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再来者

 キュバリリウス連邦エルレイド共和国ソニス市。

 かつて《始まりの十一人》の一人が来訪した地に、巨大質量が到着した。

 地平線の彼方から長く長く伸びた線路の先に、金属製の大蛇が姿を見せる。大陸横断電磁列車(リニアレール)の巨体は緩やかに速度を落とし、重低音を響かせて新ソニス市中央駅に停まった。

 列車の扉が開き、巨大な鞄を携えた旅行者や、出張で訪れた企業人らが続々と姿を見せ、蟻の行列のように駅の構内に散らばっていく。

 絹を裂くような悲鳴が上がった。

 恰幅のよい婦人が両目を恐怖に見開いて、手洗い場の濡れたタイルに尻を落としていた。婦人は片手で口元を押さえ、震えるもう一方の手で個室の内部を指差している。

 手洗い場の個室には中年女性の死体が放置されていた。女性は四肢を出鱈目な方向にへし折られ、腹部を潰されて絶命していた。絶叫の形に開かれた女性の口腔、裏返った眼球のはまる眼窩、鼻腔や耳孔からも銀色の液体が滴っている。

「派手にやっているようだな、〝聖銀の〟」

 悲鳴と好奇の声を応酬させる彼ら彼女らを尻目に、一人の男がソニス市に降り立った。男は駅の構内を見回し、弾けるような笑いを上げる。

「ハッ! 久方振りと言ったところか!」

 男の出で立ちは明らかに周囲から浮いていた。黒い肌着の上に鋼色のジャケットを羽織り、下は漆黒のジーンズとブーツ。首に巻かれた黄色いマフラーが風もないのにはためいている。

 体の端々から躍動感と行動力がはみ出している、そんな雰囲気の男だ。

「懐かしのソニスだ。精々、満喫させて貰うとしようか!」

 男は跳ねるような足取りで行動を開始した。男が歩を進めるたびに、両腕にはめられた十一の腕輪が耳障りな不協和音を撒き散らす。

 ウラル・ウル・ウルトルガという名の男が、かつての戦地に再び来訪した。

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