲にしちまった」
フィオナは自らを戒めるように、深く深く息を吸いこんだ。ともすればこれが最後の呼吸だとばかりに、覚悟を固めるための時間を稼ぐ。
「アタシはもう、引き返せない」
それが決別の一言だった。昨日までの自分、そして平穏な生活への決別だ。
今までは復讐が終われば次の一歩に踏み出せると、新しい人生が待っていると、そう思っていた。アイゼリカとフィオナにとって、復讐は過去と決別するための儀式だった。
その甘さが正体を隠し、無関係の人々を巻きこまないように行動させた。
まるで自分たちの行為が聖戦であるかのように酔っていたのだ。
その結果、アイゼリカを死なせてしまった。
だからもう、引き返すことはできない。フィオナは明日に進むためではなく、昨日を終わらせるために何もかもを捨てるしかなくなってしまった。
「……ワタシも、覚悟を決めたわ」
それまで泣き続けていた女の嗚咽が止まった。上げられた顔には憎悪と殺意の炎が燃え上がっている。世界の全てを、自分自身を焼きつくしても鎮まらない鬼火だった。
「ディード・ド・ドレッドレッドぉ……」
その日、世界に新たな復讐鬼が生まれた。




